自民党派閥の「裏金問題」で議員の逮捕はあるのか?内情をリークした下村博文氏は捜査対象外!?

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裏金問題

ここ最近のテレビのワイドショーでの「政治問題」の唯一最大のテーマは「自民党安倍派・二階派などの裏金問題」です。議員の逮捕はあるのでしょうか?

2023年12月、岸田首相は安倍派所属の閣僚4人(松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、宮下一郎農林水産大臣、鈴木淳司総務大臣)、副大臣5人(堀井学内閣府副大臣、堀井巌外務副大臣、青山文部科学副大臣、酒井経済産業副大臣、宮沢防衛副大臣)を事実上更迭し、安倍派5人衆のうちの残りの萩生田光一(政調会長)・高木毅(国会対策委員長)・世耕弘成(党参院幹事長)の各氏も辞表を提出し、党要職を解かれました。

12月19日に、東京地検特捜部は安倍派と二階派の事務所への強制捜査と議員の任意聴取を開始しました。

12月27日には、東京地検特捜部は政治資金規正法違反の疑いで安倍派から4000万円を超えるキックバックを受けていたとみられる池田佳隆 衆議院議員の事務所や議員宿舎など、関係先を捜索しました。

そして、この問題は支持率急落(17%)で絶体絶命の岸田政権を直撃するだけでなく、自民党全体への不信感を増大させ、自民党支持率低下も懸念されます。

ただし、今の野党は立憲民主党をはじめ政権担当能力ゼロなので、自民党政治の終焉にはつながらないと私は思います。

1.「裏金問題」について

裏金問題

(1)「裏金問題」とは

いわゆる「裏金問題」とは、自民党5派閥の政治資金パーティーをめぐる問題、すなわち「政治資金収支報告書への不記載(過少記載)」と「各派閥が所属議員の販売ノルマ超過分を裏金として議員にキックバックする運用」の問題のことです。

なかでも安倍派においては、議員側が「中抜き」するなど3つのパターンで裏金づくりを行っていたことが関係者の証言により明らかとなっています。

さらに安倍派では、少なくとも参議院議員選挙があった2019年と2022年に開いたパーティーについて、改選となる参議院議員に「販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバック」していました。

(2)「裏金問題」で何が問題になっているのか

自民党の派閥のうち、安倍派と二階派では、派閥側が主導してパーティー収入の一部を収支報告書に記載しない運用を組織的・継続的に行っていた疑いが明らかになっており、これが問題になっているのです。

(3)議員の逮捕はあるのか

元大阪地検の検事・亀井正貴弁護士は、次のように話しています。

①捜査の目標

おそらく来年の通常国会開催前にある程度、捜査の目処をつけて証拠を作って処分の予想を立てるところまではいくはずですから、おそらく会計責任者についてはもう事情聴取できて、いけると踏んでいると思うので、あと問題は政治家がどこまでいけるかという問題、派閥側の政治家の責任者的立場の人間をどこまでいけるか。キックバックを受けた政治家についてどれぐらいまでいけるかというところですね。

②国会議員の逮捕の可能性

贈収賄事件は原則逮捕ですが、政治資金規正法違反は原則、在宅でやることが多いんですね。しかし起訴されたら公民権停止になりますから、政治家としての死命を制するだけのものにはなるんですよね。逮捕となると、例えば証拠隠滅の恐れがあるなど非常に悪質性がみられるとかそういう事情がないとなかなか逮捕まではいかないんじゃないかと思います。

③会計責任者との共謀の立証が必要

国会議員を逮捕・起訴するためには会計責任者との共謀がいります。つまり、キックバックを受けてキックバックについて収支報告書に記載せずに隠すんだと相談したことが必要なんですね。ですから、例えば会計責任者である事務方の供述やメモなどですね。事務総長からこういう指示を受けたというメモなど物証や供述をどこまで集められるかということですね。

2.「裏金問題」はなぜ発覚したのか?

<「しんぶん赤旗」のスクープ>

裏金問題は2022年11月に「しんぶん赤旗」がスクープし、同月から東京地方検察庁への告発状が断続的に提出され、2023年11月2日に読売新聞が報じたことで表面化しました。

2022年11月6日、しんぶん赤旗日曜版は、自民党5派閥が政治資金パーティー券を20万円超購入した大口購入者の名前を政治資金収支報告書に記載せず、長年にわたり脱法的隠蔽を行っていたことが分かったと報じました。

同紙によれば、不記載は2018年~2020年の3年間で少なくとも59件、額面で計2422万円分に上るとされました。

このスクープ記事中でコメントを求められたことをきっかけに、神戸学院大学の上脇博之教授は独自に調査を開始しました。

裏金問題

同月、上脇教授は自民党の派閥の会計責任者らに対する政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の疑いでの1回目の告発状を東京地方検察庁に提出しました。その後も正月返上で告発状を書き続けました。

