今年はNHK大河ドラマで「鎌倉殿の13人」が放送されている関係で、にわかに鎌倉時代に注目が集まっているようです。
2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、佐藤二朗さんが頼朝の側近で後に「頼家の後ろ盾」となる比企能員を演じており、重要な役どころである予感がします。
彼はどのような人物だったのでしょうか？もともと武蔵比企郡の豪族ですが、穏和な性格で流されやすいところがあり、妻の道（みち）から苦言を呈されることもあった愛すべき人物のようです。
ところで歴史上の人物で、肖像画などがある有名な人はイメージしやすいのですが、比企能員のように何もない場合は想像しにくいので、冒頭に佐藤二朗さんの画像を入れました。
１．比企能員について
（１）比企能員とは
比企 能員（ひき よしかず）（？～1203年）は、平安時代末期から鎌倉時代初期の武将で、鎌倉幕府の有力御家人です。阿波国または安房国出身とみられます。
源頼朝の乳母である比企尼（ひきのあま）（生没年不詳）の甥で、のちにその猶子（養子）となりました。比企尼の夫比企掃部允は藤原秀郷の流れを汲むとされている比企氏の一族です。
比企尼の縁から鎌倉幕府二代将軍・源頼家の乳母父となり、娘の若狭局が頼家の側室となって嫡子一幡を産んだことから権勢を強めましたが、能員の台頭を恐れた北条時政との対立により「比企能員の変（比企の乱）」が起こり、比企一族は滅亡しました。
（２）比企尼の猶子
寿永元年（1182年）8月12日、鎌倉比企ヶ谷の能員の屋敷にて、北条政子が頼朝の嫡男・万寿（のちの源頼家）を出産しました。
能員の伯母（叔母）である比企尼は頼朝の乳母を務め、頼朝が流人となったのちも20年間支援を続けた忠節の報いとして、甥である能員を猶子として推挙し、その縁によって能員は頼家の乳母父に選ばれています。
比企尼には3人の娘がいましたが、男児には恵まれませんでした。そのため、夫の死後は甥の能員を猶子に迎え家督を継がせたのです。
頼家誕生にあたって最初の乳付けの儀式は比企尼の次女（河越重頼の妻）が行い、比企尼の三女（平賀義信の妻）、能員の妻も頼家の乳母になっています。
（３）頼朝の側近
能員はその後も頼朝の信任厚い側近として仕えます。
元暦元年（1184年）5月、源義高の残党討伐のため信濃国に出陣。同年8月、平氏追討に従軍。元暦2年（1185年）3月、「壇ノ浦の戦い」で平氏が滅んだのち、捕虜として鎌倉に送られた平家の棟梁・平宗盛と頼朝が御簾越しに対面した時、頼朝の言葉を伝える役目をしています。
上野国・信濃国守護（信濃国目代を兼任）となり、文治5年（1189年）の「奥州合戦」には北陸道大将軍、建久元年（1190年）の「大河兼任の乱」には東山道大将軍として出陣。同年に頼朝が上洛した際、右近衛大将拝賀の随兵7人の内に選ばれて参院の供奉をしました。
さらに、これまでの勲功として頼朝に御家人10人の成功推挙が与えられた時、その1人に入り右衛門尉に任ぜられました。
建久9年（1198年）、娘の若狭局が頼家の側室となり、長男・一幡を産むと外戚として権勢を振いました。
（４）鎌倉殿の13人
正治元年（1199年）1月に頼朝が死去したのち、「十三人の合議制」の1人に加えられ、梶原景時排斥にも荷担しました（梶原景時の変）。
（５）比企能員の変（比企の乱）
建仁3年（1203年）、頼家が病床に伏し、8月に危篤状態に陥りました。『吾妻鏡』によると、8月27日に北条時政は一幡と頼家の弟・源実朝に頼家遺領分与を決定し、関東28ヶ国地頭職と日本国総守護職を一幡に、関西38ヶ国地頭職を実朝に相続することになりました。
これに不満を持った能員は、頼家に実朝擁立を計る時政の謀反を訴え、頼家は時政追討を能員に命じました。
しかし、この密議を障子の影で立ち聞きしていた政子が時政に告げ、先手を打った時政は大江広元の支持を取り付けると、9月2日、仏事の相談があるとして能員を時政の自宅である名越邸に呼び出しました。
