「耳」が付く熟語・ことわざ・慣用句

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耳のつく言葉

1.「耳」が付く熟語

(1)空耳(そらみみ):実際には存在しない声や物音を聞いたように思うこと。(視覚の場合は空目)「幻聴」とも呼ばれます。統合失調症などの精神的な病気や薬物中毒による幻覚として起こるようです。

(2)地獄耳(じごくみみ)

人の秘密などを素早く聞きつけること。また、そのような人

(3)遠耳(とおみみ)

遠方の物音でもよく聞き取ることができること。また、その耳(視覚の場合は遠目)

(4)飛耳長目(ひじちょうもく)

物事の観察に鋭敏で、見聞が広く精通していること。観察力や情報の収集力があり、物事に通じていることの形容です。「長目飛耳」とも言います。吉田松陰が重視した考え方です。

(5)耳巧者(みみごうしゃ)

耳学問でいろいろなことを知っていること。また、そのような人

(6)鳶目兎耳(えんもくとじ)

情報を集める能力の高い人のこと。鳶のように遠くのものまで見分けることのできる目と、小さな音を聞き分けることのできる兎のような耳という意味です。

(7)口耳講説(こうじこうせつ)

人の話を聞いて、十分に理解しないままにすぐ人に話すこと。「受け売り」のことです。「道聴塗説(どうちょうとせつ)」も同じ意味です。

(8)耳石(じせき)

脊椎動物の内耳にある炭酸カルシウムの結晶から成る組織です。「平衡石」「聴石」とも言い、ヒトのものは「聴砂」とも呼ばれます。体の傾きに応じて重力の方向に移動し、感覚細胞の感覚毛を圧迫し、その圧迫の変化によって体の傾きを感じるようになっています。

耳石器から剥がれ落ちて三半規管にたまった耳石は、「良性発作性頭位めまい症」の原因となります。なお魚類の耳石は、一日一本の「日輪」が形成されるため、年齢推定を「日単位」で行うことができ、ニホンウナギの産卵場所特定などにも活用されています。

(9)巻耳(おなもみ)

オナモミ(巻耳)

これは植物の名前で、キク科オナモミ属の1年草です。果実に多数のトゲがあるので「ひっつき虫」とも呼ばれます。私たちの子供の頃は、友達の服に投げつけてくっつける遊びをしたものです。

(10)僻耳(ひがみみ)

聞き間違えることです。転じて「思い過ごし」と言う意味になります。

「老いの僻耳」などと使います。年を取って耳が遠くなり聞き間違いが多くなったり、僻んで悪く解釈することが多くなるためです。

話が脱線しますが、「耳の遠い老人にも悪口だけはしっかり聞こえる」という話をよく聞きます。これはなぜかと言うと、高齢になると低い音(500Hz)に比べて高い音(2000Hz)が非常に聞き取りにくくなるからです。つまり、普通にしゃべる高い音は聞こえないけれども、小声の低い声で話す悪口は、かえって良く聞こえるというわけです。

2.「耳」が付くことわざ・慣用句

(1)耳を覆うて鐘を盗む

小策を弄して自分を欺き、悪事を働くこと。自分の良心に背くことをしながら、強いてそのことを考えないようにしているたとえです。四字熟語では「掩耳盗鐘(えんじとうしょう)」です。

(2)牛耳る

組織や団体などを自分の意のままに支配すること。「牛耳を執る」とも言います。これは、中国の春秋戦国時代、諸侯が同盟を結ぶ際に、盟主が牛の耳を裂き、皆がその血を吸って組織への忠誠を誓い合ったという「左氏伝(哀公十七年)」の故事に由来します。

(3)耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清めること。世俗の栄達を避けて、自分の行いを清くすることのたとえです。「耳を滌(すす)ぐ」「耳を洗えば牛を引いて帰る」とも言います。これは「史記正義」伯夷伝の次のような故事が由来です。

堯帝から天下を譲ろうと聞かされた許由(きょゆう)は、辞して箕山(きざん)に隠棲したが、再度召されたので、汚れたことを聞いたと頴水(えいすい)で耳を洗った。そこへ堯帝から同じことを言われた巣父(そうほ)が牛を引いて通りかかり、そのような汚れた水を牛に飲ませられないと上流に牛を引いて行ったという。

(4)耳を揃える

必要な金額を過不足なくそろえること。多くは借金の返済時に使われます。

「耳」は頭部の中心から端に位置することから、「パンの耳」と言うように「縁」「へり」を意味します。大判や小判の縁も耳と言ったことから、金銭を過不足なく取り揃えることを「耳を揃える」と言うようになったものです。「札束の端を揃えることが由来」とも言われますが、紙幣が一般に流通する以前から使われている言葉です。

(5)壁に耳あり障子に目あり

こっそり話しているつもりの密談でも、誰かが壁に耳を当てて聞いているかもしれないし、障子に穴を開けて覗き見しているかもしれないことから、隠し事を話す時は注意するべきだということです。

昔見た忍者映画で、忍者が天井裏で、天井板に耳を当てて下の座敷の密談に聞き耳を立てる場面がありました。私が子供のころ、お客さんが来たので両親から「2階に上がっておとなしくしているように」と言いつけられたことがあります。その時、忍者映画を思い出して二階の畳に耳をぴったり押し当てると、1階の座敷でのお客さんと両親との会話が実際にはっきりと聞こえて驚いた記憶があります。

類義語が次のようにたくさんあります。

「石に耳あり」「垣に耳あり」「垣に耳あり徳利に口あり」「天に口あり地に耳あり」「昼には目あり夜には耳あり」「耳は壁をつたう」

英語では「Walls have ears.」と言います。

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