中国とロシアの脅威増大!日本の12海里以内にある特定海域は廃止すべきか?

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日本の領海

1.中国とロシアの軍艦が「共同軍事演習」で津軽海峡を通過

特定海域・津軽海峡

2021年10月18日、青森県と北海道との間を隔てる津軽海峡を、中国海軍とロシア海軍の艦艇、合わせて10隻が通過しました。さらに、防衛省統合幕僚監部の発表によると、この艦隊はその後、太平洋へと進出し、10月21日には千葉県犬吠埼の沖合を南進、東京都の小笠原諸島付近を航行したことが確認されています。ちなみに、中国海軍の艦艇とロシア海軍の艦艇が同時に津軽海峡を通過したのは、今回が初めてです。

今回の通過は国際法上は、何の問題もありません。というのも、そもそも今回この艦隊が通過した津軽海峡の中央部分は、どこの国にも属さない海域である「公海」だからです。

ただし、この津軽海峡を通過する中国とロシアの軍艦による「共同軍事演習」の狙いが、「日米合同軍事演習」に対抗して、日本を威嚇するものであることは明らかです。

2.国際海洋法条約に基づく「国際海峡」と「特定海域」の違い

(1)「国際海峡」とは

国際海峡( International straits)もしくは国際航行に使用されている海峡(Straits used for international navigation)とは、「国連海洋法条約によって定義された国際航行を定められた範囲で自由に行える海峡」のことです。

国連海洋法条約第3部2節37条では、「公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある国際航行に使用されている海峡」と定義されています。

(2)「特定海域」とは

国際法上、沿岸国は基線(領海や排他的経済水域などを設定する際の基準線)から12海里(約22km)までの間で「領海」を設定することができますし、それ受けて制定されている日本の国内法である「領海法(領海及び接続水域に関する法律)」第1条でも、「我が国の領海は、基線からその外側12海里の線(中略)までの海域とする」と定められています。

しかし、これは「領海の幅を必ず12海里に設定しなければいけない」という意味ではなく、その範囲内でより狭い範囲で領海を設定することは国際法上、何の問題もありません。

日本政府は津軽海峡を含む5海峡(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡)について、前述した領海法の附則第2項の規定に基づき、領海の幅を基線から3海里(約5.5km)に制限しました。

(3)日本の特定海域

種子島の特定海域

つまり日本における特定海域とは、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、同西水道及び大隅海峡の、領海の幅が通常の12海里でなく3海里にとどめられた5つの海峡を指します。

これは一見すると「日本国内にある国際海峡の別称」とも言えます。ただし、後述の通り、厳密には「日本の特定海域」は「国際海峡」ではありません。

3.「特定海域」設定のメリット・デメリット

(1)メリット

①自由な航行を確保することが総合的な国益に合致する

なぜわざわざ領海の幅を制限して特定海域を設けたのかについて、日本政府は従来、「海洋国家、先進貿易国として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を確保することが総合的な国益の観点から必要である」と説明しています。

②「非核三原則」の抵触を避けることができる

海峡全体を日本の領海としてしまうと、アメリカを含む他国の核兵器を搭載した軍艦や潜水艦がここを通過した際に、一時的にであれ核兵器が日本の領域内に持ち込まれる形になり、日本政府が堅持している「非核三原則」の「持ち込ませず」という部分に抵触してしまいます。そこで、あえて公海部分を残したのではないか、というわけです。

③日本の「特定海域」はUNCLOSで規定されている「国際海峡」にはあたらない

海洋に関するさまざまな規定などについて定める「UNCLOS(国連海洋法条約)」では、その第3部に「国際航行に使用されている海峡」という規定が設けられているのですが、日本の「特定海域」はここでいう「国際航行に使用されている海峡」に関する規定が適用されません。

というのも、UNCLOS第36条には「この部の規定は、国際航行に使用されている海峡であって、その海峡内に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海又は排他的経済水域の航路が存在するものについては、適用しない」と規定されているからです。

ここでいう「国際航行に使用されている海峡」とは、公海または排他的経済水域同士を結ぶような海峡のことです。そして、その中央部分を公海としている特定海峡については、この部の規定が適用されないのです。  つまり、厳密にいうと、日本政府が定めたところの津軽海峡など5つの「特定海域」は、UNCLOSで規定されている「国際海峡」にはあたらないのです。

たとえば津軽海峡全体を領海としてしまうと、これはUNCLOS上の、公海と公海を結ぶ「国際海峡」ということになります。そして、この「国際海峡」においては、通常の領海内における「無害通航権」ではなく、そこから沿岸国(この場合は日本)の権利などをさらに制約した「通過通航権」(通航する側にとっては「無害通航権」よりもさらに自由)というものが航行する船舶などに対して認められるのです。  この「通過通航権」の下では、たとえば、領海内では認められていない潜水艦による潜没航行が認められていると解されています。ほかにも、通常であれば領海の上空は領空にあたるため、他国の航空機が沿岸国の許可なく領海の上空を通過すれば領空侵犯となるところ、国際海峡においては通過通航権に基づく上空通過の自由が認められています。

(2)デメリット

特定海域を航行する中国軍艦

①中国やロシアなどの軍艦の「特定海域」航行で領海侵犯が常態化

②中国やロシアなどによる「特定海域」付近(日本列島3海里以内)での軍事的脅威の増大

③中国やロシアなどによる日本列島侵略を誘発する可能性

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