『古事記』に登場する日本の神々の系譜(その2)「国生み」と「神生み」

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大八島国

前に「ギリシャ神話・ローマ神話が西洋文明に及ぼした大きな影響」という記事や、ギリシャ神話に登場する「オリュンポス12神」やその他の男神女神を紹介する記事を書きましたが、日本人としては日本神話である『古事記』や『日本書紀』に登場する神々についても知っておきたいものです。

なお、『古事記』や『日本書紀』については、「古事記は日本最古の歴史書で神話・伝説も多い。日本書紀は海外向け公式歴史書」「古事記の天地開闢神話をわかりやすく紹介!ただし荒唐無稽で矛盾も多い!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

今回はイザナギとイザナミが産んだ日本の島々と神々について、わかりやすくご紹介したいと思います。

1.イザナギとイザナミの「国生み」(国産み)

「国生み(くにうみ)」(国産み)とは、日本神話を構成する神話の一つで、日本の国土創世譚です。国生み神話とも言います。 イザナギとイザナミの二神が高天原(たかまがはら)の神々に命じられ、日本列島を構成する島々を創成した物語です。

イザナギ、イザナミの二神は、漂っていた大地を完成させるよう、「別天津神(ことあまつがみ)」たちに命じられます。別天津神たちは「天沼矛(あめのぬぼこ)」を二神に与えました。イザナギ、イザナミは「天浮橋(あめのうきはし)」に立ち、天沼矛で渾沌とした地上を掻き混ぜます。このとき、矛から滴り落ちたものが積もって「淤能碁呂島(おのごろじま)」となりました。

二神は淤能碁呂島に降り、結婚します。神の中で最初に夫婦になったのが、このイザナギとイザナミです。

ここからこの二神は、「大八島(おおやしま)」(大八洲、大八島国)を構成する島々を生み出していきました。

  1. 淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけのしま、アハヂノホノサワケシマ)→淡路島。
  2. 伊予之二名島(いよのふたなのしま)→四国。
    • 胴体が1つで、顔が4つある。顔のそれぞれの名は以下の通り。
      • 愛比売(えひめ)→伊予国。
      • 飯依比古(いいよりひこ、イヒヨリヒコ)→讃岐国。
      • 大宜都比売(おおげつひめ、オホゲツヒメ)→阿波国(後に食物神としても登場)。
      • 建依別(たけよりわけ)→土佐国。
  3. 隠伎之三子島(おきのみつごのしま)→隠岐島。
    • 別名は天之忍許呂別(あめのおしころわけ)
  4. 筑紫島(つくしのしま)→九州。
    • 胴体が1つで、顔が4つある。顔のそれぞれの名は以下の通り。
      • 白日別(しらひわけ)→筑紫国。
      • 豊日別(とよひわけ)→豊国。
      • 建日向日豊久士比泥別(たけひむかいとよくじひねわけ、タケヒムカヒトヨクジヒネワケ)→肥国。
      • 建日別(たけひわけ)→熊曽国。
  5. 伊伎島(いきのしま)→壱岐島。
    • 別名は天比登都柱(あめのひとつばしら)
  6. 津島(つしま)→対馬。
    • 別名は天之狭手依比売(あめのさでよりひめ)
  7. 佐度島(さどのしま)→佐渡島。
  8. 大倭豊秋津島(おおやまととよあきつしま、オホヤマトトヨアキツシマ)→本州。
    • 別名は天御虚空豊秋津根別(あまつみそらとよあきつねわけ)

以上の八島が最初に生成されたため、日本を「大八島国(おおやしまのくに、オホヤシマノクニ)」と言います。二神は続けて6島を生みます。

  1. 吉備児島(きびのこじま)→児島半島。半島となったのは江戸時代で、それ以前は島でした。
    • 別名は建日方別(たけひかたわけ)
  2. 小豆島(あずきじま、アヅキジマ)→小豆島。
    • 別名は大野手比売(おおぬてひめ、オホヌテヒメ)
  3. 大島(おおしま、オホシマ)→ 屋代島(周防大島)。
    • 別名は大多麻流別(おおたまるわけ、オホタマルワケ)
  4. 女島(ひめじま)→姫島。
    • 別名は天一根(あめのひとつね)
  5. 知訶島(ちかのしま)→五島列島。
    • 別名は天之忍男(あめのおしお、アメノオシヲ)
  6. 両児島(ふたごのしま)→男女群島。
    • 別名は天両屋(あめのふたや)

