先日、フランス政府が、日本政府に対して再三にわたり「ルノーと日産との経営統合」を要求して来ているというニュースがありました。
フランス政府はルノーの筆頭株主で、ルノーは日産の株式の43%を持つ筆頭株主とはいえ、日本政府に対してこのような「筋違いで手前勝手な要求」という圧力をかけて、「恫喝」してくるとは、中国やロシアとあまり変わらないように私は感じました。
日本政府が、「民間企業の問題であり、政府が関与する問題ではない」と突っぱねたのは当然の対応ですが、水面下では日産の援護射撃をしてほしいものです。
日産の元会長(解任済み)でルノーの会長(ただし、解任の方向)でもあるカルロス・ゴーン被告の特別背任など「会社を私物化」した犯罪事実が次々と明らかになる中で、フランス政府もカルロス・ゴーンをルノーの会長にとどめることはもはや不可能と判断し、今度はトップをすげ替えた上、支配力を強めて引き続き日産から収益を上げようという魂胆のようです。
しかし、今や日産にとって、ルノーは「お荷物」であり、日産の収益を吸い上げる(ルノーの純利益の半分は日産の「持ち分法投資利益」)だけで、新しい技術も日産に頼り切っている「過去の名門企業」に成り下がっており、提携関係を維持するメリットはありません。
そして、1999年日産が苦境にあった時に提携したという経緯もあって、この「提携関係」は、日産に極めて不利な「不平等提携」です。ルノーが日産株の43%を保有しているのに対し、日産はルノー株の15%しか保有しておらず、比較的弱い立場に置かれているからです。
ルメール経済・財務相が、1月20日付の仏紙のインタビューで、日産側が求めている「(ルノーとの)資本構成の均衡回復や両社相互の資本参加の変更は、議論の対象ではない」と断じているように、フランス政府に「不平等提携」を変更する意思は全くありません。
ルメール経済・財務相は、ダボス会議でも「ルノー・日産連合の強化が日仏双方の利益」と「お為ごかし」の発言をしていますが、「フランスファースト」の奸計だと私は思います。
現状をベースとして経営統合が立案されれば、ルノーや、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の影響力が強い統合形態になりかねません。現在表向きは、日産はルノーとの提携関係を維持していく方針とのことですが、経営の独立性が薄まる提案は受け入れがたいのは当然でしょう。
不況に苦しむフランスでは、マクロン大統領への抗議デモが続いています。「フランスでのルノーは、日本のトヨタ自動車のように国を代表する企業」(アナリスト)で、経営統合を求めた背景には、「フランス国民に向けて名門企業の経営強化をアピールし国民の不満をそらそうとしているのでは」(日産幹部)との見方もあるようです。
フランス政府が経営統合を「ゴリ押し」するのは、日産の工場をフランス国内に作り、日産のカネで雇用を創出する思惑もあるようです。
カルロス・ゴーンの逮捕に加え、今回のフランス政府からの「経営統合圧力」があったのを契機に、逆に日産はルノーとの「提携関係の解消」に向けて動き出すのではないかと私は予想しています。