アメリカの初代大統領のジョージ・ワシントン(1732年~1799年)が少年時代、父親が大事にしていた桜の木が邪魔だと思って無断で伐った後、正直に告白したところ、許された上に逆に「正直に話したことは良いことだ」と褒められたというエピソードは有名ですね。
ところが、このエピソードは真っ赤な嘘で「作り話」だったということを最近知りました。この話は書籍販売業者で伝記作家のロック・ウィームズ(1759年~1825年)が「逸話で綴るワシントンの生涯」という本の中で紹介したものですが、初版にはなく、第5版から突然登場します。彼は本の売り上げを伸ばすために、オーバーなエピソードを「創作」したようです。
1.「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」とは
このことわざは庭木の剪定法を言ったもので、その意味は、「桜は枝を切るとそこから腐りやすくなるので切らないほうがよく、梅は切り口の回復が早い上に枝を切らないと無駄な枝が付いてしまうので切ったほうがよいとされる」ことです。
確かに梅の木をよく観察すると、枝が大変混みあっています。徒長枝・幹吹き・立ち枝・交差枝・枯れ枝などが入り乱れており、風通しが悪く、オビカレハの幼虫の毛虫が発生しやすい木です。
よく似たことわざに「梅は伐れ、桜は伐るな」「桜折る馬鹿、柿折らぬ馬鹿」「桃を切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というのがあります。
2.「折り梅」とは
「折り梅」とは、梅は折れても枯れても花を咲かせることから名付けられたものです。梅は枝を折って活けても、皮から養分を吸って咲き続けます。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」と相通じる言葉です。
ところで、梅の花の香りを表す四字熟語に「暗香疎影(あんこうそえい)」という言葉があります。「折り梅」は美しい日本語ですが、「暗香疎影」は同じく美しい漢語だと思います。
3.「剪定」の大切さ
「剪定」とは、樹木の枝を切り、樹形を整えたり風通しを良くすることです。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」は、植木だけの話ではなく、「教育」にも通じる話です。
樹木にはそれぞれの特徴や性格があり、その特徴や性格に合わせて世話をしないとうまく行かないわけですが、教育も同じことで、自由に伸び伸びさせて放任するほうがよいタイプと、いろいろと気を付けて見守ってやる必要があるタイプがあります。
「学校教育」でも「家庭教育」でも、それぞれの子供の特性を見極めて接し、教育することが大切だと思います。