「和風月名」以外の「月の異称」をご紹介します。

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月の異称

1月・睦月(むつき)、2月・如月(きさらぎ)などの「和風月名」の記事を前に書きましたが、「令和」の元号発表の時に「2月は令月(れいげつ)とも言う」ことを知った方も多いと思います。

この例のように、各月には通常使われている和風月名以外の呼び方がたくさんあります。この「異称」(異名)は、古くは「万葉集」や「日本書紀」に書かれていたり、その後も和歌に詠まれたり、古い辞書や百科事典的な書物に書かれたりして徐々に一般に認知されたものが残っているものと思われます。

なお、「月の異称」を紹介した古文書には、平安時代の承平年間(931年~938年)に源順(みなもとのしたごう)によって編纂された辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)」(下の左の画像)や、室町時代の1444年に成立し、1617年に刊行された東麓破衲(とうろくはのう)の著した辞書「下学集(かがくしゅう)」(下の右の画像)、1446年に僧行基(ぎょうき)が編纂した百科事典「壒囊鈔(あいのうしょう)」(冒頭の画像)などがあります。

和名類聚抄下学集

これらの「月の異称」は、太陰(月)の満ち欠けを基準とした「太陰暦」(陰暦、旧暦)に基づくものです。その月にふさわしい「古来の日本人の季節感」を表した名前が多いようです。

今回はこのような「月の異称」(月の異名)をご紹介したいと思います。

1.一月の異称

(1)「○○月」という異称

①建寅月(けんいんげつ)

これは古代中国の「月建(げっけん」と「北斗七星」に由来する呼び名です。北斗七星は季節を示す時計の針で、「建+十二支名+月」という名前のパターンです。

「十二月建(じゅうにげつけん)」とは、十二支を1年の12の月に配当したものです。

「建」は「おざす」(尾指す)と読み、この「尾」は「北斗七星の柄の部分」のことです。

北極星と北斗七星

北天に一年中見えている北斗七星は、時を司る重要な星座と考えられ、「北斗七星の柄の部分」がどの方角を指しているかによって季節を知ったと言われています。

陰暦1月には「北斗七星の柄の部分」が「寅の方角」(東北東)を向いているため、「建寅月」と呼ばれるのです。

なお、十二支と方位の関係は下の画像の通りです。

十二支と方位

②霞初月(かすみそめづき)

「霞染月(かすみそめづき)」とも書きます。

③暮新月(くれしづき)

④初見月(はつみつき)

⑤初春月(はつはるつき)

⑥太郎月(たろうづき)

(2)「漢語」の異称

①太簇(たいそう)

「大簇」とも書きます。「太簇」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より二律高い音です。邦楽の「平調(ひょうじょう)」に当たります。

②孟春(もうしゅん)

よく似た呼び名に「初春(しょしゅん)」「新春(しんしゅん)」「上春(じょうしゅん)があります。

③青陽(せいよう)

④解凍(かいとう)

これは「七十二候」第一候の「東風解凍」に由来する呼び名です。

⑤華歳(かさい)

⑥甫年(ほねん)

2.二月の異称

(1)「○○月」という異称

①建卯月(けんぼうげつ)

陰暦2月には「北斗七星の柄の部分」が「卯の方角」(東)を向いているため、「建卯月」と呼ばれるのです。

②雪解月(ゆきげづき)

よく似た呼び名に「雪消月(ゆきぎえつき)」があります。

③大壮月(たいそうげつ)

④梅月(うめつき)

よく似た呼び名に「梅見月(うめみつき)」「梅津月(うめつづき)」「梅津早月(うめつさつき)」「梅津五月(うめつさつき)」があります。

⑤小草生月(おくさおいづき)

よく似た呼び名に「木の芽月(このめづき)」があります。

⑥初花月(はつはなづき)

(2)「漢語」の異称

①夾鐘(きょうしょう)

「夾鐘」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より三律高い音です。邦楽の「勝絶(しょうせつ)」に当たります。

②仲春(ちゅうしゅん)

③仲陽(ちゅうよう)

④酣春(かんしゅん)

⑤橘如(きつじょ)

⑥恵風(けいふう)

3.三月の異称

(1)「○○月」という異称

①建辰月(けんしんげつ)

陰暦3月には「北斗七星の柄の部分」が「辰の方角」(東南東)を向いているため、「建辰月」と呼ばれるのです。

②雛月(ひいなつき)

③桜月(さくらつき)

④早花咲月(さはなさづき)

⑤染色月(しめいろづき)

⑥花津月(はなつつき)

(2)「漢語」の異称

①沽洗(こせん)

「姑洗」とも書きます。「沽洗」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より四律高い音です。邦楽の「下無(しもむ)」(嬰ヘ音)に当たります。

