2019年7月の参院選では「れいわ新選組」の山本太郎氏と、「N国民党」の立花孝志氏の二人が注目を集めました。
普通であれば、「泡沫候補」として特に注目されなかったかもしれませんが、今回のこの二人は、SNSやYouTubeなどインターネットを駆使して多くの人々の関心を集めました。
「れいわ新選組」は、党首の山本太郎氏は落選しましたが、重度の障碍者2名が当選し、「N国民党」は党首の立花孝志氏1名が当選しました。
今回は、「NHKをぶっ壊す!」などの過激な発言を繰り返した「NHKから国民を守る党」(以下「N国」と略)の主張である「NHKのスクランブル放送化」の正否について考えてみたいと思います。
1.「NHKのスクランブル放送化」とは
N国の主張は、「NHKの放送をスクランブル化して、見たい人だけが受信料を支払い視聴するシステムを構築せよ」ということです。「WOWOW」や「スカパー!」のような有料放送と同じと考えればよいわけです。
「スクランブル放送」とは、「映像や音声の信号を暗号化(スクランブル)して、送り出す放送」のことです。
現在のNHKの「一律に受信料支払い義務を課す体制」は、次に述べるように問題点も多く、早急に「スクランブル放送化」すべきだと私も思います。
そういう意味で、N国の「NHKのスクランブル放送化」の主張は真っ当だと私は思います。
「NHKがスクランブル放送化すると、受信料を払う人がさらに減って、受信料が高くなる」という意見があります。
これについては、NHKの経費節減努力や放送内容の向上による視聴者獲得努力が必要だと思います。しかし、極論かもしれませんが、多くの国民がNHKを必要としないのであれば、NHKが消滅する(自滅?)こともやむを得ないのではないでしょうか?
2.一律に受信料支払い義務を課すことの問題点
(1)NHKを全く見ない人にも受信料支払い義務があること
以前から「自分はNHKを一切見ないので、受信料を払いたくない」という意見の人もいました。
これとよく似たケースに日本人の仏教があります。自分は個人的に宗教を全く信じていないとしても、先祖代々「浄土真宗の檀家」になっているという家庭が多いのではないでしょうか?
(2)受信料不払い率が高いこと
都道府県でバラツキはあるものの結構不払いの人が多いのが現状です。これでは「正直に払っている人が馬鹿を見ている」ことになり、「不公平感」がぬぐえません。
全国平均の「支払い率」は78.2%で、未契約世帯が約900万世帯に上るそうです。
平成28年度末の「受信料支払い率」のベスト5とワースト5は次の通りです。
<ベスト5>
1位:秋田県(96.3%) 2位:新潟県(94.7%) 3位:島根県(93.9%)
4位:山形県(92.6%) 5位:青森県(91.6%)
<ワースト5>
1位:沖縄県(48.8%) 2位:大阪府(63.5%) 3位:東京都(66.4%)
4位:北海道(70.0%) 5位:京都府(73.6%)
沖縄では、驚いたことに半数以上の世帯が受信料を支払っていないのです。あと、大阪府、東京都、京都府などの大都市圏を持つ都道府県でも不払い率が高いのは意外です。
(3)最近のNHKの放送内容(コンテンツ)の低下・劣化が目立つこと
私は、個人的には現在の「ニュースウォッチ9」が特にひどいと感じています。前のキャスターの時はまだよかったのですが、最近は報道内容(中身)が表面的で深く掘り下げておらず、「バラエティー番組と勘違いしているのではないか?」と首を傾げたくなることがよくあります。
(4)かつての折り目正しいNHKから限りなく民間放送に近い崩れ方が目立つこと
BSプレミアムは、まだ良質な番組を放送していますが、地上波デジタルの放送内容は民間放送とほとんど変わらないひどい崩れ方のように感じます。
(5)ニュースや娯楽番組は民放とネットがあれば十分なこと
民放も多チャンネル化して娯楽番組のコンテンツも豊富になっており、ニュースも民放とネットで十分キャッチでき、NHKの必要性を感じない人も多いと思います。
(6)見たい番組だけ見るのなら「動画配信サイト」で十分なこと
スクランブル放送になっても、見たい番組が少ない場合は、「U-NEXT(ユーネクスト)」などの「動画配信サイト」に加入して、見たい番組だけ見ればよいわけです。「動画配信サイト」は、NHKオンデマンドだけでなく、民放の見逃し番組や、映画・コミックなども見ることができる「サブスクリプション消費」(定額課金サービスの利用)なので、合理的です。
4.NHK受信料支払い義務の法的根拠
しかし現在、テレビを持っている全世帯は「放送法」第64条(*)によって、NHK受信料を支払う義務が課せられています。
(*)放送法第64条(受信契約及び受信料)
1 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。
3.「N国」とは
(1)結党
元NHK職員で、インターネットテレビ「立花孝志ひとり放送局」社長の立花孝志氏(1967年~ )が、2013年6月に「NHK受信料不払い党」として結党し、同年7月に現在の党名「NHKから国民を守る党」に変更しました。
(2)政策・主張
①NHKのスクランブル放送化
②インターネットを使った直接民主主義の導入
以上2つが主な政策・主張ですが、今回は①に焦点を当てて考えてみました。
コメント
メールでのお知らせ、ありがとうございます。
私とは別の切り口で大変勉強になりました。
他の記事も興味を引くものが多く読ませて頂きました。
ブログの内容や文章に落ち着きや品を感じ、違った面でも勉強させて頂きました。
私のお気に入りにいれたので、また遊びに来ますね。