日本語の面白い語源・由来(さ-⑤)三度笠・薩摩揚げ・真田紐・申・菜盛花・賽銭・骰子・三隣亡

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てなもんや三度笠

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.三度笠(さんどがさ)

木枯し紋次郎

三度笠」とは、を覆うほど深く作られた菅笠(すげがさ)のことです。

三度笠は、三度飛脚が被っていたことから付いた名です。
「三度飛脚」とは、江戸時代に江戸・大坂・京都などを毎月定期的に三度往復した飛脚のことです。
三度笠には、三度飛脚が被ったことから「飛脚笠」、深く被ることから「大深(おおぶか)」といった別名もあります。

団塊世代の私が子供の頃は、「股旅物(またたびもの)」全盛期で、テレビ番組「てなもんや三度笠」や橋幸夫の流行歌「潮来笠」、田畑義夫の「大利根月夜」などがあり、後年の中村敦夫主演の「木枯し紋次郎」も人気がありました。

2.薩摩揚げ(さつまあげ)

薩摩揚げ

薩摩揚げ」とは、魚肉のすり身を味付けして油で揚げた魚肉練り製品です。刻んだ野菜を加えたものもあります。

薩摩揚げの「薩摩」は、現在の鹿児島県西部にあたる薩摩地方のことです。

薩摩地方の名産であることから、主に関東地方で「薩摩揚げ」と呼ばれるようになりました。

鹿児島では「薩摩揚げ」を「つけあげ」と言い、関西では「天ぷら」と言います。

その他、地方によって「はんぺん」や「揚げはん(ぺん)」などとも呼ばれます。

余談ですが、私は鹿児島で「薩摩揚げ」を食べた時、あまりにも「甘すぎる」のに驚きました。大阪の人間としては、こんな甘い味付けは経験したことがなく、辟易しました。

3.真田紐(さなだひも)

真田紐

真田紐」とは、太い木綿糸で平たく厚く織った紐のことです。真田打ち。

真田紐は、真田昌幸(幸村の父)が刀の柄(つか)に、この紐を巻いたことからというのが通説となっています。

この他、真田紐の語源には、幅の狭い織紐を「さのはた(狭織)」と呼んでいたことから、「さのはた」が転じて「さなだ」になり、「真田」の字が当てられたという説や、チベット周辺の言語で「紐」を意味する「サナール」が転じたとする説もあります。

4.申(さる)

申

」とは、干支(十二支)の9番目です。年・日・時刻などにあてます。方角の名で「西南西(西から南へ30度の方角)」。旧暦7月の異称。前は未、次は酉。

申年」とは、西暦年を12で割った際、余りが出ない年のことです。

漢字の「申」は、稲妻を描いたもので、「電」の原字です。

それが、「臼(両手)」と「|印(まっすぐ)」の形となり、手でまっすぐ伸ばすことで、「伸(のばす)」の原字となりました。

『漢書 律暦志』では「申堅」とし、草木が伸びきり、果実が成熟して堅くなっていく状態を表すと解釈しています。

この「申」を「サル」としたのは、無学の庶民に十二支を浸透させるため、動物の名前を当てたものですが、順番や選ばれた理由は定かではありません。

5.菜盛花(さいもりばな)

菜盛花

菜盛花」とは、アカメガシワの別名です。

菜盛花の「」は、食物(おかず)のことです。

昔、カシワの葉の代用として、アカメガシワの葉に食物を載せたところから菜を盛る植物の意味で「菜盛花」と呼ばれるようになりました。

6.賽銭(さいせん)

賽銭

賽銭」とは、寺社に参拝し、神仏に奉納する金銭のことです。散銭。

」は「神恩に報いる」という意味ですが、中国には「賽銭」の漢語がないため、和製漢語と考えられます。

賽銭は「散銭」とも書かれ、神前に撒き散らす米(供える米)を「散米」ということから、「散米」に由来するともいわれます。

古くは、賽銭に幣帛や米が供えられていたが、貨幣が流通するようになると銭貨が奉納されるようになりました。

そのことから「散米」が「散銭」となり、「神恩に報いる」の意味で「賽銭」になったことは十分に考えられます。

7.骰子/賽子(さいころ)

サイコロ

サイコロ」とは、すごろくや博打などに用いる小さな道具です。一般的に立方体の各面に1から6までの目が記してあり、反対側の面との合計が7となります。

サイコロの「サイ」は、漢字「簺」の字音で、すごろくを打つことやダイスを意味します。
古くは「サイ(采)」と呼んでいましたが、丸いものや小さいもの、転がるものなどに添えられる接尾語「コロ」が付き、「サイコロ」と呼ぶようになりました。

「賽子」や「賽」の漢字に「サイコロ」の意味はなく、同音になることからの日本での用字です。

中国で「サイコロ」は、「シャイツ(骰子・色子)」といいます。

8.三隣亡(さんりんぼう)

三隣亡

三隣亡」とは、暦注の一つで、この日に建築すると後日火災に見舞われ、近隣三軒まで滅ぼすといって忌む日です。

三隣亡は、もともと「三輪宝」と書きました。

三輪宝とは、「天」「地」「人」の三点(三角形)の中央に宝が位置することを意味します。

江戸時代の暦注解説書には、「三輪宝」の注記に「屋立てよし」「蔵立てよし」と付されており、「凶日」ではなく「吉日」の意味で用いられていたことがわかります。

「三輪宝」がどこかで誤解されて「凶日」として扱われるようになり、「凶日」が「三輪宝」では都合が悪いということで「三隣亡」に変えられたといわれます。

この誤解は、一説に「よし(良し)」の「よ」を「あ」と書き間違えて「あし(悪し)」になり、悪い意味に変わったともいわれますが定かではありません。

表記が「三隣亡」になってからは、この日に建築すれば、隣三軒まで火災が及ぶという俗信が生じ、棟上などの建築事は避けられるようになりました。

1、4、7、10月は亥の日。2、5、8、11月は寅の日。3、6、9、12月は午の日が三隣亡にあたります。