日本語の面白い語源・由来(は-⑪)白書・春告魚・箱柳・肌・バーゲン・バザール・波布・パステル・薄荷

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日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.白書(はくしょ)

科学技術白書

白書」とは、「経済や産業などの現状や将来の政策を知らせるため、政府の各省庁が発行する公式の調査報告書」です。

白書は、イギリス政府が発行する公式外交報告書「white paper」の邦訳です。
「white paper」の名は、表紙が白いことに由来します。

日本で最初の白書は、昭和22年(1947年)の片山哲内閣が発表した『経済実相報告書』で、『経済白書』の名が登場したのは、昭和26年(1951年)のことです。

「青書」と呼ばれるものもありますが、これは「Blue Book」の訳で、イギリス議会の報告書の表紙の多くが青いことに由来します。

日本の白書の中で「青書」と呼ばれるのは、外務省の『外交青書』のみです。

外交青書

2.春告魚(はるつげうお)

春告魚

春告魚」とは、「ニシンの異名」です。

春告魚は、文字通り、「の訪れを告げる魚」の意味です。
ニシンは3~5月、産卵のために大挙して北海道の西岸に近づくことから、「春告魚」と呼ばれるようになりました。

ニシンの漁獲高が減少したことから、近年では春から初夏にかけて旬となる「メバル」が「春告魚」と呼ばれるようになってきています。

また、「ニシン」や「メバル」以外にも、渓流釣りで3月に解禁されることから「アマゴ」や「ヤマメ」、兵庫県では「イカナゴ」、魚偏に春と書く「サワラ(鰆)」など、地方や魚と接する立場によって「春告魚」と呼ぶ魚は異なります。

3.箱柳(はこやなぎ)

箱柳

ハコヤナギ」とは、「ヤマナラシの別名」です。白楊。

ヤマナラシの材は、柔らかく加工しやすいため、箱やマッチの軸などに使われました。
その用途から、「箱を作る柳」なので「ハコヤナギ」と呼ばれるようになりました。
同じヤマナラシ属のポプラ(下の写真)は、「セイヨウハコヤナギ」と呼ばれます。

ポプラ

4.肌/膚(はだ)

肌

」とは、「人などの体の表面。皮膚。はだえ。物の表面。気質。気性」のことです。

肌は体の内から端にあることから、「はた(端)」や「はて(果)」の意味からです。
「皮」も体の表面を覆っているものですが、肌は表面上見える内側までを指すことが多く、それを覆う薄いものを「皮」と言うことが多いようです。

これは、「肌」が体の内から外に向かって端にあるもので、「皮」が外から見て内を覆うものと考えられたためです。

「姉御肌」など「気質」や「気性」といった「中身」を表すのに対し、「皮」は「化けの皮」など「剥がれるもの」「覆っているもの」として表現されるのも、内から外に向かって生まれた言葉と、外側から見て生まれた言葉の違いが関係しているように思われます。

また、「肌」は「はだへ(はだえ)」とも言い、「へ(え)」は「辺」「方」の意味で、「はだへ」は「端辺(果辺)」「端方(果方)」と考えられるため、はだの語源は「端」や「果」からとみられます。

5.バーゲン/bargain

バーゲン

バーゲン」とは、「バーゲンセールの略。商品の安売り。特売。掘り出し品。見切り品」のことです。

バーゲンは、英語「bargain」からの外来語です。
英語の「bargain」は「特価品」のほか、「契約」や「取引」の意味で用いられ。
「bargain」の語源は、「値切る」「値段を交渉する」という意味の古フランス語「bargaignier」に由来します。

更に遡ると、古フランス語の「bargaignier」は、「borrow(借りる)」の語源となる古英語「borgian(貸す・借りる)」と同源で、ゲルマン祖語の「borgan」に辿り着きます。

日本語では「特売品」の意味から、「特価品販売」を「バーゲンセール」と言い、「バーゲンセール」を略して「特売」「安売り」のことを「バーゲン」と言うようになりました。
英語では、「sale」のみでも「特売」を意味します。

6.バザール/bazar

バザール

バザール」とは、「デパート・商店などの特売会、大売出し。また、その特設会場」のことです。バザー。

バザールはフランス語「bazar」からの外来語です。
「bazar」は英語の「bazaar(バザー)」と同源で、「イスラム圏の街頭市場」を指し、ペルシャ語で「市場」を意味する「bāzār」に由来します。

下の写真はトルコ・イスタンブールの「グランドバザール」です。

グランドバザール

本来、「バザー」と「バザール」に意味の違いはありませんが、日本では「バザー」が「特売」のほか「慈善市」も表すのに対し、「バザール」は「慈善市」の意味で用いられません。

7.波布/飯匙倩/ハブ(はぶ)

ハブ

ハブ」とは、「全長2メートル前後のクサリヘビ科のヘビ」です。頭は大きな三角形で、上あごに2本の毒牙があります。夜間、ネズミや小鳥、カエルなどを捕食します。樹上や草むらにひそみ、人畜を襲います。

ハブは、ヘビやマムシの古名や方言の「ハミ」「ハビ」「ハンビ」「ハム」「パンプ」などと同源で、沖縄方言からです。

「ヘビ」を方言で「ハミ」という地方の中には、一般のヘビを「ヘビ」と呼び、有毒なヘビを「ハビ」と区別するところがあります。

これは食べる意味の「食む(はむ)」に由来するためで、「ハブ」も「食む」からです。

漢字の「飯匙倩」は、ハブの頭がスプーン(ご飯を盛る匙)のような形をしているところからの当て字です。

「波布」は、音からの当て字で特に意味はありません。

8.パステル/pastel

パステル

「パステル」とは、「粉末顔料に白粘土を混ぜ、アラビアゴムなどの溶剤で棒状に練り固めたもの。また、これで描いた絵(パステル画)の略」です。

パステルは、フランス語「pastel」からの外来語です。

「pastel」は、練り物などを意味する「paste」+「-el(指小辞)」からなる言葉で、練り固めるところから付いた名です。

パステルは18世紀のロココ時代に流行していますが、パステルに似た画材は14世紀頃からあったといわれます。

9.薄荷(はっか)

薄荷

ハッカ」とは、「湿った地に自生するシソ科の多年草。広義にはシソ科ハッカ属の多年草の総称」です。ペパーミント(西洋薄荷)やスペアミント(オランダ薄荷)など。ミント。

ハッカは、ミントの漢名「薄荷(ハクカ)」の転訛です。

漢名「薄荷」の由来は、葉を蒸留してハッカ油を採ると、わずかな量にしかならず、運ぶ時に荷が少なくて済むところからといわれますが定かではありません。

ハッカの漢名は「薄荷」のほか、「夜息花」「蕃荷菜」「人丹草」など数多くあります。
そのうちの「蕃荷菜」を書き誤って「薄荷」になり、それが一般名称になったとも言われます。