密議が漏れていることを知らない能員は、さかんに引き止めて武装するように訴える一族に「武装したりすればかえって怪しまれる」と振り切り、平服のまま時政の屋敷に向かいました。
門を通って屋敷に入ったところを、武装して待ちかまえていた天野遠景、仁田忠常ら時政の手勢に両腕を取り押さえられ、引き倒されたところを刺し殺されました。
能員謀殺の知らせを受けた比企一族は、一幡の屋敷である小御所に立てこもって防戦しましたが、大軍に攻められ追いつめられると、屋敷に火を放ち一幡を囲んで自害しました。
一幡も焼死し、焼け跡から小袖の切れ端を乳母が確認したということです。能員の嫡男・余一兵衛尉は女装して逃れようとしましたが、道端で捕らえられ梟首されました。残る親族達もことごとく殺害されたということです。
京都側の記録である『愚管抄』によると、頼家は広元の屋敷に滞在中に病が重くなったので自分から出家し、あとはみな子の一幡に譲ろうとしました。それでは一幡を擁する能員の世になることを恐れた時政が、能員を呼び出して殺害し、一幡を殺そうと刺客を差し向けました。
一幡は母が抱いてかろうじて逃げ出しましたが、残る一族はみな討たれ1日で滅亡しました。その後、11月に一幡も北条義時の郎党に捕らえられて刺し殺されたということです。
『吾妻鏡』は比企一族を滅ぼした北条氏による後年の編纂書です。当時の貴族の日記によると、頼家が存命しているにもかかわらず、9月1日に頼家が病死したという鎌倉からの使者が7日早朝に到着しており、実朝を征夷大将軍に任命するよう要請しています。
鎌倉からの日数を考えると、使者が発った時点で頼家は重体であり、能員の殺害が決定していたとも考えられます。
『吾妻鏡』の記録では、頼家近臣として所領を没収され、遠流とされた信濃国の御家人中野能成は、比企氏滅亡の2日後の日付で、時政によって所領を安堵されている書状が残されています。この能成は時政の子・北条時房と深い関わりがありました。
『愚管抄』や都の貴族の日記および残された文書と『吾妻鏡』との相違、また『小代文書』という史料で能員が単身・平服で名越邸を訪れた様子が書かれており、北条氏征伐を企てたという能員が、敵であるはずの時政の邸を無防備に訪れている不自然さなどから、歴史学者からは比企氏の反乱自体が北条氏のでっちあげであろうとの見方がされています。
比企能員の屋敷跡に建てられた鎌倉市の妙本寺に、比企一族の墓があります。
なお、その他の登場人物については「NHK大河ドラマ｢鎌倉殿の13人｣の主な登場人物･ｷｬｽﾄと相関関係をわかりやすく紹介」に書いていますのでぜひご覧ください。
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３．女優の比企理恵は比企氏一族の末裔
若い頃アイドルとしてグラビアにも出ていた女優の比企 理恵（ひき りえ）（1965年～ ）は、比企氏一族の末裔だそうです。
彼女は20代の半ばに、パニック障害や金縛りに悩まされるようになるのと同時に父親が病気になり、「ヒーリング・ミュージック」で知られる宮下富実夫の勧めで、親子三人で戸隠神社（長野県長野市）に本格的な参拝を行ったところ、自身の症状が消え、父親の病気も治ったということです。以後、家族で毎年戸隠神社に参拝するようになったそうです。
戸隠神社参拝後、他の神社にも参拝するようになり、 富士山本宮浅間大社（静岡県富士宮市）の参拝後間もなく舞台の大役に抜擢されるなどし、また、各地の神社を巡れば巡るほど体調がよくなるようにも感じ、ついに「神社巡りがライフワーク」のようになったそうです。
なぜ神社巡りをするようになったかについて、上述の体験のほか、比企一族が先祖であることを意識しており、滅亡した一族の墓が妙本寺（神奈川県鎌倉市）にあるとされるなどの歴史が気になっていることが、神社や仏閣へのこだわりと関係があるかもしれないと語っています。
神社巡りを「神社ヒーリング」と名づけ、神社を「お参りするだけで心を癒してくれるヒーリング・スペースであり、開運の道しるべとなる場所」だと語っています。
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