前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。
ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。
私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。
そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。
そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。
なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。
「夏」は旧暦4月~6月にあたり、「初夏」(立夏・小満)、「仲夏」(芒種・夏至)、「晩夏」(小暑・大暑)に分かれます。
今回は「仲夏」(芒種・夏至)の季語と俳句をご紹介します。
・芒種(ぼうしゅ):新暦6月5日頃です。「五月節」 稲などの(芒のある)穀物を植えます。
・夏至(げし):新暦6月21日頃です。「五月中」 昼の長さが最も長くなります。
7.植物
(1)あ行
・葵(あおい):『万葉集』以来、葵といえば立葵のことだった。ただ、京都の葵祭の葵は二葉葵、徳川家の「葵の御紋」もそうである
咲のほる 梅雨の晴間の 葵哉(夏目成美)
あふひ草 かかるや賀茂の 牛の角(池西言水)
酔顔に 葵こぼるる 匂ひかな(向井去来)
抱きおこす 葵の花や さ月ばれ(蝶夢)
日に動く 葵まばゆき 寝覚かな(高桑闌更)
葵草 むすびて古き あそびかな(三浦樗良)
明星に 影立ちすくむ 葵かな(小林一茶)
鶏の 塀にのぼりし 葵かな(正岡子規)
蜀葵(からあおい) 人の世を過ぎし ごとく過ぐ(森澄雄)
・葵の花(あおいのはな):アオイ科の二年草の花の総称。夏に開花する
・青梅(あおうめ):熟さない梅の実をいう。梅は梅雨のころ、みずみずしい浅みどりの芳香のある実を結ぶ。固くて酸味が強いが、梅酢や、梅酒、煮梅などを作る。梅干は黄をすこし帯びた実を用いる
うれしきは 葉がくれ梅の 一つかな(坪井杜国)
実の落ちる 夜の音奇なり 軒の梅(炭太祇)
青梅に 眉あつめたる 美人哉(与謝蕪村)
青梅に 手をかけて寝る 蛙かな(小林一茶)
青梅に 塩のしむ夜か 蟾(ひき)の声(桜井梅室)
青梅や 空しき籠に 雨の糸(夏目漱石)
青梅や 小房ながら 清浄に(大谷句佛)
摘みためて 石の重みや 梅の籠(長谷川櫂)
・青黴(あおかび):不完全菌類モニリア目アオカビ属のカビの総称。
外観が青・緑色を呈し、パンなどの食品や皮革製品に生える。酵素やペニシリンの生産、チーズの熟成に利用される種もある
・青苔(あおごけ):夏、青々と茂っている苔のこと
・青芭蕉(あおばしょう):大きな葉を広げた初夏の芭蕉の姿
・紫陽花(あじさい):日本の梅雨を代表する花。花びらのような四枚の萼の中心に粒状の花をつけ、これが集まって毬を形づくる。ピンク、白、青紫と花種も多く、また色が変わるので「七変化」とも呼ばれる。庭木や鉢植えとして栽培される
紫陽花や 藪を小庭の 別座敷(松尾芭蕉)
紫陽花や 帷子時の 薄浅黄(松尾芭蕉)
あぢさゐを 五器に盛らばや 草枕(服部嵐雪)
あぢさゐに 喪屋の灯 うつるなり(加藤暁台)
あぢさゐや 仕舞のつかぬ 昼の酒(岩間乙二)
紫陽花や はなだにかはる きのふけふ(正岡子規)
紫陽花や 白よりいでし 浅みどり(渡辺水巴)
紫陽花に 秋冷いたる 信濃かな(杉田久女)
あぢさゐに 触れて鋏の くもりけり(高田正子)
・敦盛草(あつもりそう):ラン科の多年草。深山に自生する。花の形を平敦盛の背負う衣(ほろ)に見立てての名。5~6月頃紫紅色の花を開く。観賞用にも栽培される
・甘野老の花(あまどころのはな):ユリ科アマドコロ属の多年草。日本各地の山野に自生する。草丈は30~80cmくらい。10cmほどの長楕円形の葉は互生する。五月ころ葉腋から一本ないし二本の花柄を出し、緑白色の花をたらす。地下茎がトコロに似て甘味があるのでこの名がある
・余り苗(あまりなえ):田植に使わなかった余分な苗のこと
・アマリリス:ヒガンバナ科の半耐寒性球根植物。30cmほどの茎の頂点に直径15~20cm程度の大輪の花を咲かせる。色はピンクや赤など
・あやめ:古来、菖蒲と区別するために「花あやめ」と呼ばれてきた草。5~6月ころ、茎の先端に紫または白の花を咲かせる。花びらに網目模様をもち、乾いた草原などに咲く
あやめ生ひけり 軒の鰯の されかうべ(松尾芭蕉)
片隅に あやめ咲きたる 門田かな(正岡子規)
・菖蒲草(あやめぐさ):ショウブの別称。
あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒(松尾芭蕉)
あやめ草 綾の小路の 夜明かな(松岡青蘿)
・泡盛升麻(あわもりしょうま):泡盛草の別称
・泡盛草(あわもりそう):ユキノシタ科の多年草。
中部地方より西の山地や谷間等に自生する。光沢のある硬い披針形の葉を持ち、直立した茎の上部に白い小さな花の花穂が上向きに沢山つく。白い花を泡に見立てて名がついた。花には腺毛がある。草丈は50~80cm
・杏/杏子(あんず):春に紅の花が咲き、6~7月頃、梅より少し大きい黄赤の実をつける。甘酸っぱく、生で食べられるほか、ジャムや缶詰にも加工される。古く薬用として中国から渡来したとされ、「杏仁」は種を干したもので漢方薬。「杏林」は医師のこと
医者どのと 酒屋の間の 杏かな(黒柳召波)
花の痩は どこへやら往て 杏かな(三宅嘯山)
杏子や 供笥(くげ)をこぼるる 敷きがはら(加藤暁台)
・一八/鳶尾草(いちはつ):平安時代に中国より渡来。5~6月、花茎の先端につぼみをつけ、杜若(かきつばた)に似た淡紫碧色の花を咲かせる。アヤメ属で最も早く咲くのでイチハツという名が付いた。中央の小さな花びら三枚が、鳶の尾羽の凹みに似ているので、鳶尾草(とびおくさ)の別名もある
一八や しやがちちに似て しやがの花(与謝蕪村)
小家葺て 一八さきぬ 二三本(三及)
一八の 白きを活けて 達磨の画(正岡子規)
・一薬草(いちやくそう):イチヤクソウ科イチヤクソウ属の常緑の多年草。
日本各地の山地に自生する。数枚の卵型の5cmほどの葉が根本に集まる。5~6月にかけて葉の間から花茎を伸ばし白い花を下向きに咲かせる
・藺の花(いのはな):イグサ科の多年草。山野、湿地に自生するが水田でも栽培される。緑色で細くすべすべした真直ぐな茎の上に淡褐色の細い花が固まって咲く。茎は畳表や花筵の材料として用いられる
藺の花や 小田にもならぬ 溜り水(正岡子規)
藺の花に ひたひた水の 濁り哉(此筋)
・芋の花(いものはな):里芋の花のこと。八月ころ、長い花茎の先端に黄色の苞に覆われた黄色の棒状の花を咲かせる。里芋は花を咲かせないように育てるので目にすることは少ない
