<2024/3/19追記>日銀がようやくマイナス金利政策を解除
日銀は3月19日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めました。
2007年以来17年ぶりの利上げです。長期金利を低く抑えるための長短金利操作も撤廃し、事実上のゼロ金利政策に移行します。上場投資信託(ETF)の新規購入も終了します。
今春闘の平均賃上げ率が高水準となり、賃金と物価がそろって上がる経済の好循環が実現すると判断したもので、日銀は約11年に及ぶ大規模緩和策の正常化を始め、金融政策は歴史的な転換点を迎えました。
しかし、日銀の判断は遅きに失したと私は思います。
みずほ銀行は、2021年1月から新規預金の「通帳発行手数料」として、70歳未満の人を対象に1100円を徴収することを発表しました。現在、発行している通帳の印紙税負担額が年間50億円にも上るそうです。他の銀行もやがて追随するのではないかと思います。
これは「Web通帳(デジタル通帳)」へのシフトを促すという側面もあるでしょうが、マイナス金利政策によって「本業のもうけ」(総資金利ザヤ)が僅かになってしまっているため、金融機関が「手数料ビジネス」に力を入れざるを得なくなっている表れではないかと思います。
1.「インフレターゲット」の呪縛
日本銀行の黒田東彦総裁が主宰する「日銀政策決定会合」では、マイナス金利政策の弊害(副作用)を認識しつつも、この政策を継続することにしています。
これは「2%の物価上昇」という「インフレターゲット」の呪縛があるからだと思います。
2.マイナス金利政策の弊害(副作用)
マイナス金利政策の弊害(副作用)としては次のようなものがあります。
(1)金融機関の収益悪化
特に地方銀行においては、多くの銀行が赤字となっています。大手銀行も恒常的な低収益に苦しんでいます。これは異常事態であり、日本銀行はこの現実を直視して、政策変更の決断をすべきです。
東京商工リサーチの調査によれば、国内銀行110行の2019年9月中間期決算の「総資金利ザヤ(中央値)」は0.15%で、2010年9月中間期の0.25%以降「右肩下がり」が続いています。
2016年2月に日本銀行がマイナス金利を導入した後は、金融機関は貸出金利の低迷から抜け出せず、金利収入の中心である「貸出金利回り」は低下の一途をたどっています。
2020年5月に発表された銀行収益は前年度比6300億円も減少しており、この傾向はコロナ禍でさらに悪化すると見込まれます。
(2)低金利による大多数の預金者の苦しみ
マイナス金利政策の弊害(副作用)は、金融機関だけではありません。
「預金者」である大多数の国民も、預金の「超低金利」に苦しんでいます。
現在、普通預金の金利は、平均で0.001%しかありません。定期預金の金利も0.002%程度です。ネット銀行やボーナス時期のキャンペーン金利でもう少し高い金利もありますが、それでも0.2%~0.3%程度で1%未満です。
これでは、銀行にお金を預けておく値打ちがありません。「口座維持手数料」を取られるようになればなおさらです。
3.金利引上げは景気回復につながる
今の「マイナス金利政策」によって、最大の恩恵を受けているのは「最も多額の借金(国債)をしている日本国(日本政府)」です。つまり、マイナス金利の究極の効果は「財政救済」です。
また借入をしている企業や住宅ローンなどの借入をしている個人も恩恵を受けていますが、大多数の国民はそのしわ寄せを受けています。
「昭和の初め頃は、2万円を銀行信託にしておけば、贅沢をしなければ、その利子で一生食べられると言われた」という夢のような話を聞いたことがあります。どうも戦前は「利子」で食べられる時代だったようで、うらやましい限りです。
預金金利が3%~5%程度に上がれば、何も「消費税引き下げ」を行わなくても、消費刺激効果は出ます。
そして、金融機関も「総資金利ザヤ」が上昇すれば、経営状態の改善が見込まれ、手数料の引き上げ抑制にもつながると思います。何よりも「金融危機回避」につながります。
日本銀行におかれましては、「マイナス金利政策の見直し」を早急に行っていただきたいと思います。