光源氏のモデル・光孝天皇とは?55歳で即位した地味ながら聡明なイケメン。

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光る君へ

2024年NHK大河ドラマは「源氏物語」の作者である紫式部が主人公でそのパトロンでもあった藤原道長とのラブストーリーも含む「光る君へ」(主演・吉高由里子 作・大石 静)です。

2020年の「麒麟がくる」、2021年の「青天を衝け」、2022年の「鎌倉殿の13人」、2023年の「どうする家康」と力作・話題作が続くNHK大河ドラマですが、2024年の「光る君へ」も楽しみですね。

なお「源氏物語」と紫式部については前に「紫式部はなぜ源氏物語を書いたのか?藤原道長との不倫の真相は?」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

1.「光る君へ」について

主人公は紫式部 時代は平安

千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書きあげた女性
「光源氏」の恋愛ストーリーの原動力は
秘めた情熱と想像力 そしてひとりの男性へのおも
その名は藤原道長
変わりゆく世を自らの才能と努力で生き抜いた女性の
愛の物語                    (NHK PRより引用)

(1)創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部とは

2024年の大河ドラマは平安中期に、のちに世界最古の女性文学といわれる『源氏物語』を生み出した、紫式部の人生を描きます。武家台頭の時代を目前に、華やかにひらいた平安文化の花。きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生に挑戦する大河ドラマです。
平安時代といえば、十二単じゅうにひとえ姿の女性が長い髪をひいて伏している絵を思い浮かべませんか? その優雅さはともかく、実は平安はアクティブな時代。男は仕事先や寺社、はては野山まで馬でせ、女も自分の財産を持ち、家事のみならず、おでかけもすれば、宮仕えなどでキャリアを磨く。男女ともにいきいきとしたたたずまいは、現代に通じるものさえあります。
そんな平安時代でも、他の多くの時代と同じく、女性に学問は不要といわれていました。主人公の紫式部は、その中で自らの知性と感性、そして努力によって、壮大で精緻な恋愛長編『源氏物語』を書き上げた女性です。そんな紫式部の『源氏物語』執筆に、欠かせないひとりの男性が、藤原道長。ドラマでは紫式部が生涯心を寄せ、陰に陽に影響しあいながら人生をたどる、いわばパートナーとして登場します。
紫式部は、藤原道長は、そして周りの人々が何を思い、懸命に生きていたのか。彼女/彼らの心におもいをせながら楽しく見られる、華やかな絵巻を紡いでいきます。                   (NHK PRより引用)

(2)タイトル「光る君へ」とは

源氏物語の主人公「光源氏」は、原文では「光る君」と書かれています。光り輝くような容姿の美しさ、頭脳明せきであることはもちろん愛きょうにもあふれ、和歌にも音曲にもけた、非の打ちどころのない男性。それが光る君です。紫式部が誰をモデルとして光源氏像を打ち立てたかについては、諸説ありますが、その有力なひとりが藤原道長です。
タイトルの「光る君へ」は、我が手で生み出した、かけがえのない【源氏物語】、そしてこのドラマ全編を通じて、ときにかれ、ときに離れ、陰に陽に強く影響し合うソウルメイト【藤原道長】への、紫式部の深くつきることのないおもいを表します。                (NHK PRより引用)

(3)光源氏のモデル

光り輝くようなイケメンで教養豊なプレイボーイとして描かれている光源氏ですが、実は モデルとされる人物は複数存在しています。

モデルの候補は、大まかにいうと以下の3つの系統があり、架空の人物である光源氏と境遇や人となりなど共通点があります。

臣籍に降下した親王

天皇に即位した親王

平安時代の貴族

モデル候補が複数いるのは、作者の紫式部が様々な実在の人物の特定の要素を光源氏に盛り込んだためというのが定説になっています。

「源氏物語」は当時の貴族社会でも非常に人気があった読みものでしたが モラル的にきわどい部分があるストーリーです。

モデルが明白なほど特定人物と酷似していては不都合なため、紫式部(973年頃~1014年頃)は主人公の光源氏にあえて様々な人物像を盛り込んだと考えられます。

2.光孝天皇とは

光孝天皇

(1)光孝天皇のプロフィール

光孝天皇(こうこうてんのう)(830年~887年)は、日本の第58代天皇(在位:884年~ 887年)。諱は時康(ときやす)。仁明天皇の第三皇子。母は藤原総継の娘、贈皇太后沢子。

16歳で元服し、上野大守・常陸太守など親王任国の長官を歴任(いずれも「遥任」で赴任せず在京)しました。

849年(嘉祥2年)渤海国大使の王文矩が「必ず天子の位につく相である」と言った話はよく知られています。

宮中の乱脈粛正の意図をもって、素行不良の陽成天皇が廃されたあと、藤原基経(もとつね)の推挙により884年(天慶8年)に、55歳という高齢で即位しました。基経とは外戚(がいせき)関係になく、才識、人品を見込まれた擁立であり、基経の公正な態度に世人が感服したということです。

余談ですが、『徒然草』第176段(*)には、即位後も不遇だった頃を忘れないよう、かつて自分が炊事をして、黒い煤がこびりついた部屋をそのままにしておいた、という話があり、『古事談』にも似たような逸話があります。

(*)(原文)黒戸くろどは、小松御門こまつのみかど、位に即かせ給ひて、昔、たゞひとにておはしましし時、まさな事せさせ給ひしを忘れ給はで、常にいとなませ給ひけるなり。御薪みかまきすすけたれば、黒戸と言ふとぞ。

(現代語訳)清涼殿の黒戸御所は、光孝天皇が即位した後、かって一般人だった時の自炊生活を忘れないように、いつでも炊事ができるようにした場所である。薪で煤けていたので、黒戸御所と呼ぶのである。