・茴香の花(ういきょうのはな):ヨーロッ原産のセリ科の多年草で、古代エジプトでも栽培されていた。日本には薬草として中国から渡来。夏、枝先に黄色の小花が群がって咲き、独特の芳香を放つ。果実は胃炎、整腸、咳止めの漢方薬になる。西洋では「フェンネル」と呼ばれ、魚や肉料理 に使われる
茴香の 夕月青し 百花園(川端茅舎)
・萍/浮草(うきくさ):沼や池の水面に浮いて殖えるの緑色の草。繁殖力が旺盛で、水田などでは稻に害をなす
流れ流れて 萍花の さかりかな(小西来山)
萍を 岸につなぐや 蜘の糸(加賀千代女)
浮草を 払へば涼し 水の月(高井几董)
うき草を 吹あつめてや 花むしろ(与謝蕪村)
萍の 花より低き 通りかな(小林一茶)
古池や 花萍の ひるさびし(内藤鳴雪)
萍に 亀乗りかけて やめにけり(松本たかし)
・右近の橘(うこんのたちばな):六月ころ、梢に香りの高い白い五弁の花を咲かせる。高貴な香りが古くから愛され、万葉集や古今集などに多く詠まれた花である。「五月(さつき)待つ花橘の香(か)をかげば昔の人の袖の香ぞする」(古今集)という歌以来、花橘は昔の恋を追慕させる花として詠まれる。
京都御所の紫宸殿には左近の桜と並んで、右近の橘が植えられている
乗掛や たちばな匂ふ 塀の内(上島鬼貫)
橘や 定家机の ありどころ(杉山杉風)
たちばなの かはたれ時や 古館(与謝蕪村)
・靱草(うつぼぐさ):シソ科の多年草。六月頃茎の先に花をつける。円筒形の花の形が矢を入れる靭に似ているのでこの名がついた。花の終わりは枯れて褐色に変じるので、夏枯草とも呼ばれる
尋ねゆく 武庫の山路や 靫草(溝口素丸)
・梅笠草(うめがさそう):イチヤクソウ科の常緑多年草。山野・海辺の林中の木陰に生育する。 葉は広被針形で直立した茎に数枚輪生する。六月頃、茎の頂にウメに似た五弁の小花がひとつつく。草丈10cmぐらい
・梅の実(うめのみ):青梅に同じ
夕日いま 高き実梅に 当るなり(星野立子)
・漆の花(うるしのはな):漆はウルシ科ウルシ属の落葉高木。漆を採るため各地で栽培され、 高さは15mくらいになる。五月から六月にかけて葉腋か ら円錐花序を伸ばし黄緑色の小さな花をたくさん咲かせる
・えごの花(えごのはな):山野に自生する落葉高木。5~6月頃、枝先に白い小鈴のよ うな五弁花が群れ咲く。地面に散った様も美しく風情がある
えごの花 かかりて蜘蛛の 糸見えず(松本たかし)
もの言はぬ 餉のならひかも エゴの花(石橋秀野)
蛙早 流転の調べ えごの花(川端茅舎)
えごの花 一切放下(いっさいほうげ) なし得るや(石田波郷)
・樗の花/楝の花(おうちのはな):楝は、若葉が繁ったあと淡紫色の小さな花を房状に咲かせる。遠くから仰ぎ見ても美しい花である。「アフチ」は栴檀の古名で、万葉集にもその名を見ることができる。別名の「センダン」は千の珠という意味で、実をびっしりとつけるところからそういわれる。実の核は数珠に利用される
どむみりと 樗や雨の 花曇り(松尾芭蕉)
樗咲 里にかくるゝ 公家は誰(江左尚白)
玉桙(たまぼこ)の 道の月夜や 花あふち(小西来山)
鮓(すし)うりの かざしにとれや 花樗(加藤暁台)
むら雨や 見かけて遠き 花樗(加舎白雄)
夜芝居の 小屋をかけたる 樗かな(正岡子規)
栴檀の 花そよぎつつ 水の空(長谷川櫂)
・桜桃(おうとう):桜桃の実に同じ
・桜桃の実(おうとうのみ):一般にさくらんぼと呼ばれているものは、西アジア原産の西洋実桜とその改良栽培種。やや黄味がかったみずみずしい赤い実が、二つに分かれた細く長い柄の先に垂れているのは、何とも可憐
茎右往 左往菓子器の さくらんぼ(高浜虚子)
一つづつ 灯を受け止めて さくらんぼ(右城暮石)
美しや さくらんぼうも 夜の雨も(波多野爽波)
・大苗打ち(おおなえうち):田植のときの苗運び・苗配りの役。男の力仕事
・沢瀉(おもだか):オモダカ科の水草。沼、池等の水中に自生する。根から矢じり形 の特徴のある葉が出て葉の間から花茎をのばし三片の白い涼しげ な花を咲かせる
破れ壺に おもだか細く 咲きにけり(上島鬼貫)
沢瀉や 花の数添ふ 魚の泡(炭太祇)
沢瀉は 水のうらかく 矢尻かな(与謝蕪村)
・オリーブの花(おりーぶのはな):モクセイ科の常緑樹。地中海地方の原産で、日本では小豆島などで栽培されている。5~7月にかけて、葉腋から総状の円錐花序を出し、芳香のある白い小花を咲かせる。その後青い実を結ぶ
(2)か行
・かがみ草(かがみぐさ):うきくさ(浮草)の古名
・杜若/燕子花(かきつばた):尾形光琳の「燕子花図屏風」に描かれている水辺の花。剣のような葉と紫の花で一目でこの花と分かる。「燕子花」の字は花の姿が燕の姿を思わせるところから。この花の汁を布にこすり付けて染料にしたことから「書付花」といわれ、それが転じて「かきつばた」となったとされる
杜若 語るも旅の ひとつ哉(松尾芭蕉)
杜若 われに発句の 思ひあり(松尾芭蕉)
有難き すがた拝まん かきつばた(松尾芭蕉)
杜若 にたりやにたり 水の影(松尾芭蕉)
朝々の 葉の働きや 燕子花(向井去来)
宵々の 雨に音なし 杜若(与謝蕪村)
実盛が 草摺りゆかし 杜若(長谷川櫂)
・柿の薹(かきのとう):柿の花のこと
・柿の花(かきのはな):梅雨のころ、柿は黄色をおびた白色の花をつける。若葉と一緒に咲くためあまり目立たない。落ちやすい花で、地面などに散らばっているのを目にすることもある
渋柿の 花ちる里と 成にけり(与謝蕪村)
鞍つぼに 酒吸ふ門や かきの花(加藤暁台)
役馬の 立ち眠りする 柿の花(小林一茶)
山畑や 昼ほととぎす 柿の花(岡本癖三酔)
湧き起る 黒雲に龍 柿の花(長谷川櫂)
・額紫陽花(がくあじさい):ユキノシタ科の落葉低木。紫陽花の一種だが、花は毬状にならず 平に咲く。中心部は小さな花が粒々と密集してつき、その外側に 四片の装飾花をまばらにつける。花は白っぽい色から、青、赤紫、 ピンクなどに変化してゆく
あけがたや 額の咲くより 空ひくく(石橋秀野)
・額草(がくそう):額紫陽花に同じ
・額の花(がくのはな):額紫陽花に同じ
今年の 二度ある梅雨や 額の花(松本たかし)
・額花(がくばな):額紫陽花に同じ
・夏枯草(かこそう):靭草の別称
・片白草(かたしろぐさ):ドクダミ科ハンゲショウ属の湿気を好む多年草。浅い水の中にも 生える。高さは70~80cmくらい。先のとがった卵形の葉は 互生し、七月ころ葉の半分が白くなる。六月から八月にかけて、 尾状に白い小花をたくさんつける。半夏生(はんげしょう)
・扇骨木/金目黐(かなめもち):バラ科の常緑小高木
・要の花(かなめのはな):要の木はバラ科カナメモチ属の常緑小高木。山地などに自生し、 高さは大きいもので10mくらいになる。五月から六月にか けて、線香花火状に白色の小さな花を多数つける
・黴(かび):梅雨時の高温多湿に乗じて発生する菌の一種。食べもの、衣類、畳、壁など、何にでも発生する。鬱陶しい長雨の季節を象徴するものであるが、味噌醤油の製造に欠かせない麹黴やペニシリンを作る黴など、有益なものもある
徐(おもむろ)に 黴がはびこる けはひあり(松本たかし)
黴の中 言葉となれば もう古し(加藤楸邨)