この告発文書には「パーティー券の内訳の明細がないのはおかしい。これは恐らく裏金がつくられているのではないか。捜査してほしい」と記載していました。

3.自民党安倍派の下村博文氏が「裏金問題」の内情をリーク

下村博文氏

自民党の派閥の「事務総長」は、各派閥に1人ずつ置かれ、閣僚や党幹部の経験者などベテラン議員が務めるのが慣例です。

派閥の運営を切り盛りする役割を担い、トップの会長とともに人事などの要望を行うほか、各派閥の事務総長が集まって情報交換を行うこともあります。

安倍派の事務総長は、去年8月から高木毅氏(前国対委員長)が務めています。前任は西村康稔氏(前経済産業相)でおととし(2021年)10月から去年8月まで、さらにその前は、松野博一氏(前官房長官)が2019年9月からおととし10月まで務めました。塩谷立氏(元文部科学大臣)は現在、事実上トップの座長を務めています。

安倍派5人衆

ところで、自民党安倍派の近年の「事務総長経験者」ら幹部5人が任意の事情聴取を受けているのに、元事務総長の下村博文氏だけが任意の事情聴取の対象になっていないのも不思議です。

下村博文氏は「司法取引」をして、内部事情を検察にリークでもしているのかと勘繰りたくなりますね。

なお、自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る不記載問題で東京地検特捜部が捜査を進める中、安倍派(清和政策研究会)の事務総長を務めた下村博文元文部科学大臣の政治団体が12月18日夜、東京都内のホテルで会費を徴収したクリスマス会を開きました。

不記載問題で下村氏は政治資金規正法違反(不記載)の疑いで刑事告発されています。その最中にイベントを開き、堂々と資金集めをしていたことになります。

下村博文氏の裏金問題リーク疑惑」については、ジャーナリストの須田慎一郎氏が「検察が下村博文氏を捜査対象から外している理由」を次のように述べています

「政治資金規正法の公訴時効に引っかからない2018年から22年に事務総長の職にあった下村博文元文科相、松野氏、西村氏、高木毅前国対委員長の4人が、とりあえず捜査線上に浮かんでくる。しかし高木氏が事務総長を務めていた期間に開かれたパーティーでは、キックバックを行わないよう通達が出ていた。このため同氏は、捜査対象から外れることとなる」(検察関係者)

そうなってくると特捜部のターゲットは本来ならば、下村、松野、西村各氏ということになってくるはずなのだが、なぜか不思議なことに特捜部は下村氏を捜査の主たる対象から外しているのだという。

「それは当然ですよ。下村氏は事務総長経験者の立場で、特捜部に対して自ら進んで一連の裏金疑惑に関する情報の提供を行っているからです。良い悪いは別として、特捜部と下村氏は手を握った可能性がある。だから下村氏は特別扱いされているのです」(検察関係者)

下村氏に関して言えば、安倍派において塩谷立座長の下で新体制が発足するにあたって、派閥の重鎮である森喜朗元首相から徹底的に嫌われ、「顧問」という肩書の閑職に追いやられてしまったという経緯がある。

それだけに安倍派の執行部に対して、下村氏は腹に一物あるのだろう。

さて下村氏という貴重な情報源を得た特捜部は、大金星を挙げることができるのだろうか。 (ジャーナリスト 須田慎一郎)

4.告発された5派閥の対応

告発状が出されている5つの派閥は、岸田首相の指示を受けて収支報告書の訂正を行ったことを明らかにしていて、それぞれの派閥で再発防止策を講じるとしています

しかし、指摘を受けて訂正をすれば済むという問題ではないと私は思います。

専門家も、不記載が相次いでいることは深刻な問題だと受け止めていて、「結果的に不正な献金の温床になっていると疑われかねない」と指摘しています。

5.「政治資金規正法」について

(1)「政治資金規正法」とは

「政治資金規正法」とは、政治団体が使う政治資金の収支の公開方法などを定めた法律です。

政治活動の公平性や透明性を確保する目的で1948年に施行されました。政治団体に対し、収支を記した「政治資金収支報告書」を毎年提出するように義務付けています。政党や政治家の資金管理団体が寄付として受けとれる金額の上限など政治資金の授受に関するルールも定めています。

「政治資金パーティー」は、政治資金を集めるために行われるものです。参加者は一口2万円程度のパーティー券を購入しますが、何口も買うケースも少なくありません。

数千人規模になることもあり、多いときで数億円のカネが集まります。

法律で認められた集金の手段ですが、特定の団体などとの癒着を防ぐため、次のような決まりがあります。

政治資金規正法

しかし今回、派閥などの政治資金パーティーの収入をめぐって、適切に記載されていないケースが相次いで明らかになったのです。

裏金問題

(2)「政治資金規正法」改正の今後の展望

政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は次のように話しています。

もしパーティーに関する不記載が故意に、あるいは組織的に行われたということになれば、政治資金収支公開制度の根幹を失わせるといったような非常に重大な問題だと言わざるをえない。

やはり、こういうことがないようなチェックやコントロールの仕組みというのを今後考えていく必要があろうかと思います。