②季春(きしゅん)

③暮春(ぼしゅん)

④暮陽(ぼよう)

⑤花月(かげつ)

⑥清明(せいめい)

これは「二十四節気」の「清明」に由来する呼び名です。

4.四月の異称

(1)「○○月」という異称

①建巳月(けんしづき)

陰暦4月には「北斗七星の柄の部分」が「巳の方角」(南南東)を向いているため、「建巳月」と呼ばれるのです。

②得鳥羽月(えとりはづき)

③卯花月(うのはなつき)

④木葉採月(このはとりづき)

⑤夏初月(なつはづき)

「夏端月(なつはづき)」とも書きます。

⑥花残月(はなのこりづき)

(2)「漢語」の異称

①仲呂(ちゅうりょ)

「仲呂」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より五律高い音です。邦楽の「双調(そうじょう)」に当たります。

②孟夏(もうか)

③初夏(しょか)

④首夏(しゅか)

⑤維夏(いか)

⑥清和(せいわ)

5.五月の異称

(1)「○○月」という異称

①建午月(けんごげつ)

陰暦5月には「北斗七星の柄の部分」が「午の方角」(南)を向いているため、「建午月」と呼ばれるのです。

②鶉月(うずらづき)

③菖蒲月(あやめつき)

④五色月(いついろづき)

⑤橘月(たちばなつき)

⑥狭雲月(さくもづき)

(2)「漢語」の異称

①蕤賓(すいひん)

「蕤賓」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より六律高い音です。邦楽の「鐘(ふしょう)」に当たります。

②星花(せいか)

③梅夏(ばいか)

よく似た呼び名に「梅天(ばいてん)」「梅月(ばいげつ)」があります。

④芒積(ぼうせき)

⑤啓明(けいめい)

よく似た呼び名に「啓月(けいげつ)」があります。

⑥茂林(ぼりん)

6.六月の異称

(1)「○○月」という異称

①建未月(けんびげつ)

陰暦6月には「北斗七星の柄の部分」が「未の方角」(南南西)を向いているため、「建未月」と呼ばれるのです。

②水月(みなづき)

③水張月(みずはりづき)

④皆仕月(みなしつき)

⑤弥涼暮月(いすずくれづき)

⑥松風月(まつかぜづき)

(2)「漢語」の異称

①林鐘(りんしょう)

「林鐘」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より七律高い音です。邦楽の「黄鐘(おうしき)」に当たります。

②季夏(きか)

③極暑(きょくしょ)

④炎陽(えんよう)

よく似た呼び名に「焦月(しょうげつ)」があります。

⑤鶉火(じゅんか)

⑥庚伏(こうふく)

7.七月の異称

(1)「○○月」という異称

①建申月(けんしんげつ)

陰暦7月には「北斗七星の柄の部分」が「申の方角」(西南西)を向いているため、「建申月」と呼ばれるのです。

②書披月(ふみひろげづき)

③相月(あいづき)

④女郎花月(おみなえしつき)

⑤秋初月(あきそめづき)

⑥愛逢月(めであいづき)

(2)「漢語」の異称

①夷則(いそく)

「夷則」は中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より八律高い音です。邦楽の「鸞鏡(らんけい)」に当たります。

②孟秋(もうしゅう)

よく似た呼び名に「上秋(じょうしゅう)」「初秋(しょしゅう)「初商(しょしょう)」「新秋(しんしゅう)」「肇秋(ちょうしゅう)」などがあります。

③桐秋(とうしゅう)

よく似た呼び名に「桐月(とうげつ)」があります。

④窒相(ちっそう)

⑤蘭秋(らんしゅう)

よく似た呼び名に「蘭月(らんげつ)」があります。

⑥瓜時(かじ)

8.八月の異称

(1)「○○月」という異称

①建酉月(けんゆうげつ)

陰暦8月には「北斗七星の柄の部分」が「酉の方角」(西)を向いているため、「建酉月」と呼ばれるのです。

②初来月(はつきづき)

③穂張月(ほはりづき)

④南風月(はえつき)

⑤萩月(はぎつき)

⑥葉落月(はおちづき)

(2)「漢語」の異称

①南呂(なんりょ)

「南呂」とは中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より九律高い音です。邦楽の「神仙(しんせん)」に当たります。

②桂秋(けいしゅう)

よく似た呼び名に「桂月(けいげつ)」があります。

③秋高(しゅうこう)

④清秋(せいしゅう)

よく似た呼び名に「清月(せいげつ)」があります。

⑤豆雨(ずう)

⑥竹春(ちくしゅん)

9.九月の異称

(1)「○○月」という異称

①建戍月(けんじゅつげつ)

