ドイツ語由来の「外来語」(その2:カ行)カール・カイザー・ガーゼ・カテゴリー・カフェイン・カプセル他

フォローする



カール

古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。

幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。

日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。

ドイツ語の外来語(ドイツ語から日本語への借用語)は、江戸時代は蘭学を通して、明治時代は欧米列強の近代的な技術を取り入れる過程で日本へ伝わり、日本語として定着しました。日本語になった単語の分野は、法学、医学、化学、物理学から、音楽、登山、スキーまで多岐にわたります。

そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)ドイツ語由来の「外来語」(その2:カ行)をご紹介します。

1.カール(Kar)

「カール」とは、氷河の浸食により山頂直下の斜面が、まるで巨大なスプーンででもえぐられたかのように窪んでいる地形のことです。日本語では「圏谷(けんこく)」と言います。

氷河期に成長した氷河が山肌を削り、半円形のような谷を形成し、氷河の後退に伴って初めて姿を現したものです。カールの特徴は、谷を囲む山側が急峻な山肌(カール壁)であり、その全面に比較的平坦なカール底が見られます。カール底には氷河によって削り取られた土砂や岩が堆積しており、「モレーン(Moräne)」(氷堆石)と呼ばれます。日本のカールは最終氷期に発達した氷河によるものと見られています。

日本では、北アルプス奥穂高岳・涸沢岳南面の「涸沢(からさわ)カール」や、中央アルプス宝剣岳直下の「千畳敷(せんじょうじき)カール」などが有名です。

2.カイザー(Kaiser

「カイザー」は、ドイツ語の皇帝号、君主号およびそれに由来する人名・地名です。

ガイウス・ユリウス・カエサル (Gaius Julius Caesar) から取られた帝政ローマの皇帝号や、副帝号カエサルの派生語でもあります。

ドイツ語では「皇帝」を意味しており、神聖ローマ帝国、オーストリア帝国(オーストリア=ハンガリー帝国)、ドイツ帝国では君主の称号を意味しており、フィクションでもドイツ系の皇帝の称号として使われます(例:『銀河英雄伝説』)。日本の天皇の訳語も「Kaiser」です。

堅い文では、「r」を母音化させない昔ながらの発音で「カイゼル」と読まれることもあり、その場合は「カイゼル髭」(*)で有名なヴィルヘルム2世(1859年~1941年)(下の画像)を指す場合が多いようです。

ヴィルヘルム2世

(*)「カイゼル髭」とは、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の髭がそうであったところから、左右両端を上にはねあげた八字型の口髭のことです。

3.ガーゼ(Gaze

「ガーゼ」とは、細い木綿糸(コットン)を漂白して目の粗い平織りにした柔かい布です。古典的な創傷被覆材です。日本語では「綿紗(めんしゃ)」と言います。

通気性に富み、吸湿性も良いので、汗のほか、手術時に血液を吸収させるのに用いられます。

4.カテゴリー(Kategorie

「カテゴリー」は、事柄の性質を区分する上での最も基本的な分類のことです。語源はギリシア語の κατηγορια。漢訳語は「範疇(はんちゅう)」です。

5.カフェイン(Kaffein)

「カフェイン」はドイツ語のKaffeinに由来し、コーヒー(Kaffee)に因んで命名されました。

カフェインは1819年にドイツの化学者ルンゲ(Friedlieb Ferdinand Runge)によって世界で初めてコーヒーから分離され、コーヒーに存在していることから当初はKaffebaseと呼ばれました。

6.カプセル(Kapsel)

「カプセル」はドイツ語のKapselに由来し、語源をさかのぼるとラテン語で「小箱」を意味するcapsulaに由来します。英語のcapsuleも同じ語源です。

7.カリウム(Kalium)

「カリウム」はドイツ語のKaliumに由来し、語源をさかのぼるとアラビア語の「植物の灰(al qalyah)」という言葉に由来します。

ポタシウム(Potassium) 、加里(カリ)とも言います。

8.カルテ(Karte)

「カルテ」はドイツ語で「カード」を意味するKarteに由来し、語源をさかのぼるとラテン語のcharta(紙)に由来します。英語のcardと同じ語源です。

9.カルテル(Kartell)

「カルテル」はドイツ語のKartellに由来します。語源を遡るとフランス語(cartel)やラテン語のcharta(紙)に由来し、英語のcartelとも同じ語源になります。

カルテルは企業同士の独立性を維持しつつ、市場を独占するために協定を結ぶことで、日本語では「企業連合」と言います。

10.ギプス(Gips)

「ギプス」はドイツ語やオランダ語で「石膏」を意味するGipsに由来します。ギプスの歴史は古く、メソポタミア文明の時から使用され始めたそうです。

11.ギムナジウム(Gymnasium

「ギムナジウム」は、ヨーロッパの中等教育機関のことです。日米の「単線型」教育制度に対する、主に中央ヨーロッパの「複線型」教育制度のいわば根幹を成す存在ともされます。国によって微妙に名称が異なります。

高等教育への進学準備を目指す課程であり、イギリスのグラマースクール、シックスフォームカレッジに相当します。日本でいう中高一貫教育に近いものです。

古代ギリシアのギュムナシオン(gymnásion)は、若い男性が身体や知性を磨くための場所でした。体育がとかくその前面に出て強調されるため、「屋内体操場」などと訳される場合もあります。

そこでは、もっぱら全裸でトレーニングが行われたため、ギムナジオンという施設の名前は、「裸で体操をする」という意味の”gymnázesthai”から由来したそうです。その名残として「ギュムナズィウム」とも呼ばれます。

ドイツ語では、体育という言葉も同じ由来のGymnastikを今も使っています。日本のボクシング、レスリングなど体育練習場を指す「ジム」も、同じ由来です。

12.グミ(Gummi)