きりもなく 黴の湧きくる 机かな(長谷川櫂)
・黴煙(かびけむり):黴の胞子が舞い、黴臭いこと。黴は仲夏の季語
・黴拭う(かびぬぐう):黴を拭きとること。黴は仲夏の季語
・黴の香(かびのか):黴臭いこと。黴は仲夏の季語
・黴の花(かびのはな):黴の胞子のこと。黴は仲夏の季語
・黴の宿(かびのやど):黴がはえている宿。黴は仲夏の季語
新しき 帽子かけたり 黴の宿(高浜虚子)
黴の宿 頭上に橋の 音すなり(久米三汀)
・黴びる(かびる):黴が生えること。黴は仲夏の季語
・南瓜の花(かぼちゃのはな):ウリ科の一年草で、雌雄の別がある合弁花。茎は地を這いながら伸びて葉腋に黄色い花を咲かせる
・蜀葵(からあおい):タチアオイの古名
・唐糸草(からいとそう):バラ科の多年草。日本原産の高山植物で、全国の高山で自生しているが、観賞用に庭に植えられ、切花としても用いられる。根生葉は大きく、茎につく葉は小形で鋸歯をもつ。茎の先に出た花穂 が紅紫色のモールのように垂れ下がる
・烏柄杓(からすびしゃく):サトイモ科ハンゲ属の多年草。日本各地の山地や平地に自生する。葉柄は細長く、20cmくらい。六月から七月にかけて、茎よりも長い緑色の仏炎苞を伸ばす。球茎を薬用にする
・唐撫子(からなでしこ):石竹の別称。夏に薄赤い花が咲き、観賞用に栽培されている
・唐桃(からもも):杏子(あんず)の別称
・刈葱(かりぎ):ネギの一品種。葉が細く小さい。1年に数回採取できるが、特に夏のネギとする。夏ねぎ。
ユリ科の多年草で、何度も刈り取ることができることからこの名がある。繁殖力が強く子苗がさらに子苗を作るので、三階葱、やぐら葱ともいわれる。夏の薬味などに利用する
・かわほね:河骨(こうほね)に同じ
・甘藷の花(かんしょのはな/さつまいものはな):甘藷はヒルガオ科の一年生作物。中南米原産。十七世紀前半、九州に伝わったもの。七月から八月にかけて朝顔に似た淡いピンク色の花を咲かせる。本州ではあまり開花せず、九州や沖縄で見られる
・冠蝉(かんぜん):蝉茸(せみたけ)に同じ
・雁皮の花(がんぴのはな):四国、九州の太平洋側の乾燥した林に生息する、ジンチョウゲ科の落葉低木。初夏、沈丁花のような薄い黄色の小さい花をつける。樹皮から高級和紙をつくる。茶花に喜ばれるガンピ(岩菲)はナデシコ科の花で、別の植物
・木耳(きくらげ):キノコの一種。梅雨ごろから初秋にかけて朽ちた広葉樹に発生する。色は飴色がかり、形は人の耳に似ている。又、感触が寒天質のくらげに似ているため、この呼び名がついた。中華料理には欠かせない食材である
木耳や 引窓明いて 厨(くりや)の日(嶋田青峰)
・羊蹄の花(ぎしぎしのはな):タデ科の多年草。丈は60cm前後。湿地や水辺に咲く。茎の上部から枝分かれして先に花を付ける。花は小さく淡緑色。若芽にぬめりがあり食用にもなる。陸じゅんさいともいう
・黄菖蒲(きしょうぶ):アヤメ科アヤメ属の多年草。西アジアからヨーロッパ原産の帰化植物。
花茎の高さは60~100 cmになる。葉は幅2~3 cm、長さ60~100 cm、剣形で中脈が隆起し明瞭で、縁は全縁。花期は5~6月で、アヤメやノハナショウブと同じ、外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、内花被片が小型で直立した、黄色の花を咲かせる。外花被片の中央に茶色がかった模様がある。和名は花が黄色であることに由来し、斑入葉や八重咲きなどの園芸種がある
・きっこう草(きっこうそう):一薬草の別称。六、七月頃、白梅に似た白い花をつける
・京鹿子(きょうがのこ/きょうかのこ):バラ科シモツケソウ属の宿根草。観賞用に庭などに植えられる。草丈は70cm~1mくらい。六月から七月にかけて、茎の頂点に下野草に似たピンク色の花を咲かせる
・叫出冬(きょうしゅつとう):夾竹桃の別称
・夾竹桃(きょうちくとう):原産地がインドの常緑の潅木。乾燥に強い為、街路樹や工場地帯の緑化にも使われる。花は白や桃色の濃淡で、一重と八重咲きがある
・麒麟草(きりんそう):ベンケイソウ科キリンソウ属の多年草。日本各地の山野の日当たりのよい岩などに自生する。草丈は10~30cmくらい。長さ5cmほどの長楕円の葉は互生する。五月から八月にかけて茎の先端に集散花序を出し、黄色い花を多数咲かせる
・金英花(きんえいか):花菱草の別称
・金柑の花(きんかんのはな):中国渡来のミカン科キンカン属の常緑低木。高さは2mくらいになる。枝に小さな棘を持つ。初夏から秋にかけて直径2cm二センチくらいの白色五弁の小花を咲かせる。季語としては夏の方をとる。秋に直径3cmくらいの実が熟す
・金魚草(きんぎょそう):ゴマノハグサ科の多年草。原産は地中海地方。高さは50cmくらい。夏、白や黄色や赤の花を穂状につける。花びらが金魚の尾びれに似ているところからこの名がついた
・金糸桃(きんしとう):未央柳(びようやなぎ)の別称
・銀龍草(ぎんりょうそう):イチヤクソウ科の菌根植物。山地の木陰に生える。高さ10cm程。六・七月頃茎の頂に白い花をつける。茎も葉も花も銀白色をしている。姿形から銀の龍に見立てる。幽霊草、幽霊茸の名もある
・白屈菜/草の王/草の黄(くさのおう):ケシ科クサノオウ属の越年草。日本各地の山野に自生する。草丈は30~80cmくらい。切れ込みのある葉は互生する。五月から七月にかけて枝先に黄色の四弁花を咲かせる。花径は2cmくらい
・くすぐりの木(くすぐりのき):百日紅(さるすべり)の別称
・梔子の花(くちなしのはな):本州の中部以南に自生する常緑低木で、高さは1~3m。庭木として多くの園芸種がある。6~7月、枝先に香りのいい白色の六弁花を咲かせ、夜にはさらに香りたつ。果実が熟しても口を開かないことから、「口無し」の名がついたともいわれる
口なしの 花さくかたや 日にうとき(与謝蕪村)
山梔子や 築地の崩れ 咲きかくし(堀 麦水)
口なしの 淋しう咲けり 水のうへ(松岡青蘿)
薄月夜 花くちなしの 匂ひけり(正岡子規)
今朝咲きし くちなしの又 白きこと(星野立子)
・黒黴(くろかび):黒っぽく生えてくるカビの総称
・桑苺(くわいちご):桑の実の別称。六月頃に実を結ぶ
・桑の実(くわのみ):桑はクワ科の落葉高木。春に小花をつけ、夏に実を結ぶ。熟すと黒紫色になり多汁で甘い。養蚕が盛んな頃は子供が摘んで食べ、唇を紫色に染めたが、最近はあまり見かけなくなった
桑の実や 花なき蝶の 世捨て酒(松尾芭蕉)
桑の実や 紅粉(べにこ)つけ過ぎる 里の嫁(堀 麦水)
桑の実や 馬車の通ひ路 ゆきしかば(芝不器男)
・毛黴(けかび):藻菌類のケカビ属の腐生的な黴。菌糸はよく分枝して広がる。菌糸から一本ごとに直立して枝分かれしない柱状の柄を出し先端に球状で黒色の胞子嚢を生じる
・罌粟坊主/芥子坊主(けしぼうず):罌栗の花の散った後につける球形の実のこと。茎頭に青緑色の実がつき、やがて熟して黄色になると、上部の穴から小さな種を放出する。薬味として用いられる。種は非常に小さいもののたとえに使われる
けしの花 余り坊主に なり易き(正岡子規)
