古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。
幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。
日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。
江戸時代の日本はヨーロッパで唯一オランダとは交易を持っていたため、オランダ語経由で様々な西洋の学問や知識を取り入れて来ました。現在では、オランダ語由来の言葉だとは分からないほど日本語として定着しています。
そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)オランダ語由来の「外来語」(その3:サ行~タ行)をご紹介します。
1.サーベル(Sabel)
「サーベル」は、ヨーロッパの湾刀で、オランダ語のsabelやドイツ語のsäbelに由来します。
14世紀頃にドイツ地方で使用されたのが始まりとされていますが詳しいことは分かっていません。最終的にはハンガリー語のszablyaに由来するという説もありますが、鎌型の剣(ケペシュなど)は古代エジプトなどで既に用いられていました。
英語ではsabreやsaberなど、日本語ではセーバーやセイバーと表記します。
2.シロップ(Siroop)
「シロップ」は、オランダ語のsiroop(シロープ)、更にはラテン語やアラビア語の「飲料(siropus, sharāb)」という言葉に由来します。英語はsyrupです。
3.スコップ(Schop)
「スコップ」は、オランダ語で「鋤、小さなシャベル」を意味するscopに由来します。
類似語のシャベル(shovel)は英語に由来する言葉です。JIS(日本産業規格)によると、足をかけるところがあるものをショベル(シャベル)、ないものをスコップと定義しています。
4.スポイト(Spuit)
「スポイト」は、オランダ語で「注ぎ口・針」を意味するspuitに由来します。
本来オランダ語のspuitにはスポイトという意味なく、日本には誤用で伝わりました。スポイトはオランダ語ではpipet、英語ではpipette(ピペット)やdropper(ドロッパー)と言います。
5.ソーダ(Soda)
「ソーダ」は、オランダ語で「重曹」を意味するsodaに由来します。
語源をさかのぼると、イタリア語やラテン語のsoda、さらにはアラビア語の「頭痛(sudā‘)」という言葉に由来します。最初に作られた炭酸水はレモネードに重曹を加えたものだったそうです。
6.ダム(Dam)
「ダム」は中英語や中期オランダ語のdamに由来します。
damという語はオランダの旧市街の名前によく用いられ、40以上の場所の名前になっています。たとえば1120年頃には「Obdam」という街が、1150~1500年頃にはアムステルダム(Amsterdam)やロッテルダム(Rotterdam)が発展しました。
7.タラップ(Trap)
「タラップ」は、オランダ語で「階段、はしご」を意味するtrapに由来します。
英語のtrap(罠、トラップ)と同じスペルですが同じ語源の同根語です。祖先の印欧祖語で「走る、歩く、踏む」などを意味する言葉(dreb-)から派生したようです。
ちなみに、タラップは英語ではgangwayやaccommodation ladderといいます。
8.デッキ(Dek)
デッキは「表面、甲板」を意味するオランダ語のdekや英語のdeckに由来します。語源をさかのぼると、中期オランダ語の「屋根、カバー(dec)」という言葉から発展したそうです。
9.ドック(Dok)
「ドック」は、船の建造・修理・荷の積み下ろしのための設備や施設のことですが、オランダ語のdokに由来します。
語源をさかのぼると、中期オランダ語の「水路、運河(docke)」、古イタリア語の「導管、水路(doccia)」、中世ラテン語の「導管(ducta)」という言葉に由来します。