なぜJOC竹田会長を贈賄疑惑でフランスが訴追するのか?

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2020東京五輪

2019年1月11日、「フランスの司法当局が、2020年東京五輪招致をめぐり、JOC・日本オリンピック委員会の竹田恒和会長がIOC・国際オリンピック委員会の有力委員である世界陸上協会前会長の息子が関係するシンガポールの会社に2億円余りを送金したことが賄賂に当たるとして、起訴するかどうかを判断する刑事訴訟手続きに入った」とのニュースがありました。

この疑惑をめぐっては、捜査が3年前から行われていて、今は「予審手続き」中で、この手続きを経て起訴するかどうか判断されるとのことです。

この日午後には、東京地検特捜部が、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を「会社法違反(特別背任)」で追起訴したばかりなので、「絶妙なタイミングでの捜査開始報道」は、「ゴーン逮捕への報復か?」といった憶測を呼んでいます。

この件について、JOC竹田会長は、「2億円余りの送金は、正当なコンサルタント料の支払いである」と述べるとともに、昨年12月にフランスの司法当局から任意聴取を受けたことは認めています。

1.なぜ「贈賄疑惑」なのか?

「五輪招致活動」で「コンサルタント会社」に多額のコンサルタント料を払うことは、個人的にはあまり感心しませんが、ある程度お金を使って、IOCの有力委員に東京招致を働きかけてもらうことは必要だったのでしょう。そのために「コンサルタント会社」に依頼したのでしょう。

ただ、私の贔屓目かも知れませんが、東京はイスタンブールやマドリードと比べて圧倒的に優位性があったと思われるので、そのような「コンサルタント料」を支払う必要もなかったのではないかと思います。

多分、競合する候補都市も同様の動きをしていたと考えられ、IOCの選考委員は「金まみれ」になっていたのかも知れません。

しかし、このことがなぜ「贈賄」となるのでしょうか?

ひょっとして、フランス刑法では、「純然たる公務員」だけでなく、オリンピック開催都市選考委員のような「公的地位にある者」に対して便宜を図ってもらうよう金銭を渡すことも「贈賄」と定められているのでしょうか?

それなら今までのオリンピック招致でも、「贈賄」が横行していたと思いますが、実際に過去の五輪招致で「贈賄容疑」で処罰された例はあるのでしょうか?

また過去にも例があるとすれば、それは「フランスの司法当局」によって、摘発・処罰されたのでしょうか?

2.なぜ「フランスの司法当局」なのか?

2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪の招致をめぐって、ブラジルの捜査当局が、「開催都市を決める投票権を持つ委員の票の買収に関与した疑いが強まったとして、ブラジル・オリンピック委員会のカルロス・ヌズマン会長を、2017年10月に逮捕しました。

これは、ブラジル国内の問題で、ブラジルの司法当局が、自国の法律に基づいて、訴追したのでしょうから問題はないと思います。

しかし、今回のケースは、日本のオリンピック委員会の会長が、日本の刑法では何ら問題がない「コンサルタント契約料」を支払っただけで、なぜ「フランスの司法当局」から訴追を受けなければならないのか、理解に苦しみます。そのコンサルタント会社が、選考委員に対して、どういう「過剰な接待」をしたのかどうかは、JOC・竹田会長の与り知らないことだと思います。

そもそも「五輪招致の不正疑惑」に関しては、どこの国がどういう法的根拠で司法権を握るのでしょうか?

フランスのオリンピック委員会の会長をフランスの刑法によって訴追するのであれば、「どうぞご勝手に」ということですが、今回のケースは、「フランスの越権行為」なのではないでしょうか?

このようなことが今後も起きるとすれば、オリンピック開催国のオリンピック委員会の会長は、フランスの司法当局によって、全て贈賄容疑で逮捕されることになるでしょう。

どうも、今回のケースは、JOCがコンサルタント料を支払った相手の父親である「国際オリンピック委員会の有力委員である国際陸上競技連盟会長」ラミーヌ・ディアック氏に対して、フランス司法当局が、「ドーピング隠蔽に絡む汚職事件」を捜査する中で浮上した問題のようです。

しかし、日本はフランスとは「犯罪人引き渡し条約」を結んでいませんので、フランスによる不当な「有罪」判断があっても、竹田会長が日本を出国しない限り、逮捕されることはないと思われます。

3.なぜ「今の時期」なのか?

2018年12月、中国のファーウェイの最高財務責任者がアメリカの指示によってカナダで逮捕される事件がありましたが、その直後に中国でカナダ人3名が拘束されました。

同じく2018年12月にロシアの女性スパイがアメリカで逮捕され有罪となった直後に、ロシアでアメリカ人がスパイ容疑で逮捕されました。

2010年には、日本でも尖閣諸島で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件があり、船長を逮捕しましたが、中国は報復として日本人ビジネスマン4名を拘束した上で、船長の釈放を要求し、当時の民主党政権の仙谷由人官房長官は、那覇地検に働きかけて、船長を「処分保留で釈放」させました。

ジャーナリストの田中良紹氏は次のように述べています。

「国際政治の世界では『自国民が不当な理由で他国に拘束された』と考えたら、報復するのが鉄則。沈静化していた捜査がこのタイミングで訴追手続きに入ったことは、日本政府に強烈なパンチを与えたことになる。日本政府は表向き否定するでしょうが、政治家なら誰もが『フランス政府からのメッセージ』と捉えたはずです」

4.東京五輪への影響はあるのか?

もし、「2020東京五輪招致に不正があった」と認定されれば、「開催都市資格はく奪」のような事態になるのでしょうか?

考えられる「最悪の場合」の流れとしては、「フランス司法当局」による「JOC・竹田会長訴追」→「IOCによる選考委員全員に対する不正の有無の調査」→「疑惑のある選考委員の告発(どこの国が刑事訴追することになるのかは不明です)」→「JOC及び竹田会長に対する処分」→「東京の開催都市資格の(再)検討」→「他都市(たとえばロンドンや北京)開催になった場合の日本人選手の出場資格の(再)検討」→「東京五輪開催中止に伴う損害賠償問題の発生」?

私の現在持っている情報では、正直なところ、今後のことは全く分かりません。状況の推移を注意深く見守りたいと思います。

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