夕暮や 芥子の坊主の 又殖ゆる(長谷川零余子)
ぎざぎざの 葉に雨一つ 芥子坊主(原石鼎)
地を這ふて 曲る茎あり 芥子坊主(原石鼎)
芥子坊主 一つ出来たる 淋しくや(松本たかし)
・甲州梅(こうしゅううめ):小梅の一種。葉も花も小さく、梅雨の頃に実る梅の実も小粒
・河骨(こうほね):スイレン科の多年草。水のきれいな沼、池、川などの浅い所に自生する。太く白い根が白骨のように見える。六~七月頃水中から 花茎をのばし、水面上に黄色い花をつける。葉はさといもの葉に似ている
河骨の 終(つい)にひらかぬ 花盛り(山口素堂)
河骨の 二もとさくや 雨の中(与謝蕪村)
河骨の 金鈴ふるふ 流れかな(川端茅舎)
人寝て 河骨ばかり 月夜かな(長谷川櫂)
・小梅(こうめ):梅の品種のうち実が小ぶりなもの。
昔は長野県や山梨県で獲れる小梅が有名で、それぞれ、信濃梅、甲州梅とよばれた
・苔青し(こけあおし):梅雨時の雨をたっぷり吸って、苔類や地衣類が青々と茂ること。湿気を好む陰気な植物ではあるが、苔寺といわれる京都西芳寺のそれは息をのむほどに美しい
・苔茂る(こけしげる):苔青しに同じ
・苔の花(こけのはな):梅雨のころ、苔に咲く白や紫、赤などのごく小さな花のごときもの
今の夜の 竹を育てつ 苔の花(椎本才磨)
岩角や 火縄すり消す 苔の花(炭太祇)
踟幮(ちちゅう)する 沓(くつ)に音なし 苔の花(与謝蕪村)
絶々に 温泉の古道や 苔の花(大島蓼太)
水かけて 明るくしたり 苔の花(岩間乙二)
松かさの ころびかかるや 苔の花(羅川)
苔咲くや 親にわかれて 二十年(村上鬼城)
・呉茱萸の花(ごしゅゆのはな):呉茱萸はミカン科ゴシュユ属の落葉小高木。高さは5mく らい。全体に毛が多く、独特の臭気を持つ。五月から六月にかけ て枝先に緑白色の五弁花を多数咲かせる。秋に熟す非常に苦い果 実は健胃剤などに利用される
・小苗打ち(こなえうち):子供の行う苗打ち
・小苗配り(こなえくばり):子供の行う苗打ち。田植えをしている早乙女に向って苗を投げ渡す役目をする子供。
・小判草(こばんそう):イネ科の一年草でヨーロッパ原産。イネに似た細長い葉が叢生し た中に細い茎が出て小判の形をしたうす黄緑色の小さな穂がいく つもつり下がる。切花やドライフラワーにする
・小町草(こまちそう):虫取撫子の別称。夏に薄紅色の花が集まり咲く
・子安草(こやすぐさ):一八(いちはつ)の古名
・蒟蒻の花(こんにゃくのはな):蒟蒻はサトイモ科の多年草で、蒟蒻の原料として栽培される。五月ころ紅紫色の仏炎苞に覆われた紅紫色の棒状の花を咲かせるが、五年くらいたった球茎(こんにゃく玉)でないと花はつけない
(3)さ行
・皂莢の花(さいかちのはな):マメ科の落葉高木。夏、葉の根元から伸びた穂先に淡い黄緑色の小花を房状につける
・早乙女花(さおとめばな):、アカネ科ヘクソカズラ属の蔓(つる)性多年草で、やぶや道端など至る所に生える雑草。夏に中心部が赤紅色の白い小花を咲かせる。
かわいらしい花を咲かせる様子や、花を水に浮かべた姿が田植えをする娘(早乙女)のかぶる笠に似ていることから、早乙女花と呼ばれる。葉や茎など全草を傷つけると、悪臭を放つことから屁屎葛(ヘクソカズラ)の別名がある。また、花を伏せて置いた姿が灸(やいと)に見えることから、灸花(やいとばな)という別名もある
・榊の花/賢木の花(さかきのはな):神棚や祭壇に供えるなど、神道の神事には欠かせない常緑のツバキ科の小高木。六月から七月、茂った葉のつけ根から白い清楚な花をひっそりと咲かせる。花がこぼれる風情も可憐。十一月には黒く小さな実をつける。神と人との境であることから「境木(さかき)」の意であるとされる
あやにくや 賢木(さかき)花散る 神子(みこ)が袖(巴文)
・桜の実(さくらのみ):桜の花が終わった後の小さな実。豆粒ほどで食べられず、次第に黒っぽくなる
桜の実 わが八十の 手を染めし(細見綾子)
・桜実となる(さくらみとなる):初夏、花が終わり、青葉の影に青実を結んだ桜のこと
・さくらんぼ:桜桃の実に同じ
・石榴の花(ざくろのはな):ザクロ科の落葉低木。六月の梅雨頃、赤橙色の六弁の花をつける
・笹の子(ささのこ):篠の子(すずのこ)の別称。梅雨頃に生えてくる小竹の筍
・杜鵑花(さつき):ツツジ科の常緑低木でつつじの一種。紅紫、ピンクなど色はさま ざま。園芸種として栽培されるが、渓流の岩肌などにも自生する。 つつじに遅れて五月半ば頃から開花する
さつき咲く 庭や岩根の かびながら(炭 太祇)
庭石を 抱てさつきの 盛りかな(三宅嘯山)
満開の さつき水面(みなも)に 照るごとし(杉田久女)
・皐月躑躅/五月躑躅(さつきつつじ):ツツジ科の常緑低木。古来、庭木として親しまれ、六月頃に紅紫色の漏斗状の花をつける
・薩摩芋の花(さつまいものはな):甘藷の花(かんしょのはな)に同じ
・早苗(さなえ):稲の苗のこと。おもに、田植えのときの苗をいう。そのみずみずしさをたたえて玉苗という美しい呼び名もある。水を張った田に苗の束を投げ込むのを苗打ち、方々の田に苗を分けるのを苗配り、舟を使えば早苗舟などの子季語もある
西か東か 先早苗にも 風の音(松尾芭蕉)
早苗にも わが色黒き 日数かな(松尾芭蕉)
雨折をり 思ふ事なき 早苗かな(松尾芭蕉)
里の子が 燕握る 早苗かな(各務支考)
山おろし 早苗を撫て 行方かな(与謝蕪村)
・早苗籠(さなえかご):早苗を入れて田植に使う籠。早苗は初夏の季語
・早苗束(さなえたば):田植の時早苗を配りやすいようにまとめたもの。早苗は初夏の季語
・早苗取(さなえとり):苗代から苗を抜き取り、田植に備えること。日の昇らぬうちの、朝早い作業である
早苗とる 手もとやむかし しのぶ摺(ずり)(松尾芭蕉)
小山田に 早苗とるなり 只一人(正岡子規)
翁さび 媼さびたり 早苗取る(長谷川櫂)
・早苗舟(さなえぶね):田植の時、早苗を配るのに使う舟
・百日紅(さるすべり):梅雨明けごろから九月末まで咲き続ける木の花。「百日紅(ひゃくじつこう)」の名は、百日ものあいだ咲きつづけることに由来する。花の色は紅のほかに白、紫もある。樹幹の肌が滑らかで、「猿も滑る」ところからこの名がある
袖に置くや 百日紅の 花の露(安原貞室)
籠らばや 百日紅の 散る日まで(各務支考)
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅(加賀千代女)
百日紅 ややちりがての 小町寺(与謝蕪村)
百日紅 ごくごく水を 呑むばかり(石田波郷)
さるすべり 美しかりし 与謝郡(森澄雄)
・三階葱(さんかいねぎ):刈葱(かりぎ)の別称
・椎の花(しいのはな):ブナ科の常緑高木の総称を椎という。ツブラジイとその変種のスグダジイがあり、暖地に自生して大樹になる。六月頃、雌雄別々の穂状花をつけ、強烈な匂いを発散する
旅人の 心にも似よ 椎の花(松尾芭蕉)
椎の花 人もすさめぬ にほひかな(与謝蕪村)
椎の花 古葉まじりに 散り敷きし(松本たかし)
