将棋界では2018年2月に羽生善治九段(1970年~ )が「国民栄誉賞」を受賞したのに続き、今は高校生棋士の藤井聡太七段(2002年~ )が昨日(2020年7月16日)「棋聖」のタイトルを史上最年少(17歳11カ月)で獲得しました。さらに「王位」のタイトルの最年少獲得に向けて頑張っています。
<2020/8/20追記>藤井聡太棋聖が「王位」タイトル獲得し、八段に昇段も決定
202/8/19~8/20にかけて行われた「王位」戦第四局に勝利し、無傷の四連勝で「王位」タイトルを獲得して「史上最年少の二冠」となり、同時に「史上最年少の八段昇段」も決めました。おめでとうございます!!
ところで日本語には「将棋から生まれた面白い言葉」がたくさんあります。
1.王手(おうて)
「王手」とは、「最終的な勝利を得るまであと一歩の段階」「相手の死命を制するような決定的な手段」「追い詰めた、または追い詰められた状況」のことです。
将棋では、直接に王将を攻め立てる手のことを「王手」と言います。
「逆王手(ぎゃくおうて)」は、プロ野球の日本シリーズのようなスポーツのリーグ戦などで、「最初連敗など劣勢で王手をかけられた方が、逆に連勝して相手に王手をかけること」「優勝候補とされる者を下位の者が追い上げ、逆転優勝の可能性が生じること」を言います。
2.成金(なりきん)
「成金」とは、「短期間で金持ちになること。また、その人」のことです。
将棋では、「敵陣に入って、成って金将と同等の働きを持つようになった駒」のことで、特に「歩(ふ)」を指す言葉です。
江戸時代末期ごろから、急に金持ちになった意味として「成金」が使われ始め、日露戦争直後に株で大儲けした相場師鈴木久五郎や、第一次世界大戦で大儲けした造船・海運業者らを呼ぶようになり、現在のような使われ方が広まりました。
「成金趣味」とは、「お金を持っていることを誇示したり、全体のバランスや美意識、機能性などを理解せず、とにかく派手さや豪華さを求める下品なお金のかけ方・使い方」のことです。
3.高飛車(たかびしゃ)
「高飛車」とは、「頭ごなしに相手を威圧するさま。高圧的な様子」のことです。
将棋では、「飛車を自陣の前方に高く進める戦法」のことです。
江戸時代末期ごろから、将棋以外でも「高圧的な」の意味で使われるようになりました。
4.持ち駒(もちごま)
「持ち駒」とは、「手元にあり、いつでも必要に応じて使える人や物」のことです。
将棋では、相手の駒のある位置へ自分の駒を動かすことで、相手の駒を盤面から取り除き、自分の駒として使うことが出来るようになります。これを「持ち駒」と言います。
5.詰み(つみ)
「詰み」とは、「どうしようもない状況」「確実に助からない状態」「もはや全てが終わった状態」のことです。
将棋では、「王将がどこにも逃げられない状態」「防ぎようのない王手」のことを「詰み」と言います。
6.必死(ひっし)
「必死」とは、「必ず死ぬこと」「死ぬ覚悟で全力を尽くすこと」です。
将棋では、「どう守っても必ず詰んでしまう状態」のことを「必死」と言います。
7.捨て駒(すてごま)
「捨て駒」とは、「ある目的を達成するために払われる人的な犠牲」「後の大きな利益のために現時点で払う犠牲」のことです。
将棋では、「駒をあえて捨てる作戦」のことで、「相手に自分の駒を取らせて、その駒を自分が取る作戦」のことです。
囲碁由来の言葉である「捨て石」とも似ていますね。
8.将棋倒し(しょうぎだおし)
「将棋倒し」とは、「混雑した中で人が倒れると、隣の人から次々に折り重なって倒れること」です。
「本将棋」ではありませんが、将棋の遊び方の一つで「将棋の駒を少しずつ間を空けて一列に並べ、端を軽く押して順々に倒して行く遊び」のことです。
室町時代に書かれた「太平記」にも比喩で用いた記述があり、古くからある遊びのようです。
西洋にも似たようなゲーム「ドミノ倒し」があり、比喩的に「連鎖反応が起きる」意味で用いられます。
9.両取り(りょうどり)
「両取り」とは、「何か二つの物を同時に狙える状況」のことです。「一挙両得」や「一石二鳥」とは異なり、最終的にはどちらかを選択することになります。
将棋では、たとえば「王手飛車取り」のように、「二つの駒を同時に狙える一手」のことです。
10.先手を打つ(せんてをうつ)
「先手を打つ」とは、「相手より先に攻撃や物事を行うこと」「起こりうる事態に備えて先回りすること」や「機先を制すること」です。
「先手」とは囲碁や将棋で、相手より先に打ったり、指し始めることで、「先手必勝」とも言われるように、先の方が主導権を握り有利に進めることができることから、このように使われるようになりました。
11.後手に回る(ごてにまわる)
「後手に回る」とは、「相手に先を越されて、受け身の立場になること」です。
「後手」とは囲碁や将棋で、相手より後から打ったり指したりすることで、あとの方が受け身になり、不利になることから、このように使われるようになりました。