日と月で「明るい」なのに、月と星で「腥(なまぐさ)い」となるのはなぜか?

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明腥

」といえば、「花鳥風月」という言葉があるように、古くから和歌や俳句など伝統的な韻文に詠まれるメインテーマの一つです。

太陽からは雅なイメージを感じませんが、月からは辺り一面に漂う静けさが感じられ、眺めているだけでしんみりとするものです。

ところで、日と月で「明るい」という漢字になるのに、月と星で「腥(なまぐさ)い」という漢字になるのはなぜでしょうか?

1.「月」という漢字の成り立ち

月という漢字の成り立ち

「象形文字」で、「月の欠けた象形」から「月」という漢字が成り立ちました。

なお、この部首には、「空に見える天体の月」と、「動物の肉や人の身体」を意味する「肉が偏(左右に組み合わせて出来ている漢字の左側の部分)になる時の形の肉月(にくづき)」、および「舟」を意味する「舟月(ふなづき)」の3種類が含まれています。それぞれは意味の上では全く関係がありません。

・月偏(つきへん):日にちや月の状態に関係する漢字(期、朔、育、望、朗など)

・肉月(にくづき):体の各部の名称やその状態に関係する漢字(胴、肌、背、脳、腸など)

・舟月(ふなづき):舟や川に関係する漢字(朝、服、前、朕など)

「朝」は篆文では、川の部分が舟(下の画像)になっています。

朝

草原に昇る太陽の象形から「あさ」を意味する「朝」という漢字が成り立ちました。潮流が岸に至る象形は後で付けられたものです。

朝という漢字の成り立ち服の成り立ち前の成り立ち朕の成り立ち

なお余談ですが、「豚」は、「月偏」でも「肉月」でも「舟月」でもなく、「豕(いのこ)」という部首です。「象」や「豪」も「豕」です。

2.「明」という漢字の成り立ち

明の成り立ち

「会意文字」(日+月)で、「太陽」の象形と「欠けた月」の象形から、「あかるい」を意味する「明」という漢字が成り立ちました。

3.「腥」という漢字の成り立ち

「形声文字」で、意味を表すのが「肉月=肉」です。読みを表すのが「星(せい、しょう)」で「生(せい、しょう)」に通じます。

そこから、「生肉」「生臭い」を意味するようになりました。

つまり、「腥」は「月偏」ではなく、「肉月」なので、「明」と同じような意味にならないのです。

4.「腥」はキラキラネーム?

最近は変わった読み方をさせる「キラキラネーム」を子供に付ける親が増えました。

かつて「腥」という漢字を使った出生届が役所に出されたことがあったそうです。「腥」と書いて「あきら」と読ませたいというのです。

命名者の意図では、「日」と「月」を並べると「明」という漢字になるのだから、「月」と「星」を並べても「あかるい」という意味になるはずだというわけです。

ただ、「腥」は子供の名前に使える漢字として法務省が定めている「人名用漢字」に入っていなかったので、受理されなかったそうです。

この不受理を「腥」という漢字の本来の意味を知らなかった申請者は喜ぶべきです。子供が成長して「漢和辞典」を引けるようになった時に、自分の名前に使われている漢字の本来の意味を知った時の驚きと悲しみはとても大きいと想像できるからです。

「漢字文化の崩壊」というと大げさですが、今の親たちはもう少し漢字に親しみ、漢字の理解を深めてもらいたいものです。団塊世代のおやじの繰り言かもしれませんが・・・

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