・ジキタリス:ゴマノハグサ科ジギタリス属の二年草。ヨーロッパ原産で庭や公園などに植えられる。草丈は1mくらい。五月から六月にかけて、釣鐘型の花を茎の下から順に咲かせる。花の色は白、ピンク、紫など。葉に強心成分を含んでいるので、昔から薬用に栽培されてきた
・刺繍花(ししゅうばな):紫陽花の別称
・七変化(しちへんげ):紫陽花の別称。箱根空木の別称
・信濃梅(しなのうめ):小梅の一種。葉も花も小さく、梅雨の頃に実る梅の実も小粒
・紫薇(しび):百日紅(さるすべり)の別称
・繍線菊(しもつけ):日本各地の山地に自生する落葉低木。下野の国(栃木県)で見つけられたことからシモツケと呼ばれるようになった。六月、枝の先に淡紅色や白の小さな五弁の花が多数集まって咲く
下毛花 や奥底もなき 花のなり(早野宋阿)
しもつけを 地に竝べけり 植木売(松瀬青々)
・馬鈴薯の花(じゃがいものはな/ばれいしょのはな):ナス科の一年生作物。南アメリカ原産で十七世紀にオランダ人がインドネシアから日本にもちこんだ。六月ころ茎の先端に白や淡いピンクの花をつける。根茎は食用となるじゃがいも
・じゃがたらの花(じゃがたらのはな):馬鈴薯の花に同じ
・芍薬(しゃくやく):ボタン科の多年草。牡丹に似ているが、牡丹は木、芍薬は草である。園芸種が多く、花色も純白から深紅まで、変化に富む。薬の原料として用いられてきた歴史もある
芍薬を 如意にもち行く 御僧哉(竜眠)
芍薬の 蕊の湧き立つ 日南(ひなた)かな(炭 太祇)
芍薬や おくに蔵ある 浄土寺(安井大江丸)
芍薬の つんとさきけり 禅宗寺(小林一茶)
芍薬の 蕾をゆする 雨と風(前田普)
芍薬を 剪るしろがねの 鋏かな(日野草城)
芍薬を ぶつきらぼうに 提げて来し(長谷川櫂)
芍薬の なかばねむりて ゐるかたち(高田正子)
・十薬(じゅうやく):ドクダミ科多年草。茎の高さ15~35cm。地下茎で広がる。四枚の白い花びらと見えるものは苞で、花はその中心に立つ穂である。葉はハート型で臭いが強く、十薬という名の通り民間薬として利尿剤皮膚病など広く用いられてきた
十薬や 夏のものとて 花白し(田川鳳朗)
・樹梅(じゅばい):楊梅(やまもも)の別称
・菖蒲(しょうぶ):端午の節句になくてはならない水辺の草。水中から剣のような緑の葉をのばし、夏に黄緑の小花をつける。葉には芳香がある。邪気を払う植物の一つであり、端午の節句には菖蒲湯を立て菖蒲酒を作る。古くは「あやめ」「あやめ草」といった
しだり尾の 長屋々々に 菖蒲哉(服部嵐雪)
道すがら 拾ひし菖蒲 葺きにけり(石田波郷)
菖蒲湯の 踏みしだき入る 菖蒲かな(長谷川櫂)
・菖蒲園(しょうぶえん):六月梅雨時に花菖蒲を観賞するための場所
・菖蒲田(しょうぶた):六月梅雨時の花菖蒲の植えてある田
・菖蒲見(しょうぶみ):六月梅雨時に花菖蒲を観賞すること
・除虫菊(じょちゅうぎく):キク科の多年草。初夏のころ茎の先に白色または紅色の菊に似た 花が咲く。この花を原料にして農薬や蚊取り線香が作られていた
・白葵(しろあおい):アオイ科の多年草で、夏に白い花を咲かせる
・白あやめ(しろあやめ):初夏に白い花をつける菖蒲(あやめ)のこと
・白杜若(しろかきつばた):紫ではなく白い花をつける杜若の変種
・白黴(しろかび):パンや野菜など食品によく見られるフワフワとしたカビ。見た目がホコリのようだが、その性質は黒カビや赤カビと似ている。
空気中に漂っているので、条件が整っている場所を見つけて付着し、増殖する
・白さるすべり(しろさるすべり):花の色が白い百日紅のこと
・白菖蒲(しろしょうぶ):花菖蒲の一種。六月梅雨時に白い花をつけるもの
・西瓜の花(すいかのはな):西瓜はウリ科スイカ属の蔓性一年草。六月から七月にかけて蔓の先端に花を咲かせる。雌花雄花とも黄色で、花径は3cmくらいである
・水蘭(すいらん/みずらん):鳶尾草(いちはつ)の別称
・末摘花(すえつむはな):染料や化粧品の紅の原料となる花。山形県最上地方が栽培地として有名である。古くは末摘花(すえつむはな)といい、源氏物語にも「末摘花」の巻が見られる。花びらから紅が取れるのでこの名がある
・篠の子(すずのこ): 篠は細い竹のこと。入梅の頃、地下茎より新しい芽を生じる。それを篠の子または笹の子と呼ぶ。煮物や酢の物になり、その歯応えが喜ばれる
篠の子や 終に絶えたる 厠道(炭 太祇)
篠の子の やすくも過る 日数かな(巵言)
・捨苗(すてなえ):田植えをする時、小さくたばねた苗を、植えていくのに適当な箇所箇所に投げ散らすこと。また、その苗
・李/李子(すもも):中国原産で、古く日本に渡来し栽培されているバラ科の果実。桃に似ているが、実は小さくすっぱいので酸桃という。六月頃に、黄色、または赤紫色に熟す
毒を盛る 親はなみだの すもゝ哉(志太野坡)
葉隠れの 赤い李を なく小犬(小林一茶)
熟れきつて 裂け落つ李 紫に(杉田久女)
・石竹(せきちく):ナデシコ科の宿根性多年草。中国原産で唐撫子とも言われ、葉も花の形も撫子に似ている。初夏、茎頂に分枝して紅、薄赤、薄紫などの五弁の花を開く
石竹や 紙燭して見る 露の玉(森川許六)
石竹や 節横をれて うち乱れ(蝶夢)
蕾ながら 石竹の葉は 針の如し(正岡子規)
・石斛(せっこく):ラン科の常緑多年草。暑さに強い日本原産のラン。岩や老木の枝 等に着生する。白っぽい紐のような根で着生し、根元から太い茎が束生する。二年から三年経った古い茎の上部に、白色又は淡紫 色の美しい花を数個つける。茎には節があり、新しい茎には節ご とに披針形の葉が互生している。古くから干したものを薬用とし た。草丈は10~20cm
石斛や 朝雲ひかる 峰の寺(高田蝶衣)
・石斛の花(せっこくのはな):ラン科の常緑多年草。夏、淡紫色や白色の花が咲く
・銭葵(ぜにあおい):アオイ科の越年草。高さ60~90cm。葉は円形で長い柄をもち、互生する。初夏、赤紫色の五弁花を開く。ヨーロッパの原産で、日本には元禄以前に渡来。錦葵。小葵
銭葵 垣より伸びて 貸家かな(高浜虚子)
・蝉茸(せみたけ):バッカクキン科トウチュウカソウ属。地中でにいにい蝉のさなぎ に寄生して成長する。夏になると死んださなぎから棒状の子実体を地上に伸ばす。橙黄色で径は5mmくらいで丈は5~8cmくらい。寺の境内などで見られる
・蝉花(せみばな):蝉茸に同じ
蝉花や 疎き山辺の 青葉垣(松瀬青々)
・芹の花(せりのはな):芹は湿地や水田に群生する。野菜としても栽培される。花期は七、八月で、五弁の花。まっすぐに伸びた茎の先に咲いた二十前後の細かく白い楚々たる花である
・栴檀の花(せんだんのはな):樗(おうち)の花のこと。初夏、淡紫色の小花が穂状に咲く
・剪刀草(せんとうそう):沢瀉(おもだか)の別称。六、七月頃に白い花をつける
(4)た行
・橙の花(だいだいのはな):インド原産の日本に最も古く輸入されたミカン科の常緑樹。五月から六月にかけて、香りのよい白色五弁の花を咲かせる。果実は正月飾りになるほか、果汁として料理に使われる
・田植草(たうえぐさ):特定の植物名ではなく、田植のころ咲く花の意
