「トリクルダウン」とは何か?「アベノミクス」との関係は?

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トリクルダウンの理想形

最近野党が「アベノミクスの失敗」を攻撃する時に、「トリクルダウンが実現できなかった」という言い方をするのをよく聞きます。

1.トリクルダウン(トリクルダウン理論)とは

トリクルダウン理論trickle-down effect)とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなるという経済に関する仮説です。18世紀の初頭に英国の精神科医マンデヴィルによって初めてこのような考え方が注目を集め、その後の古典派経済学に影響を与えましたが、提唱された当時とは時代的背景が大きく異なっていることもあり、現在では否定的な意見が多くなっています均霑理論(きんてんりろん)とも訳されます。

トリクル(trickle)とは、英語で「水などがちょろちょろ漏れ出る」という意味です。

富裕層が潤い社会全体の富が増大すれば、富は貧困層にもこぼれ落ち、経済全体が良い方向に進むとする経済理論です。その本質的なスタンスから「おこぼれ経済」とも言われ、現実的裏付けや社会科学的な立証はなされていません。

「シャンパンタワーの法則」と同様の考え方ですね。

シャンパンタワーシャンパンタワーの法則

しかし、このように理想通り行くものでしょうか?

「トリクルダウン理論」は古典派経済学者のアダム・スミスの「国富論」における「神の見えざる手」(資本主義の市場価格は需要と供給のバランスと商人同士の自由な価格競争によって自然に調和するとの主張)と同様に、一般に理解しやすい(素人受けしやすい)半面、「本当に『シャンパンタワーの法則』のようにうまく行くのか?」「詭弁ではないのか?」という疑問も残ります。

「トリクルダウン理論」が想定するような状況は、開発途上国の経済発展などの限られた局面では一定の有効性が考えられます。しかし、大衆消費が充実した大規模な経済市場では、経済成長についての有効性は低く、社会格差を拡大するだけだとの批判が強いのが実情です。

2.アベノミクスとは

アベノミクス・トリクルダウン

アベノミクス」とは、上の画像で明らかなように「トリクルダウン理論」に基づく政策です。

日銀の「異次元金融緩和」によって、2012年末で130兆円のマネタリーベースを2年で2倍に増やす政策で、皆が驚くレベルの資金供給を行ってインフレ期待を煽りデフレを脱却するというものでした。そして日銀は2年で2%の物価上昇率達成を掲げました。

アベノミクス」では、緩やかなインフレを促そうとするリフレ政策が基調となっています。この中で進められる金融緩和や消費税増税と大企業の法人税抑制、所得税の累進緩和などが、「トリクルダウン理論の亡霊の再現」ではないかと危惧する論者もいます。

アベノミクスの実態

しかし現実には、「開始時」は輸出比率の高い大企業は円安に伴う収益増で、急速に業績が回復したものの、中小零細企業は内需中心のため、円安でコスト増に見舞われました。

「現在」は日経平均株価が2倍超になり、株式や外貨を保有する富裕層の資産も倍増しましたが、株式や外貨を持たない層は恩恵を受けられず、「円安・インフレ・増税」のトリプルパンチで実質賃金が減少し、生活が苦しくなっています。

長期間にわたる「マイナス金利」政策の影響で、年金生活者を含む大多数の国民は預金利子を生活費の足しにできなくなり、金融機関(特に地方銀行)は金利差益が稼げず経営が苦しくなっています。これについては「マイナス金利政策は早急に中止し、金利を引上げて景気回復を実現すべき!」という記事に詳しく書いていますので、ご一読ください。

「将来」はどうなるのでしょうか?法人税引き下げや消費増税が行われるのでしょうか?

3.岸田首相の「新資本主義」でアベノミクスのひずみを是正できるか

このようなアベノミクスの失敗によって「貧富の格差」が大幅に増大し、中間層の苦境が増している現状に鑑み、10月4日に発足した岸田新内閣では「新資本主義」や「令和版所得倍増計画」による「分厚い中間層の形成」、「1億円の壁の打破」などを掲げてひずみ是正を図ろうとしているように見えます。

「上からのおこぼれ」など最初からあてにせず、ダイレクトに中間層以下をターゲットに、彼らの富を増やすような手厚い優遇策を実施するのでなければ、問題は解決しないと私は思います。

ただし、現在のところその具体策がはっきりしないため、その成否は現時点では判断できません。



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