岸田首相の「新経済対策」は、健全財政を否定する詭弁であるMMT理論(現代金融理論)に基づくような「バラマキ全開」の対策だと私には見えます。
日本の2021年度の一般会計予算案でみると、「政策的経費」は、歳出総額から国債費の一部を除いた83.4兆円、「税収等」は、 歳入総額から公債金を除いた63.0兆円であり、 PBは20.4兆円の赤字になっています。
そこで今回は、その前にやるべき政策を提言したいと思います。
1.今行うべき政策(私見)
私は今、早急に行うべき政策は次のようなものだと考えています。
(1)コロナの「感染症指定区分」を2類相当から5類へ変更
「自宅療養者急増!2類相当から5類へ変更が病床逼迫への対応に最も有効!」に詳しく書いています。
私はこれが「即効性のある最も効果的なコロナ対策」だと思います。
「医療逼迫」「医療崩壊」や「保健所がパンク状態で、保健所に電話がつながらない」などの事態を回避できます。
「政府分科会」や「日本医師会」の強い抵抗があるかもしれませんが、国民全体のことを考えて早急に実行してほしいものです。
(2)日銀の「マイナス金利政策」を即時停止し、緩やかな金利上昇を図る
「マイナス金利政策は早急に中止し、金利を引上げて景気回復を実現すべき!」に詳しく書いています。
「マイナス金利政策」の廃止によって、預金者にとっては消費税減税と同様の効果が期待できます。金融機関にとっても利ザヤが確保できるようになり経営状態の改善につながります。
この「マイナス金利政策」は借金王である国の金利負担軽減(国債のゼロ金利)に寄与しているだけで、景気浮揚効果はさほど期待できません。
米国では米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和政策の縮小に動きましたが、日銀は大規模金融緩和の継続姿勢を示しています。首相は、日銀について、2013年に公表した「共同声明」の考え方に則り、引き続き物価安定目標2%の実現に向けて努力する方針を明らかにしていると指摘しています。
日銀の今後の取り組みについては「日銀の判断に委ねる」としたで、「政府は賃金の持続的な上昇を考えていくことを大事にしていきたい」と語っています。
しかし「マイナス金利政策」は「副作用」の方が大きすぎますので、政府が主導的な立場で「出口戦略」を早急に打ち出すべきです。今の黒田総裁は「物価上昇率2%」というインフレターゲットが政策目標になってしまった感があり、新しい総裁に期待したいと思います。
(3)住宅ローン減税を即刻廃止
2.岸田首相の「新経済対策」発表
2021年11月19日、岸田首相は政府与党政策懇談会で、財政支出の総額が過去最大規模の55.7兆円(事業規模78.9兆円)となる「新経済対策」について「国民に安心と希望を届けられる十分な内容と規模になっている」と述べ、裏付けとなる今年度の補正予算案の速やかな成立を目指す考えを示しました。
「新経済対策」について「新型コロナ対策に万全を期し、厳しい影響を受けた方々に万全の支援を行うとともに、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想などの成長戦略と、人への投資の強化や公的価格の在り方の見直しなどの分配戦略を車の両輪に、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環を生み出していくためのものだ」と述べました。
財政支出は、国と地方の支出と国が資金を調達して低金利で貸し出す財政投融資を含んだもので、規模はコロナ禍を受けてまとめた2020年4月の経済対策の48.4兆円や同年12月の40兆円を上回ります。55.7兆円のうち、国の歳出は43.7兆円で、財政投融資は6兆円程度です。
3.「新経済対策」の具体的内容
主な内容は次の通りです。
(1)年収960万円未満の世帯の18歳以下に10万円相当を給付(現金とクーポン券)
(2)賃上げをする企業への法人税減税
(3)所得の少ない住民税非課税世帯に現金10万円を給付
(4)コロナ禍で売上が減少した中小事業者に「事業復活支援金」(最大250万円)を給付
(5)GoTo事業を見直した上で実施
(6)保育士・介護職員らの収入を3%程度(月額9,000円)、看護師らの収入を1%程度(同4,000円)引き上げ
4.「新経済対策」の問題点
(1)財源の問題
今回の経済対策の財源について、岸田首相は「赤字国債を含め、あらゆる手段、予備費等を総動員して考えていかなければならない」と述べています。
首相自身は消費税について「触ることは考えていない」と明言しつつ、今後の税制は「新しい資本主義実現会議」での議論に基づいて、与党税調でも議論することになるとしました。そうした仕組みの中、金融所得課税や内部留保課税についても考えていきたいと語っています。
しかし「消費税増税」の可能性も依然としてあります。
(2)財政規律の問題(バラマキ批判)
岸田首相は、「経済が再生すれば、その先に財政規律を検討する局面になる」としています。
今年の「骨太の方針」では2025年のプライマリー・バランス(PB)の黒字化目標を堅持するとしている一方、年度内にコロナの経済財政への影響の検証を行って目標年度を再確認するという但し書きもあると指摘し、PBについては、その方針に従って再確認、検証していくと述べています。
しかし、財務省の矢野康治事務次官は月刊誌「文芸春秋」11月号(2021年10月8日発売)への寄稿で、コロナ禍での政策論争を「バラマキ合戦」と批判しました。
矢野氏は寄稿で、数十兆円規模の経済対策や財政収支を黒字化する目標の「凍結」が主張され、衆院選を前に消費税の減税が提案されていることを列挙し、「まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかり」と批判しています。
「今の日本の状況をたとえれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです」
本人は「間違ったことを正すのは公僕の務め」と主張していますが、この突然の「反乱」の裏には財務省が狙う「コロナ増税の布石」という見方もあります。
エコノミストからも「来年の参院選に向けたバラマキ色が強い」との批判が出ています。
「バラマキ批判」は、エコノミストや野党だけでなく自民党内にもあります。