・田植花(たうえばな):田植の頃に咲く花。空木(うつぎ)などをいい、地方によって植物は異なる
・高菜(たかな):アブラナ科の越年草で、カラシナの変種。50~80cmくらいに成長する。葉や茎は柔らかく辛味がある。西日本に栽培され、おもに漬物に利用される
・竹咲く(たけさく):竹は、イネ科タケ亜科に属する多年生常緑草本植物の総称。めったに花が咲くことはない。竹類は約120年周期に花が咲き、笹類は60年周期に花が咲くといわれるが、どちらも開花後には枯れてしまう
・竹の皮(たけのかわ):筍の皮。生長に従い、下の方から皮は落ちていく
脱ぎ捨てて ひとふし見せよ 竹の皮(与謝蕪村)
竹の皮 朝々人に 落ちるなり(近嶺)
・竹の皮散る(たけのかわちる):筍の伸びるに従って根本から次第に皮を脱ぐさま
・竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ):筍は大きくなるに従い鱗片状の皮を根元から落とし若竹となる。昔はこの皮を用いて草履や笠を編んだり、防腐を防ぐために物を包んだりした
・竹の花(たけのはな):何十年かおきに、竹に稲穂のような花が咲くこと。この花が咲くと、竹は一斉に枯死するという
・立葵(たちあおい):アオイ科の越年草。高さ約2m。葉は心臓形で浅い切れ込みがある。花茎は長く、梅雨のころに、紅・白・紫色などの大きな花を下から上へ順に開く。観賞用。別名は、はなあおい・つゆあおい・からあおい・あおい
三方に 蝶のわかれし 立葵(中村汀女)
・橘の花(たちばなのはな):暖地に自生する日本古来の橘の花で、もともとは蜜柑の古称。六月頃に白い五弁の花をつける
・玉苗(たまなえ):早苗の別称
・瓊花(たまばな/けいか):紫陽花の別称
・田虫草(たむしそう):白屈菜(くさのおう)の別称
・俵麦(たわらむぎ):小判草の別称
・矮鶏菖蒲(ちゃぼあやめ):アヤメ科アヤメ属の耐寒性矮性宿根草で、「アヤメ」の園芸品種。草丈は10~20cm程で、別名「三寸あやめ」と呼ばれる
・提燈花(ちょうちんばな):蛍袋(ほたるぶくろ)の別称。六、七月頃に花がつく
・梅雨菌(つゆきのこ):梅雨茸の別称
・梅雨茸(つゆだけ):梅雨の時期に生える茸類の総称。倒木、切り株、湿った地面に生じる。純白、時には原色の茸もあり、湿度感とともに不思議な小 世界を演出している
・梅雨の茸(つゆのきのこ):梅雨茸に同じ
・釣鐘草(つりがねそう):蛍袋の別称。六、七月頃に花がつく
釣鐘草 後につけたる 名なるべし(越智越人)
蟻のより 釣鐘草の うつぶせに(加舎白雄)
・つる葵(つるあおい):二葉葵(ふたばあおい)の別称。ウマノスズクサ科の多年草、園芸植物、薬用植物
・定家葛の花(ていかかずらのはな):キョウチクトウ科の蔓性常緑樹。葉は対生し、楕円で光沢がある。 花ははじめ白色で後に黄色に変り芳香がある。集散花序をなして 葉のわきにつき、四月から五月に咲く。地方によって別名が多く、 マサキノカズラ、イワツタ、ツルクチナシなどなど
虚空より 定家葛の 花かをる(長谷川櫂)
・手毬花(てまりばな):スイカズラ科ガマズミ属の落葉低木。初夏。庭木として人気が高く、花の時期には見栄えのする大きな手毬風の花が枝いっぱいに開く。おおでまり
・唐辛子の花/蕃椒の花(とうがらしのはな):唐辛子はメキシコ原産のナス科トウガラシ属の多年草。実は香辛料、野菜に利用される。六月から七月にかけて、葉腋から花序を伸ばし五弁の白い花を咲かせる。花径は2cmくらい
・とうなすの花(とうなすのはな):南瓜の花(かぼちゃのはな)の別称。夏、黄色の合弁花をつける
・桃葉紅(とうようこう):夾竹桃の別称
・鴇草(ときそう):ラン科の多年草。山中の湿原に自生する野性ラン。高さ20cmほどの直立した茎の中程に長楕円形の葉が一枚つく。五月~六 月頃、茎の頂に鴇色の、鴇が羽根を広げて飛ぶ姿に見える花がひ とつつく
・どくだみ(どくだみ):ドクダミ科多年草。茎の高さ15~35cm。地下茎で広がる。四枚の白い花びらと見えるものは苞で、花はその中心に立つ穂である。葉はハート型で臭いが強く、十薬(じゅうやく)という別名の通り民間薬として利尿剤皮膚病など広く用いられてきた
どくだみや 真昼の闇に しろ十字(川端茅舎)
毒だみや 十文字白き 夕まぐれ(石橋秀野)
・虎尾草(とらのお):山野に自生するサクラ草科の多年草。六~七月頃、けものの尾の ような白く垂れた花穂を、直立した茎の頂につける。花穂は小さ な花の集合体で、先端へ行く程細くなっている
(5)な行
・苗打ち(なえうち):田植する田へ苗束を投げこむこと
・苗籠(なえかご):早苗を入れて田植に使う籠。早苗は初夏の季語
・苗配り(なえくばり):田植のときの苗まわしの仕事の一つ
・苗運び(なえはこび):田植のときの苗まわしの仕事の一つ
・苗まわし(なえまわし):田植のときの苗運び・苗配りの役
・苗持子供(なえもちこども):子供の行う苗打ち
・夏梅(なつうめ):木天蓼の花(またたびのはな)の別称
・夏芭蕉(なつばしょう):大型の葉をゆたかにひろげた初夏の芭蕉の姿
・生藺(なまい):沢瀉(おもだか)の古名。
・南天の花(なんてんのはな):中部より南の本州、四国、九州の山地に自生し、庭木として植えられる。六月、茎の頂に小さな六弁花を多数つける。冬の季語の実の鮮やかさと対照的に、花は地味で目立たない。一片ずつはらりと散りゆく風情は奥ゆかしい
南天の 実になる花と 思はれず(正岡子規)
・煮梅(にうめ):夏に取れた青梅に砂糖をいれて煮たもの
・錦葵(にしきあおい):銭葵(ぜにあおい)の漢名。アオイ科の越年草で、園芸植物・薬用植物
・錦木の花(にしきぎのはな):山地に自生するモチノキ科の落葉低木で、官軍の錦の御旗あるいは、紅葉が錦の織物のように美しいところからこの名がある。五~六月、枝のわきから淡黄緑色の直径6~8mmの四弁の小さな花を、数個集まった状態でつける
・日本橘(にほんたちばな):暖地に自生する日本古来の橘で、もともとは蜜柑の古称。六月頃に白い五弁の花をつける
・人参の花(にんじんのはな):セリ科の根菜。夏に種を蒔いて秋から冬にかけて収穫することが多い。初夏、葉腋から花序を伸ばし、白い小花をたくさん咲かせる。人参は花が咲く前に収穫するので、花を見かけることはあまりない
・軒あやめ(のきあやめ):五月五日の端午の節句の前夜、軒に菖蒲を葺いた邪気払いの風習
・鋸草(のこぎりそう):キク科の多年草。比較的乾いた日当たりのよい山地の草原に自生するが、観賞用に栽培されるものもある。互生する細長い葉の綠は細裂し、鋭い鋸歯がある。茎は直立し、50cm~1mほどになり、五~九月頃頂に直径7~8mm程の白い小花が沢 山かたまって咲く。花は赤いものもある(セイヨウノコギリソウ)
・野大黄(のだいおう):羊蹄(ぎしぎし)の別称。五、六月頃に薄緑色の小花を群生させる
・蚤の衾(のみのふすま):ナデシコ科の草で、小さな葉を蚤の夜具に見立てた名。六月頃、白い小花をつける
(6)は行