天皇は基経の推戴(すいたい)の功に報いるため、「奏すべき事、下すべき事、必ず先(ま)ず諮稟(しりん)せよ」との勅書を下し、関白の文字はないものの、事実上関白の職を命じました。

在位3年で病気となり、皇嗣(こうし)についても基経に委ねましたが、基経は天皇の意を汲み、臣籍に下っていた第7皇子の源定省(さだみ)(後の宇多天皇)を推薦し、親王に復して皇太子に立てました。

『古今集』に歌2首が収められています。墓は、後田邑陵(小松山陵)といい、当時8カ寺を壊して造られました。

(2)光源氏との類似点

光孝天皇は、臣籍に下らず天皇になっているものの、即位は55歳の時と遅く、光源氏のモデルの一人といわれる人物です。

①文化人:和歌や和琴の才能があり、 非常に聡明な人物であったとされます。

百人一首にある「君がため 春の野に出て 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ」の詠み人。

②文武両道:相撲を奨励や鷹狩の復活を実施し、弓や乗馬が得意な文武両道の人物です。

光孝天皇の容姿については、「日本三大実録」に「閑雅」と記載があり、華はなくとも地味系のイケメンだったのかもしれませんね。

3.「源氏物語」について

(1)「源氏物語」とは

源氏物語は、平安時代中期、11世紀初めに成立した、世界最古の長編小説です。
作者は、紫式部という女性。
七、八十年の時間の流れを描いた「大河小説」で、500人ほどの人物が広大なドラマを繰り広げます。

源氏物語は五十四帖から成り、各帖はそれぞれで完結し、その集合体として長編小説になっています。
五十四帖は、三部に分けられます。

一部は、桐壺(きりつぼ)の帖(第一帖)から藤裏葉(ふじのうらば)の帖(第三十三帖)まで。
主人公光源氏の誕生から、栄華を求めながら愛を遍歴する様が描かれています。

二部は、若菜上(わかなのじょう)の帖(第三十四帖)から幻(まぼろし)の帖(第四十一帖)まで。
光源氏の深まる苦悩や老いが描かれています。
※雲隠(くもがくれ)の帖は、タイトルのみで本文はなく、光源氏の死を示唆。

三部は、匂兵部卿(におうひょうぶのきょう)の帖(第四十二帖)から夢浮橋(ゆめのうきはし)の帖(第五十四帖)まで。
光源氏の死後、その子や孫が繰り広げるドラマを描いています。
宇治が舞台となる最後の十帖は、「宇治十帖」と呼ばれています。

(2)「源氏物語」のあらすじ

①第一部あらすじ:光源氏の華麗なる生活

桐壺帝の子、光源氏は幼くして母を亡くし、実母によく似た継母・藤壺(父帝の妃)を恋慕うようになります。
2人の間には子どもが生まれますが、父帝の子として育てられることになりました。

他にも、正妻・葵の上との政略結婚、空蝉夕顔六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)などと恋をします。
葵の上亡き後は、藤壺によく似た、彼女の姪の紫の上と結婚し、生涯の伴侶とします。

そんな中、光源氏は自分の政敵、右大臣の娘・朧月夜(おぼろづきよ)と恋人関係になり、都を追われて須磨・明石で流離の日々を送らざるを得なくなります。
そこでは明石の君との出逢いがありました。

やがて京に戻され、源氏と藤壺の子が帝になることで、勢力を大きく盛り返し、自身の大邸宅・六条院で優雅極まる生活を送ります。
そして、太政大臣の後は、退位した帝に匹敵する待遇まで受け、名実ともにこの世の栄華を極めるのでした。

②第二部あらすじ:優雅な生活の足元に忍び寄る影

光源氏は兄・朱雀院の愛娘・女三の宮を正妻として迎えねばならなくなります。
その後何年かして、それまで源氏の正妻格の立場にあった紫の上が病に伏してしまいました。

さらに女三の宮は、源氏の留守中忍び込んだ柏木という青年の子どもを宿したのです。
源氏は老いていく自分、過去の藤壺との過ちの報いを痛切に知らされるのでした。
やがて病気だった最愛の紫の上が亡くなり、光源氏は出家を決意するに至ります。

第二部の最後となる「幻の帖」に続く「雲隠の帖」には、巻名のみで本文はありません。
かつては存在したとも、初めから書かれなかったとも、さまざまな説があります。
長く寄り添ってきた主人公の最期を、作者・紫式部は書くに忍びなかったのでしょうか。
あるいは、読者一人一人の想像に委ねたのかもしれません。

③第三部あらすじ:光源氏の子や孫を通して描かれる人間模様

女三の宮が生み、光源氏の末子として大切に育てられた薫や、源氏の外孫・匂の宮が当代きっての貴公子として登場。
光源氏亡き後、第三部の主人公となるのが薫と匂の宮です。

自分の出生や存在価値に疑問を持つ薫、思うように出歩けない匂の宮の苦悩。
そして、彼らと宇治の大君、中の君姉妹との関係、苦悩が語られます。

やがてこの姉妹の異母妹・浮舟が登場して、意外な展開が繰り広げられるのです。
浮舟が高僧・横川の僧都との関わりの中で下した決断とは、自身は身分も財も学問もない一女人だけれども、仏道一筋求めて出家する、というものでした。

その後の浮舟や男君たちは、どのようになっていくのでしょうか…。

なお、その他の登場人物については「NHK大河ドラマ「光る君へ」の主な登場人物・キャストと相関関係をわかりやすく紹介」に書いていますのでぜひご覧ください。


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