季節を感じる抒情歌・唱歌(その5) 四季を織り込んだ歌

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抒情歌・唱歌・春

日本には、四季折々の日本の風景や風物を見て感じたことを歌った美しい抒情歌や唱歌があります。

これらの歌は、我々の心を和ませる癒しの効果があります。特に私のように70歳を過ぎた団塊世代の老人には、楽しかった子供の頃や古き良き時代を思い出させてくれるとともに、心の平和・安らぎ(peace  of  mind)を保つ「心のクスリ」のような気がします。

ちなみに「抒情歌」(「叙情歌」とも書く)は、日本の歌曲のジャンルの一つです。 「抒情詩(叙情詩)」の派生語で、作詞者の主観的な感情を表現した日本語の歌詞に、それにふさわしい曲を付け、歌う人や聴く人の琴線に触れ、哀感や郷愁、懐かしさなどをそそるものを指し、これらの童謡や唱歌をはじめ、歌謡曲のスタンダードなバラードといったものを一つのジャンルにまとめたものです。

ちなみに2006年(平成18年)には、文化庁と日本PTA全国協議会が、親子で長く歌い継いでほしいとして日本語詞の叙情歌と愛唱歌の中から「日本の歌百選」(101曲)の選定が行われました。

そこで今回は第5回として「四季を織り込んだ歌」をご紹介します。

季節を感じる抒情歌・唱歌は、ほとんどが「春」なら「春」、「秋」なら「秋」という「特定の一つの季節」について一番から順に歌詞が作られています。

しかし数少ない例外ですが、一曲の中に「四季を織り込んだ歌」が存在します。

1.「四季の歌」

芹洋子 四季の歌

「春を愛する人は 心清き人」が歌いだしの『四季の歌』は、荒木とよひさが1963年頃に作曲した日本の歌謡曲です。1976年に芹洋子(1951年~ )が歌って大ヒットしました。

『時の流れに身をまかせ』や『心の瞳』など、後に作詞家として活躍する荒木とよひさの作詞デビュー曲であり、作曲まで行った楽曲でもあります。「日本の歌百選」の1曲です。

自然現象などを直喩として用い、友人・親・恋人といった身近な人を隠喩として用いながら、四季それぞれを愛する人の性格を表現しています。キャッチーでシンプルなメロディと老若男女問わず歌える歌詞で、1970年代半ばに日本で大ヒットしました。

荒木氏は大学時代、入院中の時間を使って『四季の歌』の作詞・作曲を行い、入院中に世話になった看護師に楽曲をプレゼントしたということです。

『四季の歌』は病院内で評判となり、看護師たちが地域ボランティアのイベント等で歌ったことで各地へ広まっていきました。

当時は作曲者名は伏せられていたようですが、1972年にレコード化された際、作曲者名として「荒木とよひさ」の名が表示されました。その後も続々とカバー盤がリリースされ、特に芹洋子によるカバーが人気となりました。

1981年には、日中文化交流音楽大使を務める芹洋子が北京公演で『四季の歌』を歌ったことで、中国でも同曲が中国語で歌われています。

『四季の歌』3番の歌詞では、「愛を語るハイネのような ぼくの恋人」のように、19世紀ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine)(1797年~1856年)の名前が登場します。

ハイネの詩には多くのクラシック音楽作曲者が曲をつけており、日本ではジルヒャーの『ローレライ』やメンデルスゾーンの『歌の翼に』が特に有名です。

春を愛する人は 心清き人
すみれの花のような ぼくの友だち

夏を愛する人は 心強き人
岩をくだく波のような ぼくの父親

秋を愛する人は 心深き人
愛を語るハイネのような ぼくの恋人

冬を愛する人は 心広き人
根雪をとかす大地のような ぼくの母親

2.「美しき天然」

【美しき天然】明治生まれのなじみの唱歌60曲

『美しき天然』(うるわしきてんねん)は、1902年(明治35年)に発表された田中穂積作曲・武島羽衣作詞の日本の唱歌です。

当時の楽譜には「ワルツのテンポで」と記されており、「日本初のワルツ」として紹介されることが多いようです。『天然の美』とも題されます。

歌詞付きの唱歌ですが、大正・昭和初期に数名でチンドン太鼓を鳴らして町を練り歩き宣伝を行った「チンドン屋の定番曲」として演奏されたことから、歌詞に比べてメロディが特に全国的に知名度が高くなりました。