陰暦9月には「北斗七星の柄の部分」が「戍の方角」(西北西)を向いているため、「建戍月」と呼ばれるのです。

②色どり月(いろどりつき)

③稲熟月(いねあがりづき)

④小田刈月(おだかりづき)

⑤夜長月(よながつき)

⑥菊間月(きくまづき)

(2)「漢語」の異称

①無射(ぶえき)

「無射」とは中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より十律高い音です。邦楽の「盤渉(ばんしき)」に当たります。

②勁秋(けいしゅう)

よく似た呼び名に「窮秋(きゅうしゅう)」「九秋(きゅうしゅう)」「晩秋(ばんしゅう)」「暮秋(ぼしゅう)」「末秋(まつしゅう)」があります。

③粛霜(しゅくそう)

④季白(きはく)

⑤授衣(じゅえ)

⑥霜辰(そうしん)

10.十月の異称

(1)「○○月」という異称

①建亥月(けんがいげつ)

陰暦10月には「北斗七星の柄の部分」が「亥の方角」(北北西)を向いているため、「建亥月」と呼ばれるのです。

②初霜月(はつしもづき)

③小春月(こはるづき)

④醸成月(かみなんづき)

その年に収穫した新米で酒を醸(かも)し造ることに由来する呼び名です。

⑤神嘗月(かんなめづき)

⑥神去月(かみさりづき)

日本全国の神様が毎年10月に出雲国に集まるため、神様が留守になることに由来する呼び名で「神無月(かんなづき)」と同じ意味です。ただし、出雲地方では「神有月(かみありづき)」(神在月)と呼びます。

(2)「漢語」の異称

①応鐘(おうしょう)

「応鐘」とは中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より十一律高い音です。邦楽の「上無(かみむ)」に当たります。

②孟冬(もうとう)

よく似た呼び名に「初冬(しょとう)」「上冬(じょうとう)」「新冬(しんとう)」「早冬(そうとう)」「開冬(かいとう)」があります。

③陽月(ようげつ)

④玄英(げんえい)

⑤大素(たいそ)

⑥始冰(しひょう)

11.十一月の異称

(1)「○○月」という異称

①建子月(けんしげつ)

陰暦11月には「北斗七星の柄の部分」が「子の方角」(北)を向いているため、「建子月」と呼ばれるのです。

②食物月(おしものづき)

③雪見月(ゆきみづき)

「雪待月(ゆきまちづき)」という似た呼び名もあります。

④神楽月(かぐらつき)

⑤末つ月(すえつつき)

⑥神帰月(かみきづき)

(2)「漢語」の異称

①黄鐘(こうしょう)

「黄鐘」とは中国の音楽の十二律の一つで、基本音のことです。邦楽の「壱越(いちこつ)」に当たります。

②仲冬(ちゅうとう)

③子月(しげつ)

④広寒(こうかん)

⑤天泉(てんせん)

⑥陽復(ようふく)

12.十二月の異称

(1)「○○月」という異称

①建丑月(けんちゅうげつ)

陰暦12月には「北斗七星の柄の部分」が「丑の方角」(北北東)を向いているため、「建丑月」と呼ばれるのです。

②梅初月(うめはつづき)

③親子月(おやこづき)

④三冬月(みふゆづき)

「三冬(さんとう)」は、初冬(10月)・仲冬(11月)・晩冬(12月)の三カ月のことです。「三冬(みふゆ)」は「三番目の冬」という意味でしょう。

池波正太郎の歴史小説に「剣客商売」というのがあります。主人公の秋山小兵衛の息子大治郎の嫁が女剣士で佐々木三冬(みふゆ)という名前ですが、池波ファンのお父さんたちがこの「三冬」という名前を気に入って、女の子の名前に付ける人が多かったという話もあります。

⑤弟月(おとづき)

⑥春待月(はるまちづき)

⑦限月(かぎりのつき)

⑧暮来月(くれこづき)

(2)「漢語」の異称

①大呂(たいりょ)

「大呂」とは中国の音楽の十二律の一つで、基本音の「黄鐘(こうしょう)」より一律高い音です。邦楽の「断金(たんぎん)」に当たります。

②季冬(きとう)

よく似た呼び名に「暮冬(ぼとう)」「晩冬(ばんとう)」「杪冬(びょうとう)」「窮冬(きゅうとう)」「残冬(ざんとう)」があります。

③玄律(げんりつ)

④蠟月(ろうげつ)

「臈月(ろうげつ)」とも書きます。

⑤清祀(せいし)

⑥黄冬(おうとう)

⑦極月(ごくげつ)

⑧氷月(ひょうげつ)

⑨暮歳(ぼさい)



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