前に「意外と知らない物の名前や現象の名前」「同(その2)」「同(その3)」「同(その4)」の記事を書きましたが、まだまだ面白い例がありますので(その5)としてご紹介します。
1.グレーヴィーボート
外食ではライスとルーを別盛りで提供しているお店も多くあります。そのカレールーが入っている器といえば、思い浮かぶのは、魔法のランプのような銀色の器ですね。
この「ソースやグレーヴィー・ソース(*)を供する、ボート形のピッチャー」のことをグレーヴィー・ボート(gravy boat)と言います。ソース・ボート(sauce boat)、あるいはソシエール(saucière)とも呼ばれます。
したたり落ちるソースを受け止めるために、ボートにときどき付属している皿の上にしばしば置かれたり、あるいは足があるものもあります。
(*)「グレーヴィー・ソース」とは、調理された食肉から出る肉汁(jus de viande)を元に作られるソースのことです。なお、gravyとは第一義的には肉汁そのもののことです。
2.袖ビーム
道路の路肩や歩道との境界などに設けられるガードレール( guardrail)の端の、歩道側に丸く曲がった部分(の部材)のことを「袖ビーム」と言います。
袖は、体で言えば両脇にありますから、建設用語でも「両脇」「端っこ」とかの意味で使います。
ビーム(beam)は、建築物の「梁(はり)」や「桁(けた)」のことをいいます。ガードレールで言えば横にくっついてる板の部分がビームと呼ばれます。
ガードレールの役割は、車両が車道からはみ出すのを防ぎ、車両の転落防止や通行者への被害をなくすことです。
一方、端に設置される「袖ビーム」の役割は次の通りです。
①車両がガードレールの端部へ衝突した際の衝撃を抑えること
②支柱間の隙間をなくすこと
3.デキシーカップ
オフィスでの自分用や、簡易応接用に使われる使い捨て簡易コップ(上の画像左)を「デキシーカップ(Dixie cup)」(または「インサートカップ(insert cup)」)と言います。
受け皿となる取っ手付きの「デキシーカップホルダー」(「インサートカップホルダー」)とセットで用います。
ちなみにinsertは「挿入する」という意味です。
1912年にアメリカで誕生した「デキシーカップ」は20世紀の「使い捨て文化」の始まりですが、廉価でシンプルな形状の簡易なコップとして今日まで世界中で作られた数は天文学的数字(文献によれば、60年代ですらアメリカで一日5000万個がつくられたという記録もある)で、1908年に誕生した「T型フォード」とともに人間の生活を変えたデザインの名品です。
4.フラップドア
「自動改札機」の扉のことを「フラップドア」と言います。
5.スパット
ボーリングのレーンに書いてある三角のことを「スパット」と言います。
ゴルフでも真っ直ぐに構えるコツの一つに「スパットを決める」ことがあります。
ショットを打つ時は、まずボールの後方に立ち、ターゲットを決めます。そしてアドレスに入る前にゴルフボールに近いところの、落ち葉や芝の色が変わったところなど見つけてそれをスパット(目標)にします。
注意点として、落ち葉や枯れ木などの場合は、風で飛んでいく場合もありますので、動かない物を見つけるか、風に飛ばされる前に打つ必要があります。
余談ですが、「スパット」は、「small mark」という意味の「スポット(spot)」が日本語的に変化したもののようです。
6.エクスクラメーションマーク(エクスクラメーションポイント)
俗に「びっくりマーク」と呼んでいる記号は「感嘆符」で、英語では「エクスクラメーションマーク(exclamation mark)」または「エクスクラメーションポイント(exclamation point)」と言います。
視覚的な表現として、「注意喚起」や「危険であることを示す」ために用いられることもあります。
7.TOT現象(舌先現象)
喉元まで出かかっているのに、あと一歩で思い出せない状態をあらわす、心理学用語です。TOTは “Tip of the tongue” の略。
TOT現象は、すべての年齢の人々に起こりえることですが、年を取るにつれて、より頻繁になります。
この現象が学習や日常生活を妨げるほど頻繁になった場合は、通常 頭部外傷 、脳卒中 、または 認知症からの脳損傷によって起こる「失語症」の可能性があります。
8.アオレカ現象
トランプなど、一定の順番を回してプレイするゲームで、誰かが長考して進行を妨げていることを非難したところ、自分の番であったことに気づき、あるいは指摘されてばつの悪い思いをする現象を「アオレカ現象」と言います。「止めとんの誰や?はよせい!あ、おれか。」に由来します。
