1.今の図書館は新刊書天国
私が中学生か高校生の頃までは、学校の図書館と言えば、日本文学全集とか世界文学全集、童話・伝記類、動植物や昆虫の図鑑類、それと日本の明治・大正時代の「文豪」と呼ばれる作家たちの小説や有名詩人の詩歌集などの「文芸書」が思い浮かびます。
大阪府立図書館や大阪市立図書館でも、「専門書」以外の「文芸書」については、同様だったように思います。
しかし、最近の「公共図書館(公立図書館)」では、つい最近出版されたばかりの人気作家の新刊書が借りられます。「ベストセラー」本になると、複数冊購入されることも珍しくありません。もちろん、そういう人気本は「予約待ち」が多数になりますが・・・
著名な推理作家である東野圭吾氏が、出版記念パーティーで、ファンだという上品なセレブのような奥様から「あなたの本は全部読んでいますのよ。でも待ち時間が長くて・・・」と言われたそうです。
私は、東野圭吾氏がエッセーか何かで、「図書館で私の本を読む人は、愛読者ではありません。私の本は書店で買って下さい」と書いているのを読んだことがあります。これはジョークではなく、彼の「本音」だったようです。随分、不躾(ぶしつけ)に本音を吐露したものだと驚きました。私も「愛読者のつもり」でしたから・・・
そう言えば、ベストセラーを連発する彼の作風が、以前は緻密な構成の本格的な推理小説だったのに、最近は「若者受け」と「映画化」を狙った軽薄な作風に変貌しました。これは「著書の実売部数の低下を踏まえた戦略」のような気がします。
「活字離れ」が叫ばれて久しい中、「図書館による新刊書貸し出し」が加わって「出版不況」はますます深刻化していると言われており、作家と出版社の台所事情はかなり厳しいようです。
2.出版社や作家の言い分
そこで、一部の大手出版社と作家らが、ベストセラー本などについて、新刊発売から一定期間公共図書館での貸し出しをしないように求めているということです。
数年前から「貸し出し冊数」が「実売部数」を上回る逆転現象が起きているという話もあります。
しかし、「公共図書館」の使命は、地域住民へのサービスであり、「かび臭い古い本」ではなく、住民が読みたい「新しい人気のある本」を揃えるのは当然です。高い住民税を払っているのですから。
図書館は、出版社の敵ではなく、大事な顧客でもありますし、図書館で本を借りる住民も作家の敵ではなく、その作家が好きになって自費で買うようになることもあるわけです。
「図書館」や「図書館で本を借りる人」を「無料貸本屋」や「無料で本を借りて読むだけで買わない人」と一方的に決めつけて敵視することは、お互いのためにならないのではないでしょうか?