作曲者・田中穂積の出身地である山口県岩国市の桜の名所・吉香公園(きっこうこうえん)には『美しき天然』の歌碑と胸像があります。


空にさえずる鳥の声
峯より落つる滝の音
大波小波とうとうと
響き絶やせぬ海の音

聞けや人々面白き
この天然の音楽を
調べ自在に弾きたもう
神の御手(おんて)の尊しや


春は桜のあや衣
秋はもみじの唐錦(からにしき)
夏は涼しき月の絹
冬は真白き雪の布

見よや人々美しき
この天然の織物を
手際見事に織りたもう
神のたくみの尊しや


うす墨ひける四方(よも)の山
くれない匂う横がすみ
海辺はるかにうち続く
青松白砂(せいしょうはくさ)の美しさ

見よや人々たぐいなき
この天然のうつし絵を
筆も及ばずかきたもう
神の力の尊しや


朝(あした)に起こる雲の殿
夕べにかかる虹の橋
晴れたる空を見渡せば
青天井に似たるかな

仰げ人々珍らしき
この天然の建築を
かく広大に建てたもう
神の御業(みわざ)の尊しや

3.「祇園小唄」

祇園小唄

「月はおぼろに東山」の歌い出しで知られる『祇園小唄』(ぎおんこうた)は、1930年(昭和5年)の歌謡曲です。作詞:長田幹彦、作曲:佐々紅華。

歌詞では、「東山」、「祇園」、「大文字」、「鴨の河原」といった京都の地名や風物詩が散りばめられ、「振袖」、「だらりの帯」、「口紅」などの舞妓さんを連想させる語句も随所に用いられています。

『祇園小唄』の歌詞で締めに繰り返される「だらりの帯」とは、京都の舞妓が着る振袖のだらり結びにした帯を指します。見習い期間に姐さん芸妓と茶屋で修業する際は、半分の長さの「半だらり」の帯となります。

舞妓の初期における髪型は「割れしのぶ」です。店出しから間もない年少の舞妓が結う髷(まげ)で、「ありまち鹿の子」や「鹿の子留め」など特徴的な髪飾りが目を引く華やかで愛らしい髪型です。『祇園小唄』の歌詞で「しのぶ思いを振袖に」とありますが、この舞妓の髪型の名称と無関係ではないでしょう。

1.
月はおぼろに東山
霞む夜毎のかがり火に
夢もいざよう紅桜
しのぶ思いを振袖に
祇園恋しや だらりの帯よ

2.
夏は河原の夕涼み
白い襟あしぼんぼりに
かくす涙の口紅も
燃えて身をやく大文字
祇園恋しや だらりの帯よ

3.
鴨の河原の水やせて
咽(むせ)ぶ瀬音に鐘の声
枯れた柳に秋風が
泣くよ今宵も夜もすがら
祇園恋しや だらりの帯よ

4.
雪はしとしとまる窓に
つもる逢うせの差向(さしむか)い
灯影(ほかげ)つめたく小夜(さよ)ふけて
もやい枕に川千鳥
祇園恋しや だらりの帯よ

4.「どじょっこ ふなっこ」

https://youtu.be/5qEbN4Kix70

『どじょっこ ふなっこ』は、作曲:岡本敏明による日本の童謡・唱歌です。

歌詞では擬人法が用いられ、どじょうやフナといった魚たちが、春夏秋冬・季節の変化を感じる様子が歌われています。

歌詞の作者については、豊口清志を作詞者とする説、もともとは東北地方に広まっていた民謡・わらべうたを豊口清志が採録したとする説などがあります。

作曲の経緯については、秋田の金足西小学校を岡本敏明氏が訪れ、歓迎会で聞いた原曲を合唱曲に編曲したというエピソードが残されています。

どじょっこふなっこ



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