私の住んでいる高槻市には飲食店が多いですが、たくさんの店が続々と開店しては、いつのまにか閉店しています。
飲食業の「1年以内の廃業率」は18.9%で、全業種中で断トツの1位です。また中小企業白書によれば、個人事業主の「1年以内の廃業率」は37.7%で、10年後まで存続しているのは11.6%に過ぎません。
「見切るのが早い」と言えば、聞こえがよいですが、そこにはいくつかの原因がありそうです。
1.ワークライフバランスを考えた経営
(1)1日100食限定の定食屋「佰食屋(ひゃくしょくや)」
これは、飲食店の常識を覆す1日100食限定のお店を経営する「パワーママ」として有名になった中村朱美さんの経営する飲食店です。
京都で「佰食屋」を含む3店舗を経営しており、「売上を減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放」という本も出版しています。
ご主人が晩御飯に作ってくれた「ステーキ丼」があまりにおいしくて、当時サラリーマンだったご主人を強引に誘って開業したそうです。「ランチ営業のみ。完売次第営業終了」というビジネスモデルを構築し、従業員のワークライフバランスも実現していることで注目されています。
ほかにも「1日1組限定」の小規模な旅館や、「売り切れ次第営業終了」の小規模なパン屋、「予約客限定」の小規模な和食店などがありますが、同様の考え方によるものでしょう。
ファミリーマートが2019年の「土用の丑の日」に「予約販売のみ」にしたのは、「食品ロスの削減」と「従業員への過当な販売ノルマ是正」の観点からだと思いますが、「縮みの経営」「身の丈に合った経営」という意味で相通じるものがあります。
2.利益が出せる経営
これは裏返せば「コストを考えた経営」です。
(1)定年サラリーマンが経営する飲食店は1カ月で潰れる
前に「人生の楽園に出演した人はその後幸福な人生を送っているのか?」という記事を 書きましたが、「武士の商法」ならぬ「定年サラリーマンの商法」は危なっかしい感じがします。
コーヒー通の定年サラリーマンが第二の人生として喫茶店を始めることがよくあります。しかし、立派な焙煎機などの設備を揃え、豊富なコーヒー豆を用意し、若い女店員を雇って、しかも「安い価格」で上質なコーヒーを提供したりすると、1カ月で潰れてしまいます。無理して営業を続ければ、赤字がどんどん増えていくだけです。
コストに見合った「適正価格」を設定しなければ経営が成り立ちません。
これは堀江貴文氏の「まんがでわかる絶対成功!ホリエモン式飲食店経営」に紹介されている話です。
(2)年中無休・24時間営業はロスが大きい
2019年にコンビニ最大手の「セブンイレブン」で問題になった「24時間営業」ですが、フランチャイズオーナーにとっての従業員不足の問題だけでなく、深夜の時間帯は光熱費や人件費などのコストに見合う売り上げは多分ないと私は思います。
「年中無休」も問題で、コンビニに限らず百貨店などの小売業全体に「定休日復活」に動くようになれば良いと思います。
コンビニではありませんが、しゃぶしゃぶ食べ放題の「きんのぶた」は、「平日は午後5時から。土日と祝日は12時から営業」としているのは、理に適っています。他のファミリーレストランと違って「ディナー」メニューがメインだからでしょう。
3.適正価格を考えた経営
(1)カルピスは価格競争による過度なシェア争いをやめて値上げ
カルピスを販売するアサヒビールの決断ですが、これは正しい決断だと思います。
(2)日産は過大な販売奨励金による実質値引き販売を見直し
金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)のほか、業務上横領や特別背任の疑いのあるカルロスゴーン被告の経営方針で、「売り上げ至上主義」でシェアを伸ばそうとしたため、北米では過大な販売奨励金による実質値引きが長年にわたって行われました。その結果、「日産=安売り車」という評価が定着してしまいました。これを覆すのは、信用や信頼を回復するのと同じくらい大変なことです。
4.その他の経営上注意すべき点
(1)後継者
事業を長く続けて行くためには、自分の後継者のことを念頭に置いておく必要があります。開業当初はそんなことを考える余裕もないでしょうが、事業が軌道に乗って来たころには、将来のあるべき姿を想定する必要があります。
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