最近「ウッドショック」という言葉をよく耳にするようになりました。
「〇〇ショック」と言えば、かつて1971年に起きた「第一次ニクソンショック(ニクソン訪中宣言」と「第二次ニクソンショック(ドルショック)」、1970年代に2回発生した「オイルショック」(原油の供給逼迫徒原油価格高騰)、2008年に米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した「リーマンショック」などがあり、特に「オイルショック」は「トイレットペーパー騒動」があり「狂乱物価」も重なって我々の生活に直接響いたので、実感がありました。
しかし、この「ウッドショック」は今のところ実感としてはあまりないので、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか?
1.「ウッドショック」とは
2021年3月以降顕著になった「世界的な木材供給の不足と木材価格の高騰により、市場が混乱している状況」のことです。
特に日本では、木材の約6割を輸入に頼っているため、住宅建設などへの影響が大きいわけです。
日本の住宅業界では、住宅価格が上昇し始めており、建築会社の中には着工遅れや工事中断、受注停止に追い込まれる業者も出てきており、この状況がいつまで続くのか不透明な状況です。
木材の価格指標となる「シカゴ木材先物価格」は、1年で約5倍に上昇し、2021年5月に最高値を付け、その後下落基調ですが高値圏で推移しています。
日本国内の木材価格も上昇しており、一部の木材では「2.5倍に上がった」という話もあります。
2.「ウッドショック」の原因と対策
しかし日本は国土の7割が森林の「森林大国」であるのに、木材需要が大幅に増加したとはいえ、輸入木材に6割も頼っているというのは不思議ですね。
(1)原因
①新型コロナウイルスの感染拡大
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で「働き方の見直し」が行われ、テレワークの普及や、大都市から郊外への移住が増えたことや製材業界の供給力低下が、「ウッドショック」の大きな引き金になったと言われています。
コロナの収束が見通せない今、当分この状況が続きそうです。
②世界的な住宅建設・リフォームブーム
「働き方の見直し」によって、世界的に家を郊外に新築したり、現在住んでいる家でもテレワークなどを含めた快適な環境にするためのリフォームが盛んになったことで木材需給が逼迫し始め、木材価格が高騰したのが直接の原因です。
この傾向は特に中国とアメリカで顕著です。
アメリカではコロナによる家計の支出減に加えて潤沢な給付金、低金利の住宅ローンも追い風になって、住宅建設・リフォームブームが起きたのです。
③製材業界の供給力低下
コロナウイルスの感染拡大で、一旦需要が落ち込んだため、製材業界は減産体制に入りました。
しかし②に述べたような事情で、需要はⅤ字回復し需給バランスが崩れました。
④世界的なコンテナ(コンテナ船)不足
日本が海外から木材を輸入するにも、船で運搬することになるわけですが、人口の多い中国でも同様に木材ニーズが高まり、世界中から木材を高値で輸入している背景もあり、運搬する船(コンテナ船)そのものが不足しているのです。
コロナの感染拡大当初、海運業界も取り扱い荷物が減少したことを受けて、コンテナの数を減らしました。
そんな中で、巣ごもり消費の拡大と木材需要の急増が重なってコンテナ不足に陥ったのです。
スエズ運河で起きた大型コンテナ船座礁事故も、海運の混乱に拍車をかけました。
要するに「世界中で木材の奪い合い状態」になっているわけです。これも輸入コストが上がることで、結果的に木材価格高騰の原因につながっています。
(2)対策
短期的な対策は、消費者としては住宅の新築やリフォームを、木材供給が安定し価格が落ち着くまで見合わせるということになると思います。
木材問屋やハウスメーカーでは、卸売価格や受注価格の値上げも検討されることでしょう。
しかし長期的な対策は、「輸入木材から国産木材へのシフト」に尽きると思います。
①国産材活用率の引き上げ
前に食料安全保障のための「食糧自給率引き上げ」の記事や、日本への製造業回帰による「サプライチェーンの中国依存からの脱却」の記事を書きましたが、林業においてもかつてのように木材自給率をできるだけ早く100%近くになるようにすべきです。
②「自伐型林業」と「大規模木材加工工場の国産材利用増加」の推進
前に書いた「自伐型林業」の記事に詳しくご紹介しています。
③国による計画的な林業政策の実施
「適切な国産材の伐採と、計画的な植林」を後押しする林業政策の実施が必要だと思います。また、国産材価格の安定化も不可欠だと思います。
将来的には、「国産材の輸出」も検討課題になるのではないかと思います。