・蠅毒草(はえどくそう):ハエドクソウ科の多年草。北海道から九州にかけての落葉広葉樹 林に広く分布する。七月から九月にかけて、淡い紫色から白色の 花を咲かせる。草全体に有毒物質を含み、ハエの幼虫を殺したり、 蠅取り紙を作るのに利用したことからこの名がついた
・蠅取草/蠅捕草(はえとりぐさ):蠅毒草(はえどくそう)の別称
・蠅取撫子(はえとりなでしこ):虫取撫子(むしとりなでしこ)の別称。夏に薄紅色の花が集まり咲く
・白菖(はくしょう/しょうぶ):サトイモ科の多年草。菖蒲(しょうぶ)の漢名
・白丁花(はくちょうげ):中国原産のアカネ科ハクチョウゲ属の常緑低木。沖縄に自生するほか、生垣などに用いられる。丈は1mほどになり、葉は楕円形で肉厚。
初夏五、六月頃に、漏斗状に五裂した淡紅色をまじえた白い小花が集まり咲く
・怕痒樹(はくようじゅ):百日紅(さるすべり)の別称。枝をこすると、葉や花が笑うような動きをするといわれたことからの名
・箱根空木の花(はこねうつぎのはな):スイカズラ科タニウツギ属の落葉低木。北海道から九州まで広く分布するが、とくに関東南部から静岡県に野生が多い。庭木にもされる。花の色が白から紅に変るので、紅白混じりに咲き盛る
・芭蕉若葉(ばしょうわかば):芭蕉の巻き葉のこと
・巴旦杏(はたんきょう):バラ科で李の変種の果実。果肉は甘酸っぱいが、熟すと甘みが増し香りがよく色も透明感を増し美しい
・八仙花(はっせんか):紫陽花の別称
・花葵(はなあおい):立葵(たちあおい)の別称
・花あやめ(はなあやめ):菖蒲(あやめ)の花のこと。初夏から仲夏にかけ紫の花が咲く
花あやめ 一夜にかれし 求馬哉(松尾芭蕉)
朝風に 帷子軽し 花あやめ(内藤露沾)
壁一重 雨をへだてつ 花あやめ(上島鬼貫)
・花漆(はなうるし):ウルシ科の落葉高木。六月頃、葉の根元に円錐状の黄緑色の小花が集まり咲く
・花樗(はなおうち):樗の花(おうちのはな)の別称
・花南瓜(はなかぼちゃ):南瓜の花の別称。夏、黄色の合弁花をつける
・花梔子(はなくちなし):アカネ科の常緑低木の花。秋に実が熟しても口が開かないことからの名。夏に白色の六弁花をつける
・花慈姑(はなくわい):沢瀉(おもだか)の別称。六、七月頃に白い花をつける
・花苔(はなごけ):ハナゴケ科の地衣類。高山や寒冷地に群生。全体が樹状に分枝し、高さ3~10cm、灰白色。枝の先に子器 (しき) がつき、暗褐色。北極圏ではトナカイの飼料に利用。となかいごけ
・花榊(はなさかき):榊の花の別称
・花石榴(はなざくろ):柘榴の花の別称
・花椎(はなしい):椎の花の別称
・花菖蒲(はなしょうぶ):梅雨のころ、各地の菖蒲園などで大きくあでやかな紫や白の花を咲かせる水辺の草。水中や湿地で栽培されるが、陸でもよく育つ。剣状の直立する葉が菖蒲に似ていることから、端午の節句の菖蒲と混同されるが別物
花菖蒲 津田の細江の 便りかな(松岡青蘿)
足首の 埃たたいて 花さうぶ(小林一茶)
万座より 落せる水の 花菖蒲(前田普羅)
・花橘(はなたちばな):六月ころ、梢に香りの高い白い五弁の花を咲かせる。高貴な香りが古くから愛され、万葉集や古今集などに多く詠まれた花である。「五月(さつき)待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」『古今集』という歌以来、花橘は昔の恋を追慕させる花として詠まれる。京都御所の紫宸殿には左近の桜と並んで、右近の橘が植えられている
駿河路や 花橘も 茶の匂ひ(松尾芭蕉)
老ふたり 花たちばなに 酔泣す(加舎 白雄)
・花南天(はななんてん):南天の花の別称
・花人参(はなにんじん):夏に咲く食用人参の白色五弁の小花のこと
・花菱草(はなびしそう): ケシ科ハナビシソウ属の多年草。北アメリカ原産で公園などの植えられる。草丈は30cmくらい。初夏の頃、黄色またはだいだい色のヒナゲシに似た大型の四弁の花がつける
・花茗荷(はなみょうが):ショウガ科の常緑多年草。日陰を好み、40~50cmの草丈になる。みょうがに似た葉を持ち五~六月頃、赤いスジのある白い花をつける。実は球形で晩秋になると赤く熟す
・花藻(はなも):藻類の花の総称
・花柚(はなゆ):ミカン科の常緑木である柚子の花のこと。初夏、白いの小花をつける。実は秋の季語
吸物に いささか匂ふ 花柚かな(正岡子規)
・花柚子(はなゆず):花柚(はなゆ)に同じ
・浜昼顔(はまひるがお):ヒルガオ科ヒルガオ属の砂浜に生える蔓性多年草。日本全土の海岸の砂浜に自生する。五月から六月にかけて、朝顔に似た、漏斗状のピンク色の花を咲かせる。地下茎は砂の中を這ってのび、しばしば花の大群落を作る
・半夏生(はんげしょう):片白草(かたしろぐさ)の別称。水辺に生えるドクダミ科の多年草。六、七月頃、先端の葉が白く変色し、白い小花が咲く
・半夏生草(はんげしょうそう):半夏生(はんげしょう)に同じ
・半年紅(はんねんこう):夾竹桃の別称
・菱の花(ひしのはな):湖沼に群生する一年草で、落ちた種子が越冬し、翌年の三、四月 ころ発芽する。七月から八月にかけて白い四弁の花をつける
ゆく水の 跡や片寄る 菱の花(天野桃隣)
菱の花 引けば水垂る 長根かな(杉田久女)
・美女柳(びじょやなぎ):未央柳(びようやなぎ)の別称
・未央柳/美容柳(びようやなぎ):オトギリソウ科の半落葉潅木。中国原産。枝先にやや小型の黄色 の五弁の花が咲く。雄蕊が長く金糸のように見え美しい。美女柳 とも呼ばれる
咲き出でぬ びえうの柳 たよたよと(蛇足)
・鵯上戸の花(ひよどりじょうごのはな):ナス科ナス属の蔓性多年草。日本各地の山野に自生する。葉は互生し、全体が柔らかい毛で覆われる。七月から八月にかけて反り返った五弁の白い花を咲かせる。鵯がこの実を好んで食べることからこの名がある
・昼顔(ひるがお):夏の昼間、淡紅色のラッパ状の花を咲かせる。山地や都会の空き地などどこにでも見られる。日盛りに花を咲かせるところから、朝顔に対してこの名がある。万葉集のなかのカオバナはヒルガオといわれる
昼顔に 米つき涼む あはれ也(松尾芭蕉)
子ども等よ 昼顔咲きぬ 瓜むかん(松尾芭蕉)
ひるがほに 昼寝せうもの 床の山(松尾芭蕉)
ひるがほの 短夜ねぶる 昼間哉(松尾芭蕉)
昼顔や しめりなき野の きれ草鞋(炭 太祇)
とうふ屋が 来る昼顔が 咲にけり(小林一茶)
ひるがほを 踏みて眺めぬ 塩屋崎(前田普羅)
昼顔や ますぐな道の さびしさに(松本たかし)
昼顔の ほとりによべの 渚あり(石田波郷)
・枇杷(びわ):枇杷の果実のこと。枇杷は梅雨のころ、その大きな葉陰に電球をともしたような実をたくさんつける。果肉は甘く生食されるほか、缶詰に加工したりジャムにしたりする。実の中に大きな種を一つ持つ。長崎の茂木枇杷、房州の田中枇杷が有名である
枇杷黄なり 空はあやめの 花曇(山口素堂)
葉かくれぬ 夏こそ至れ 枇杷の色(大島蓼太)
・風鈴草(ふうりんそう):蛍袋(ほたるぶくろ)の別称。六、七月頃に花がつく
