「昏睡スリ」の被害に遭いかけた体験をご紹介します

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酔いつぶれ

私がまだ現役サラリーマンだった30年ほど前の12月の話です。お酒を飲んだ訳でもないのに、毎日深夜までの残業で疲労がピークだったのか、最終電車の何本か前の普通電車の座席で眠りこけてしまいました。大阪駅を出る時は満員だったのですが、次々と乗客は降りて行き茨木駅を過ぎると乗客は疎(まば)らになっていました。

昏々(うとうと)していると、ズボンの後ろの財布の入ったポケットに何かが触れて、隣の乗客が肩を抱いて来る気配がしたのです。こんな時間に知り合いが乗っているはずもありません。

私は、はっと目を覚まして隣を見ました。男はぎょっとして私から離れて行きました。そして車内を見回すと、車両の両側の連結部に、他の乗客をこの車両に入れない為の「見張り」と思われる二人の男と目が合いました。私は思わず睨みつけました。すると3人の男は素早く別の車両に逃げて行きました。

私は、もう少しの所で、「昏睡スリ」(「介抱掏摸」という呼び名だったかも知れません)の被害に遭うところだったのです。このように、咄嗟の機転で難を逃れられたのは、数日前のニュースで「最近、深夜の電車内で昏睡スリが頻発している」と聞いていたからです。

12月から1月にかけては、「忘年会」や「新年会」などでお酒を飲む機会が増えると思いますので、皆さんも十分お気を付け下さい。

ところで、最近の報道で、大阪「ミナミ」の「半グレ集団」が少女らを使って酔客に声をかけ、「ガールズバー」に連れ込んで「ぼったくり」を行う詳細な手口が紹介されていました。

「飲み放題」とうたいながら、従業員の少女らのドリンク代として、数万円から数十万円を請求し、支払いを拒む客には、「回収役」の男らが監禁や暴行で脅したというものです。

今年10月までの1年間で、約260人が計2,200万円の被害を訴えたそうです。「泣き寝入り」の人数と金額を含めると被害はもっと大きくなると容易に想像できます。

二次会は、極力「自粛」することがお勧めですが、やるとしても「ほどほどに」して切り上げた方が安全なようです。

なお、蛇足ですが、「昏睡スリ」とよく似た言葉に「昏睡強盗」があります。「昏睡スリ」は、「眠りこけた他人の懐やポケットなどから金品などを気付かれずに掠め取る犯罪」で、刑法上は「窃盗罪」(刑法235条)です。これに対して、「昏睡強盗」は、刑法239条に定められていますが、「(飲料中に薬物を混入させるなどの方法で)人の意識作用に障害を生じさせ、反抗出来ない状態に陥れて財物を盗み取る犯罪」です。後学のために、ご説明しました。

またまた蛇足ですが、落語にスリ(掏摸)を主人公にした「一文笛」という人情話があります。三代目桂米朝の「新作落語」です。ご興味のある方はぜひ一度お聞きください。