9.アメリア・イアハート効果
どんな人でも、範囲を制限すれば必ず一位になれることがあるということを「アメリア・イアハート効果」と言います。
アメリカの女性飛行士アメリア・イアハート(1897年~1937年)は、1927年のチャールズ・リンドバーグに次いで2番目(1932年)の「大西洋無着陸横断者」ですが、女性では1番目でした。
10.インプリンティング
幼い頃に一度学習した内容が一生離れないことを「インプリンティング」と言います。雛鳥が初めて見た親鳥を一瞬で覚えるなど。「刷り込み」「刻印づけ」とも言います。
11.ウェルテル効果
人々が自殺の報道に感化されて自殺者が増える効果を「ウェルテル効果」と言います。ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』から取られた言葉です。
12.エコーチェンバー現象
インターネット掲示板などの閉じたコミュニティで、同じ意見を持つ人ばかりが集まることで、自分の意見が正しいとより強く思い込んでしまう現象を「エコーチェンバー現象」(反響室現象、英: echo chamber)と言います。
ソーシャルメディアやネット上の掲示板を利用する際に、自分と似た価値観をもつユーザーの主張ばかり見るために、自分と似たような考えや価値観、趣味嗜好を持った人たちが集まる閉鎖的な空間でやり取りが繰り返され、自分の意見や思想が肯定されることで、自身の主張する意見や思想が、あたかも一般的にもそうである、世の中における正解であるかのごとく勘違いしてしまう現象です。
又は交流・共感し合うことにより、特定の偏った意見や思想が増幅されて、より偏った方向に行ってしまう現象のことです。
攻撃的な意見や誤情報(デマ)や陰謀論などが広まる一因ともみられています。
このような閉鎖空間で似た者同士で意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってきて増幅していく状況を、「閉じた小部屋で音が反響する物理現象」から例えたものです。
13.獲得的セルフハンディキャッピング
「獲得的セルフハンディキャッピング」とは、試験前日に衝動的に部屋の掃除をしたり、ゲームなどで遊んだりして、あらかじめできない原因を自分に課してしまう状態のことです。
仕事に関しても同じような例があり、自分ではまかないきれない量の仕事を抱え込み、できない言い訳にする人がいます。 これも、「獲得的セルフハンディキャッピング」の典型的な行動です。
「セルフハンディキャッピング」は、自分で自分の成長を止めてしまう可能性がある心理状態です。
なお「セルフハンディキャッピング」には、もう一つ「主張的セルフハンディキャッピング」というのがあります。
「主張的セルフハンディキャッピング」とは、自分が困難に直面していると知っている周囲の人に向けて、言葉で言い訳をするような場合です。
たとえば、「あまり勉強ができなくて」「体調が悪くて」「自信がぜんぜんなかったから」などと周りの人に言いふらして、達成できなかったのは自分のせいではないと主張します。
結果が出る前からこのように吹聴して、失敗の原因をほかになすりつけて恥ずかしい思いをしないように予防しているのです。
14.カタルシス効果
「カタルシス効果」とは、怒り・悲しみ・苦しみ・苛立ちなどの感情を言葉にして表すことで安心して安定する効果のことです。「(心/精神の)浄化作用」とも言います。
15.タッセル
カーテンを開けた時に束ねる帯状や紐状のアイテム(バンド)は、「タッセル(Tassel)」と言います。
「タッセル」の由来はラテン語の「Tassau」から来ており、「留めるもの」という意味です。元来は房飾りをつけたものでしたが、現在はカーテンと共布のものが一般的です。
16.凍上
地中の水分が凍結するときの膨張により、地面が局部的に不規則に盛り上がる現象のことを「凍上(とうじょう)」(frost heave)と言います。
一般に土壌は単に凍るだけでは収縮し、凍上はおこらないはずです。しかし土壌中の通水性の悪い層がある場合、そこにたまった水分が凍結して凍上をおこすのです。
上の写真は、15cmの凍上の側面の土を除去した所で、春の融雪期の凍上の構造を示したものです。(2010年3月21日に米国バーモント州ウィンザー郡ノーウィッチ町で撮影)
下から上に向かって順に
(1)「霜柱」。これは下方にある地下水面から多孔質の土壌を通じて上がってきた水が凍結面の所から上へ立ち上がったもの。
(2)「氷と土壌が混合した層」。これはそれまで凍結・解凍を受けてきた層。
(3)一番上の「持ち上げられた土」
が見られます。