・二葉葵(ふたばあおい):ウマノスズクサ科カンアオイ属の多年草。本州、四国、九州の山地に自生する。茎は地を這うように伸び、先端にハート状の葉を二枚つける。五月ころ葉柄の付け根部分に紫褐色の小さな花を一つつける。葵に似た葉を二つつけるのでこの名がある
・豊後梅(ぶんごうめ):ウメの変種。アンズとの雑種に由来するとみられ、葉・花・果実が大きい。花は半八重のものが多く淡紅色で遅咲き。果実は径約5cmの球形で黄赤色に熟し赤褐色の斑点がある。果肉は厚く甘酸っぱく、梅干や煮梅にされる
・紅の花(べにのはな):染料や化粧品の紅の原料となる花。山形県最上地方が栽培地として有名である。古くは末摘花(すえつむはな)といい、源氏物語にも「末摘花」の巻が見られる。花びらから紅が取れるのでこの名がある
摘む女 わが世をいのれ 紅の花(池西言水)
眉掃きを 俤(おもかげ)にして 紅粉の花(松尾芭蕉)
行く末は 誰(た)が肌ふれむ 紅の花(松尾芭蕉)
鏡なき 里はむかしよ 紅の花(勝見二柳)
神子村や 椿の下の 紅のはな(高桑闌更)
・紅花/紅藍花(べにばな):紅の花に同じ
・鬼燈の花/酸漿の花(ほおずきのはな):ナス科の多年草。高さは50~80cm。六月から七月頃に淡黄白色の小さな花が卵状の葉に隠れるように咲く。花は下から上に咲き上がり青い実を結んでいく
酸漿(ほおずき)の 花に文字踏む 瓦かな(高桑蘭更)
・細葉麒麟草(ほそばきりんそう):麒麟草の一種。六月頃に黄色い五弁花を集める
・蛍袋(ほたるぶくろ): 山野に見られるキキョウ科の多年草。北海道西南部から九州に分布する。花の中に蛍を入れて遊んだとか、花の形を提灯に見立てたなど諸説がある。花は六、七月ごろに咲き、白色と淡紅紫色があり、濃い紫色の斑点がある
・牡丹杏(ぼたんきょう):夏の果実である李(すもも)の別称
(7)ま行
・木天蓼の花(またたびのはな):マタタビ科の蔓性落葉低木。山地に自生する。五月から六月にかけて葉腋に十円玉大の白い花を下向きにつける。その花が梅に似ているため夏梅ともいう。果実は果実酒などに利用される
・松本草(まつもと):松本仙翁を省略した名
・松本仙翁/松本仙翁花(まつもとせんおう/まつもとせんのうげ):ナデシコ科の多年草。仙翁花の一種
・檀の花(まゆみのはな):檀はニシキギ科ニシキギ属の落葉低木ないし落葉高木。山野に生 え、大きいもので15mにもなるが、普通は5mく らい。五月から六月にかけて柄のある集散花序を出し、淡緑色の 花をまばらに咲かせる。昔この木で弓を作ったので、真弓の名がある
・実梅(みうめ):梅雨の頃、すっかり熟して黄色になった梅の実のこと
・実桜(みざくら) :桜の実に同じ
実ざくらや 死にのこりたる 菴の主(与謝蕪村)
実桜や いにしへ聞けば 白拍子(堀 麦水)
・水芭蕉(みずばしょう):
・三つ柏(みつがしわ):沼や沢などの湿地に生えるリンドウ科の多年草。北海道、本州、九州の池や川のほとりに生える。高さ約30cm。葉は根生し葉柄の基部は鞘となり、葉身は三個の小葉からなる。各小葉は楕円形または長楕円形で縁は波状。
六月頃に、花茎を出し、先端の密な穂状花序に先の五裂した白い漏斗状花をつける。葉は苦味があり健胃薬にされる。漢名、睡菜
・三白草(みつしろそう/さんぱくそう):半夏生草の別称。六、七月頃、先端の葉が白く変色し、白い小花が咲く
・虫取撫子(むしとりなでしこ): ナデシコ科フシグロ属の一年草または越年草。ヨーロッパ原産で河原や野原などに生育する。丈は30~80cmくらい。葉は対生し、五月から七月にかけて集散花序に紅色の小さな花をたくさんつける
・芽笹(めざさ):篠の子(すずのこ)の別称。梅雨頃に生えてくる小竹の筍
・冬青の花(もちのはな):モチノキ科の常緑小高木。五月頃、葉の根元に黄緑色の小花が咲く
・黐の花(もちのはな):モチノキ科の常緑高木。暖かい地方の山地に自生する。雌雄異株で、初夏に1cmほどの淡い黄色の花を咲かせる
・木斛の花(もっこくのはな/もくこくのはな):木斛は、ツバキ科モッコク属の常緑高木。海岸に近い山地に自生 し、大きいもので15mくらいになる。六月から七月にかけて、葉腋に小さい白い花を下向きにたくさんつける
・藻の花(ものはな):金魚藻、梅花藻など、清冷な小川や湖沼の流れの中に咲く淡水藻の花を総じて、藻の花という。小さく、白やうす黄色など地味で目立たない
・ももかわ:山桃の別称
(8)や行
・楼子葱(やぐらねぎ):刈葱(かりぎ)の別称
・野次菰(やじこも):沢瀉(おもだか)の別称。六、七月頃に白い花をつける
・破れ傘(やぶれがさ):キク科の多年草。50~90cm程の高さがあり山地の木陰に生える。葉は七つから九つに深く裂けた大きな掌状で、夏に筒状の白い花をつける。春先の若葉のころ、名前の由来となった破れた傘のようなおもしろい姿を見ることができる
・山牛蒡の花(やまごぼうのはな):ヤマゴボウ科の多年草。日本全土に分布し人家付近に生える。根は円柱形。茎は太く直立し高さ1m内外となり大型楕円形の葉を互生につける。夏、茎頂に白い小花を房状につける
山牛蒡に 石ころ寄せぬ あらきはり(高田蝶衣)
・山苣の花(やまぢさのはな):エゴノキ科の落葉木。六月頃、枝先の花穂に乳白色の五弁花を集めつける
・山桃/楊桃(やまもも):関東や福井県よりも南西部の暖地、沿岸域に生育する常緑の高木。庭や公園にも植栽され、10mほどにもなる。春、雌株に赤い 花が咲く。実は入梅のころ赤から黒になって甘く熟し、ジャムや果実酒になる。味が桃の実に似ていたことからその名がついた
磯ぎはを やまもも舟の 日和かな(広瀬惟然)
楊桃の 山もりわびし 山折敷(蝶夢)
・虎耳草/雪の下/鴨足草(ゆきのした):梅雨どきに滴りを浴びる岩かげなどで、リボンを結んだような白い小さな花が群がって咲く。冬、葉が雪の下で枯れずにあることからこの名がある。「鴨足草」は、五弁の花の形が鴨の足に似ていることによる。「虎耳草」は花の形が虎の耳を連想させるという漢名
雪の下 名のらで寒し 花の色(越智越人)
日さかりの 花や涼しき 雪の下(呑舟)
六月を しづめてさくや 雪の下(東以)
・柚子の花(ゆずのはな):柚の花(ゆのはな)に同じ
・山桜桃(ゆすら)/ゆすらうめ:バラ科の落葉低木。中国原産。春、白い五弁の花を咲かせ、六月頃1cmほどの実をつける。青々とした若葉の中の深紅に熟した実は甘酸っぱくおいしい。子供達が木をゆすって実を落とすことから「ゆすら」の名がある
ゆすらの実 麦わら籠に あまりけり(五十崎古郷)
くちすゝぐ 古き井筒の ゆすら梅(杉田久女)
・柚の花(ゆのはな):ミカン科の常緑樹。実を採るために山や畑で栽培される。初夏に五弁の白い小さな花をつける。芳香を放つ花である
柚の花や 昔偲ばん 料理の間(松尾芭蕉)
柚の花や 能き酒蔵す 塀の内(与謝蕪村)
うば玉の 烏芋の煮しめ 花柚かな(三浦樗良)
柚の花や 妹の魚干す 軒のつま(勝見二柳)
箒目に 莟をこぼす 柚の樹かな(杉田久女)
柚の花は いづれの世の香 ともわかず(飯田龍太)
新婚の ころの花柚の 香と思ふ(長谷川櫂)
・米桃(よねもも):夏の果実である李(すもも)の別称
・四葩の花(よひらのはな):紫陽花の別称
(9)ら行
(10)わ行