「暴言」で辞職した「明石市長3選」で明らかになった「一部分を切り取ったニュース」の怖さ

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明石市長3選

1.明石市長が部下への暴言問題で辞職

今年1月に、当時の泉房穂明石市長が「部下への暴言問題」で辞職しました。

土地買収を巡る地権者との交渉が進んでいないことに腹を立て、「7年間何しとってん。ふざけんな、何もしてへんやないか。金の提示もせんと、楽な商売じゃお前ら。あほちゃうか」と叱責し、部下が謝ると「すまんですむか。立ち退きさせて来い、お前らで。・・・」と激高して不適切な暴言を吐いた「録音テープ」が明らかになり、辞職に追い込まれたものです。

この「暴言録音テープ」を録音し、マスコミに公開したのは明石市職員であることは疑う余地はありませんが、日頃から暴言で部下を叱りつけることを身に染みている部下の誰かが、密かに録音し、パワハラ市長の証拠としてマスコミにリークしたものと思われます。

2.暴言録音テープの全容判明で評価が一変して3選される

その結果、泉房穂市長への非難が集中しますが、その後奇妙なことに「暴言録音テープ」の全容が明らかになり、過激な発言はあるものの全体の内容から判断して市長の言うことはもっともで、部下の怠慢こそ非難されるべきという風に、評価が一変しました。

その結果、「録音テープ」が明らかになった当初は3選など不可能と思われていたのが、3月17日の市長選挙では、2期までの泉市長の市政が正しく評価され、一転して他の候補を圧倒する「圧勝」でした。

3.一部分を切り取ったニュースの怖さ

(1)「米【日本、ヘイト増】人権報告書で懸念」という記事の危険性

これは今年3月14日の毎日新聞夕刊の一面の記事です。意外な記事なので読んでみると次のようなものでした。

【ワシントン共同】米国務省は13日、世界200カ国以上を対象にした2018年版の人権報告書を発表し、日本でヘイトスピーチが増加傾向にあると指摘した。日本に暮らす外国人や、外国人を親に持つ市民らに対して雇用や教育などで差別があるとも言及し、懸念を示した。

報告書は、日本のヘイトスピーチ対策法に罰則規定がないため、検察官が名誉棄損罪を適用していることや、東京都や川崎市、京都府、大阪市といった自治体が条例やガイドラインを設けて対応に当たっていることを紹介した。

飲食店などが外国人や「外国人のように見える」市民の入店を拒み、「日本人専用」の表示を掲げることもあるとし、「根強い社会的差別」の存在を指摘した。

私はこの記事を読んで唖然としました。これでは南アフリカの「アパルトヘイト」やアメリカでの根強い黒人差別を想起させるような内容で、事実と全く異なるものです。

なぜ、このような記事を毎日新聞が載せたのか、またアメリカの国務省の人権報告書が全体としても日本に対してこのようなトーンの文章なのか疑問が残りました。

産経デジタルの記事では、国務省の人権報告書について、次のように伝えています。

「中国政府は、少数民族ウイグル族やイスラム教徒80万~200万人以上を宗教的・民族的アイデンティティーを奪う収容所に入れている」と指摘し、人権団体などの情報として、「当局が収容所内で一部収容者に対する虐待や、拷問・殺害を行っている」と批判している。

ポンぺオ国務長官は、同日の会見で「中国は宗教や民族の独自性を消そうとしている。2018年に少数民族に対する拘束が強まり、記録的な水準に達した。中国の人権侵害は桁外れだ」と非難した。

また、別のネット記事は、国務省の人権報告書について、「韓国文在寅政権が、脱北者団体に北朝鮮批判をしないよう圧力」との記事を掲載しています。

韓国政府が昨年2月に行われた平昌冬季五輪を前に脱北者らに対し、北朝鮮批判が出来ないようにするなど、脱北者と北朝鮮人権団体に圧力を掛けていると指摘した。

ポンぺオ国務長官は、同日の会見で「我が国の友好国、同盟、パートナー諸国も人権侵害を犯しており、これを(他の国々と)同等に記録した」と述べた。

中国や韓国の人権侵害の現状を鋭く指摘して非難している報告書の記事はよくわかるのですが、日本についての報告内容は「的外れ」のような気がします。特に飲食店での「外国人入店拒否」や「日本人専用」飲食店の件については初耳で、どこにそんな店があるのか知りたいぐらいです。この日本に関する報告書を書いた人は、日本に来たことがなく、信頼の置けない人権団体などからの伝聞情報だけでこの報告を書いたのではないかと勘繰りたくなります。

しかし、怖いのはこういう「報告書」が「一人歩き」することです。「従軍慰安婦に関する国連報告書」にもよく似た例があります。これは国連の1996年の「クマラスワミ報告」や、1998年の「マクドゥーガル報告書」のことで、「朝日新聞の捏造記事に基づく誤った報告書」だからです。

このように、毎日新聞の記事だけを見ると日本を不当に非難する国務省の人権報告書は奇妙ですが、いろいろなニュースソースを合わせ読むと、全体像がおぼろげながら見えてきます。

もう一つ私が気になったのは、肝心の「アメリカでの人種差別状況をどう報告していたのか」ですが、これについては私が見たニュースソースにはどこにも見当たりませんでした。最近アメリカでは日本・韓国・中国などのアジア系民族の活躍が目覚ましいですが、それにつれて従来からの黒人差別のほかにアジア系民族への差別も起きていると聞いたことがあります。

ポンぺオ国務長官が「我が国の友好国、同盟、パートナー諸国も人権侵害を犯しており、これを(他の国々と)同等に記録した」といかにも「公正であること」を強調するのであれば、自らの国である「アメリカの人種差別状況」もしっかり記録して発表してほしいものです。

(2)政治家の講演会などでの発言の一部を切り取る批判の危険性

よく、自民党の政治家が自らの派閥や後援会の集会や講演会で、「失言」をすることがあります。話の内容全体を見れば特に問題ないのですが、その部分だけを取り上げて「レッテル貼り」をして批判するのは最初に述べた明石市長の暴言と同様です。