日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.四方山話(よもやまばなし)
「四方山話」とは、「種々雑多な話題の話。いろいろな話。世間話」のことです。
「よもやま(四方山)」に「山」と付くのは、「やも」が「やま」に変化した後に当てられたもので、「よもやも(四方八方・四面八面)」の音変化と考えられます。
よもやまは「四方八方」の意味から、「あちこち」「さまざま」「いろいろ」「世間」などの意味になり、そのような話題の話を「四方山話」というようになりました。
なお、四方山には「四方にある山」の意味もあります。
この意味においては、「よもやも」の音変化ではなく、そのまま「四方(よも)の山(やま)」です。
2.黄泉(よみ)
「黄泉」とは、「死者の魂が行くとされるところ。冥土。冥府。あの世」です。
古代中国では、死者が行く地下の世界を「地下の泉」の意味で、「黄泉(こうせん)」といいました。
「黄」は五行思想で「土」を象徴することから、「地下」を表しています。
日本では大和言葉の「よみ」を漢語の「黄泉」に当てているため、語源は異なります。
古くは、「よみ」を「ヨモツクニ(よみのくにの意)」といいました。
「ヨモ(よみ)」の語源には、「ヨミ(夜見)」や「ヤミ(闇)」の意味。
梵語「Yami」、中国語「預弥(ヨミ)」から「閻魔」の意味。
「ヨモ(四方)」の意味からや、「ヤマ(山)」など諸説あります。
あの世が地下にあるとするならば、「夜見」や「闇」の説が妥当です。
しかし、『古事記』では雷神が登場し、地上にある世界のように表されていることから、「山」の説も考えられます。
3.横紙破り(よこがみやぶり)
「横紙破り」とは、「道理に合わない物事を無理に押し通すこと。また、そのような人」です。
横紙破りの「紙」は、「和紙」のことです。
和紙は縦に漉き目が通っていて、横には破りにくい特徴があります。
それを無理に破るようなものとたとえ、無理に押し通そうとすることを「横紙破り」と言うようになりました。
4.横車を押す(よこぐるまをおす)
「横車を押す」とは、「道理に合わないこと、理屈に合わないことを無理に押し通す」ことです。
本来は「横に車を押す」と言いました。
前後に動く車を横に押そうとしても、簡単に動くものではないことから、理不尽なことを強引にすることを「横に車を押す」や「横車を押す」と言うようになりました。
名詞形は「横車」です。
5.縁/因/便(よすが)
「よすが」とは、「身や心を寄せて頼りとするところ。頼みとする人」のことです。身寄り。手がかり。よるべ。
よすがは、「寄せるところ」を意味する「寄す処(よすか)」に由来し、古くは「よすか」と清音でした。
身や心を寄せるところは、頼りにするところでもあるため、頼みとする人も「よすが」と言うようになりました。
6.蓬(よもぎ)
「よもぎ」とは、「山野に生えるキク科の多年草」です。葉は羽状の切れ込みがあり、裏面に白い毛があります。若葉は餅につき込んで草餅に、成長した葉は灸に用いるもぐさにします。餅草。
よもぎの「よ」は「ますます」を意味する「いや・いよ(弥)」、もしくは「よく(善)」の意味です。
「も」は「萌える」か「燃える」の意味で、「ぎ(き)」は茎のある立ち草の意味です。
つまり、よもぎの語源は「いよいよ萌え茂った草」か「よく燃える草」の意味からです。
「もぐさ」の語源が「燃え草」にあるため、よもぎの語源も「よく燃える草」の説ととることも出来ます。
しかし、自然な状態から考えれば、その旺盛な繁殖力から「いよいよ萌え茂った草」の意味の方が妥当です。
よもぎは香りが強いことから邪気を祓うものとされ、古く、5月5日の端午の節句にはショウブと共に軒にさしたり、くす玉にしました。
「蓬」は春の季語で、次のような俳句があります。
・裏門の 寺に逢着す 蓬かな (与謝蕪村)
・餅になる 蓬や麻の 手もからず(横井也有)
・吹くからに ひれふす風の 蓬摘む(川端茅舎)
・春雷や うす日来てゐる 蓬原(原石鼎)
7.ヨーグルト/yogurt
「ヨーグルト」とは、「牛乳・羊乳などに乳酸菌や酵母を加えて発酵させ、クリーム状や液状にした食品」です。
ヨーグルトは、古いトルコ語で「攪拌する」「濃厚にする」を意味する「yoğurmak」に由来します。
「yoğurmak」から「yoğurt(ヨウルト)」になり、英語の「yogurt(yoghurt)」を経て、日本語で「ヨーグルト」となりました。
ヨーグルトの歴史は古く、紀元前2000年紀には、エジプトやバビロニアで、同様の食べ物や飲み物があった記録が残っています。
19世紀末、ロシア出身の細菌学者イリヤ・メチニコフが、ブルガリアで100歳以上の老人が多いのは、ヨーグルトを常食しているからであると発表し、世界中に広まりました。