「グミ」は、果汁などをゼラチンで固めたドイツ発祥の菓子の一種です。名称はドイツ語でゴムを意味するGummiに由来します。子供の噛む力の強化と歯の予防のために、1920年にドイツのハリボー社(HARIBO)が開発したそうです。

13.クリスタルナハト(Kristallnacht

「クリスタルナハト」とは、1938年11月9日夜から10日未明にかけてドイツの各地で発生した反ユダヤ主義暴動・迫害のことで、ユダヤ人の居住する住宅地域、シナゴーグなどが次々と襲撃・放火されました。日本語で「水晶の夜」と言います。

暴動の主力となったのは突撃隊(SA)のメンバーであり、総統アドルフ・ヒトラーや親衛隊(SS)は暴動を止めることなく、傍観者として振る舞いました。ナチス政権による「官製暴動」の疑惑も指摘されています。

事件当時は「帝国水晶の夜(Reichskristallnacht)」と呼ばれていました。この事件により、ドイツにおけるユダヤ人の立場は大幅に悪化し、後に起こるホロコーストへの転換点の一つとなりました。

「水晶の夜」という名前は、破壊された店舗のガラスが月明かりに照らされて水晶のようにきらめいていたことに由来します。

14.ゲシュタポ(Gestapo

「ゲシュタポ」は、ゲハイメ・シュターツポリツァイ(Geheime Staatspolizei)の通称で、ナチス・ドイツ期のプロイセン自由州警察、あるいはその後、ドイツ警察の中にあった秘密警察部門のことです。「ゲハイメ・シュターツポリツァイ」は、「秘密国家警察」を意味するドイツ語です。

1939年9月、国家保安本部(警察機構を司るナチス親衛隊の組織)に組み込まれました。

15.ゲネプロ(Genepro)

「ゲネプロ」とは、オペラやバレエ、演劇などの舞台芸術やクラシック音楽において、初日公演や演奏会の本番間近に本番同様に舞台上で行う「最終リハーサル」、「通し稽古」のことで、ドイツ語の「Generalprobe(ゲネラールプローベ)」の略称です。

16.ゲノム(Genom

「ゲノム」とは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、DNA(デオキシリボ核酸)の 全ての遺伝情報のことです。

生物が生きていくために必要な遺伝情報の1組をいい、構造としては染色体の1セットに相当します。

遺伝とは、たとえば鼻の形が似ている、ある病気にかかりやすいなどの、親の生物学的な特徴が子供に伝わることで、それを伝えるDNAの特定の部分が遺伝子です。

17.ゲバルト(Gewalt )

「ゲバルト」とは、「暴力」を意味するドイツ語です。日本では特に左翼学生運動に関する報道・評論の用語として使われ、「ゲバルト棒(ゲバ棒)」や「内ゲバ」「ゲバヘル」などの言葉の語源です。

18.ゲマインシャフト(Gemeinschaft)・ゲゼルシャフト(Gesellschaft )

ドイツ語では、 Gemeinschaft (ゲマインシャフト)は血縁や友情で結びついた者達が集まって形成する集団(「共同体」「共同体組織」)を意味し、 Gesellschaft (ゲゼルシャフト)は明確な目的を持って集まった集団(「社会」「会社などの組織」)を意味します。

ドイツの社会学者テンニース(1855年~1936年)が提唱したこの「ゲゼルシャフト(機能体組織、利益社会)」と「ゲマインシャフト(共同体組織)」とは対概念であり、原始的伝統的共同体社会(共同体組織)を離れて、 近代国家 ・ 会社 ・ 大都市 のような 利害関係 に基づき機能面を重視して人為的に作られた利益社会(機能体組織)を近代社会の特徴であるとしています。

「ゲマインシャフト」では 人間関係 が最重要視されますが、「ゲゼルシャフト」では利益面や機能面が最重要視されます。

19.ゲル(Gel)

「ゲル」はドイツ語のGelに由来し、語源を遡るとラテン語で「固まった、凍った」を意味するgelatus(ゲラトゥス)に由来します。ゲルにはゼリー、寒天、ゼラチン、豆腐、こんにゃくなどが含まれます。

20.ゲレンデ(Gelände)

ゲレンデはドイツ語で「土地」を意味するGeländeに由来します。geはドイツ語で集合を表わす接頭語、ländeは「土地」のことです。本来は単に土地を指す言葉でしたが、後にスキー場を指すようになりました。

21.ケロイド(Keloid

「ケロイド」とは、火傷や切り傷のあとなどにできる瘢痕(はんこん)組織が過剰に増殖し隆起したもので、「良性線維増殖性病変」に分類されています。和名は「蟹足腫(かいそくしゅ)」です。

22.コッヘル(Kocher)

「コッヘル」とは、キャンプ、登山等主に屋外で使用される携帯用の小型の調理器具です。

語源はドイツ語のKocher(調理するもの、調理器具)です。コッヒェル、コッフェルとも言いますがこれらは舞台発音からくるもので、現代ドイツ語発音に近い表記はコッハーです。英語のクッカー(Cooker )とほぼ同義です。

23.コラーゲン(Kollagen)

「コラーゲン」はドイツ語のKollagenに由来します。語源を遡るとギリシャ語で「膠(にかわ)」を意味するkolla(コラ)と「~から生じた」を意味するgen(ゲン)という言葉に由来します。合わせると「膠から生じた」という意味になります。

24.コンツェルン(Konzern)

コンツェルン

「コンツェルン」とは、独占価格を形成するために生産から販売までを統制するグループのことです。「カルテル」を基礎にしています(重畳的関係)。

交通経済上における自由活動性を制限する「トラスト」ほど、結束が強くないこともあります。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村