日本語の面白い語源・由来(け-③)下駄・下駄を預ける・結構・敬遠・犬兎の争い・玄翁

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下駄

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.下駄(げた)

下駄

下駄」とは、木製の板に三つの穴をあけて鼻緒をすげ、下面に歯をつけた履物のことです。

下駄は中世末から見られる語で、それ以前は「足駄(あしだ)」又は「木履(ぼくり)」と呼ばれました。

近世以降、上方では区別なく「下駄」と呼んでいましたが、江戸では歯の高いものを「足駄」、低いものを「下駄」と呼んでいました。

このことから、下駄の「」は「低い」の意味で、「」は「足駄」からの転用と考えられます。

団塊世代の私が子供の頃は、下駄を履いている人は多く、私の母も買い物に出掛ける時には着物を着て下駄を履いていました。下駄は靴と違って、何となく風情がありました。

そして「履物店」も「下駄屋」と呼んでいて、下駄や草履(ぞうり)が沢山店頭に置いてありました。

2.下駄を預ける(げたをあずける)

下駄を預ける

下駄を預ける」とは、物事の決定や責任の一切を相手に任せることです。

下駄を他人に預けてしまうと、その場から自由に動けなくなります。
あとは、預かった人の心次第で、自分はじっとしているしかないところから生じた言葉です。

3結構(けっこう)

結構」とは、見事であること、満足できる状態であるさま、それ以上必要としないさまのことです。

漢語の「結構」は、建造物の構造や文章の構成など、組み立てや構成を意味する名詞です。
これが日本に入り、「計画」「目論見」「支度」「準備」を意味する名詞として用いられるようになりました。

さらに、その準備や計画に対して「立派だ」「よろしい」と評価する用法が生まれ、結構は「丁寧だ」「人柄が良い」といった意味でも使われるようになりました。

断りの言葉として用いる「もう結構です」は、近代以降に見られる表現で、「十分満足しているから、これ以上必要ない」といったニュアンスから生まれたものです。

「結構おいしい」「結構楽しい」などと用いる副詞は、「十分とは言えないが、思っていたよりも良い(満足できる)」の意味からです。

4.敬遠(けいえん)

敬遠

敬遠」とは、人や物事を嫌って避けることや、野球で投手が打者との勝負を避け、意図的に四球を与えることです。

大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手も「申告敬遠」で歩かされる場面が時々ありますね。

申告敬遠

敬遠の本来の意味は、敬いつつも近寄らないことですが、「遠ざける」の意味合いが強くなり、うわべでは敬っているように見せつつ、実際は関わりを持たないようにする意味で用いられるようになりました。

さらに「敬い」の意味が薄れ、嫌って避けることを表すようになり、野球で投手が故意に四球を与えることも「敬遠」と言うようになりました。

敬いつつも近寄らない意味で「敬遠」が用いられた例には、儒家の経典『礼記(表記)』の「尊命事鬼、敬神而遠之(命を尊び鬼につかへ、神を尊ひて之を遠ざく)」や、『論語(雍也篇)』の「務民之義、敬鬼神而遠之。可謂知矣(民の義を務め、鬼神を敬してこれを遠ざく、知と謂うべし)」があります。

5.犬兎の争い(けんとのあらそい)

犬兎の争い

犬兎の争い」とは、両者が争って共に弱り、第三者に利益を横取りされることのたとえです。「漁夫の利(ぎょふのり)」や「鷸蚌の争い(いっぽうのあらそい)」と同様の意味です。

犬兎の争いの出典は、『戦国策(斉策)』の寓話です。

とても足の早い犬が、すばしっこいウサギを追いかけまわした。
山を何度も駆け登ったため、犬もウサギも力尽きて倒れた。
そこに通りかかった農夫は何の苦労もせず、獲物を独り占めすることができた。

この寓話から、共に争い共に倒れ、第三者に利益を奪われることを「犬兎の争い」と言うようになりました。

6.玄翁/玄能(げんのう)

玄翁

玄翁」とは、頭部の両端がとがっていない金槌のことです。大工がのみを叩いたり、石工が石を割るときに用います。

玄翁は、玄翁和尚が殺生石を砕いたという、以下の『玉藻前(たまものまえ)伝説』に由来します。

白面金毛九尾の狐が美女に化け、「玉藻前」と名乗って鳥羽上皇の寵愛を受けていたが、陰陽師に正体を見破られて、那須野が原(現在の栃木県那須郡那須町湯本温泉付近)で殺された。
しかし、玉藻前は「殺生石」という毒石と化し、近づく者のを奪った。
そこに訪れた曹洞宗の玄翁和尚が、巨大な槌で殺生石を叩き割って破壊したことから、和尚の名にちなんで「玄翁」と呼ばれるようになった。

和尚の名前に由来するため、げんのうは漢字で「玄翁」と表記しますが、「玄能」とも当て字されます。