2.イザナギとイザナミの「神生み」(神生み)

神生み神話

国生みの話の後には「神生み(かみうみ)」(神産み)が続きます。

「大八島国」(大八洲国)やその他の小さな島々を産んだイザナギ・イザナミは次に神々を生みました。ここで生まれた神は「家宅を表す神」および「風の神」「木の神」「野の神」といった自然にまつわる神々です。

  • 大事忍男神(おほことおしをのかみ)→イザナギとイザナミが国生みを終えて神生みの最初に産んだ神
  • 石土毘古神(いはつちびこのかみ)→「家宅六神(かたくろくしん)」の最初の神。岩と土を司る男神。家宅六神は、神道における家宅を表す(または守る)六柱の神の総称
  • 石巣比売神(いはすひめのかみ)→家宅六神の2番目の神。岩と砂を司る女神
  • 大戸日別神(おほとひわけのかみ)→家宅六神の3番目の神。門(戸口)を司る神
  • 天之吹男神(あめのふきおのかみ)→家宅六神の4番目の神。屋上(屋根葺き)を司る男神
  • 大屋毘古神(おほやびこのかみ)→家宅六神の5番目の神。家屋を司る男神
  • 風木津別之忍男神(かざもつわけのおしをのかみ)→家宅六神の6番目の神。風を司る男神
  • 大綿津見神(おほわたつみのかみ)→「ワタツミ・ワダツミ(海神・綿津見)」とは、日本神話の海の神。転じて海や海原そのものを指す場合もあります。戦没学徒兵の遺稿集『きけわだつみのこえ』でも有名ですね。
  • 速秋津比古神(はやあきつひこのかみ)→河口の男神
  • 速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)
    • 速秋津比古神と速秋津比売神は以下の神々を生みました
      • 沫那藝神(あはなぎのかみ)→水面に立つ泡の神
      • 沫那美神(あはなみのかみ)
      • 頬那藝神(つらなぎのかみ)→水面の神
      • 頬那美神(つらなみのかみ)
      • 天之水分神(あめのみくまりのかみ)→分水・分水嶺の神
      • 国之水分神(くにのみくまりのかみ)
      • 天之久比奢母智神(あめのくひざもちのかみ)→瓢(ひさご)・灌漑の神
      • 国之久比奢母智神(くにのくひざもちのかみ)
  • 志那都比古神(しなつひこのかみ)→風を司る神
  • 久久能智神(くくのちのかみ)→木を司る神
  • 大山津見神(おほやまつみのかみ)→山を司る神
  • 鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)→草と野を司る神
    • 大山津見神と鹿屋野比売神は以下の神々を生みました
      • 天之狭土神(あめのさづちのかみ)→山野の土の神
      • 国之狭土神(くにのさづちのかみ)
      • 天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)→山野の霧の神
      • 国之狭霧神(くにのさぎりのかみ)
      • 天之闇戸神(あめのくらどのかみ)→谷間の神
      • 国之闇戸神(くにのくらどのかみ)
      • 大戸惑子神(おほとまとひこのかみ)→迷いの神
      • 大戸惑女神(おほとまとひめのかみ)
  • 鳥之石楠船神(とりのいはくすぶねのかみ)
    • 別名は天鳥船(あめのとりふね)
  • 大宜都比売神(おほげつひめのかみ)
  • 火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ)→火の神
    • 別名は火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)
    • 別名は火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)
    • 火の神・迦具土神を出産したとき女陰が焼け、イザナミは病気になりました。病に苦しむイザナミの吐瀉物などから次々と神が生まれました。
      • 金山毘古神(かなやまびこのかみ、イザナミの吐瀉物から生まれる)→鉱山の神
      • 金山毘売神(かなやまびめのかみ、イザナミの吐瀉物から生まれる)
      • 波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ、イザナミの大便から生まれる)→粘土の神
      • 波邇夜須毘売神(はにやすびめのかみ、イザナミの大便から生まれる)
      • 彌都波能売神(みつはのめのかみ、イザナミの尿から生まれる)→用水の神
      • 和久産巣日神(わくむすひのかみ、イザナミの尿から生まれる)→農業生産の神
        • 和久産巣日神には以下の一柱の子がいます。
          • 豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)→食物・穀物の女神