前に「猫が付く熟語」「犬が付く熟語」「豚が付く熟語」についての記事を書きましたが、牛が付く言葉もたくさんあります。
そこで今回は「牛が付く熟語」をご紹介したいと思います。
1.前に「牛」が付く熟語
・牛膝(いのこずち)
ヒユ科の多年草。草地などに生え、高さ約90センチ。対生する枝を出し、太い節を持ちます。葉は楕円形。夏から秋、緑色の小花を穂状に付けます。実にはとげがあり、衣服や動物の体に付いて散らばります。
乾燥した根を漢方で牛膝 (ごしつ) といい、利尿剤にします。ふしだか。こまのひざ。
・牛虻(うしあぶ)
アブ科の昆虫。体長約2.5センチ。体は扁平で灰黒色。牛や馬の血を吸います。幼虫は湿地に生活しミミズなどを捕食。近縁のアカウシアブを含めていうこともあります。
・牛市(うしいち)
牛を売買する市
・牛追(うしおい)
荷物をつけた牛を後ろから追って歩かせること。また、その人。
なお、スペインやラテンアメリカの多くの村やいくつかの都市での祝祭の一つ「エンシエロ」(牡牛の群れの前を人間が走る伝統的な祭り)(下の写真)も、日本語で「牛追い」や「牛追い祭」と呼ばれています。
・牛飼い(うしかい)
牛を飼う人。また、使う人。
・牛海綿状脳症(うしかいめんじょうのうしょう)
脳の中に空洞ができる牛の感染症の一つ。BSE。狂牛病。
・牛方(うしかた)
牛を使って荷物を運ぶことを生業とする人。
・牛蛙(うしがえる)
カエル目アカガエル科のカエルの一種。北米原産で大型。夜行性で牛に似た鳴き声で鳴きます。食用蛙とも呼ばれます。
・牛車(うしぐるま/ぎゅうしゃ)
牛が引く荷車
・牛偏(うしへん)
漢字の部首の一つ。「物」や「特」などの「牛」の部分。
・牛津(オックスフォード)Oxford
この地名の「Ox」は「雄牛」で「ford」は「浅瀬」という意味です。「津」は「渡船場、船着き場」という意味なので、「牛津」と表記することにしたものです。
ちなみに、日本の佐賀県にも「牛津」という地名があります。なお、2005年に小城町・三日月町・牛津町・芦刈町の4町が合併して小城市となり、自治体としての「牛津町」は消滅ました。
・牛車(ぎっしゃ)
牛が引く車。平安時代の高位の人が乗る乗り物で、多くは豪華な装飾が施されています。御所車(ごしょぐるま)。
・牛飲(ぎゅういん)
牛が水を飲むように、酒などをがぶがぶ飲むこと。鯨飲 (げいいん) 。
・牛疫(ぎゅうえき)
牛疫ウイルスの感染を原因とする偶蹄類の感染症。「家畜伝染病予防法」における法定伝染病。
・牛革/牛皮(ぎゅうかわ)
牛の皮のこと。 「皮革(ひかく)」は牛も含めた動物の皮全般を指します。 牛革と皮革をあわせて「本革(ほんかわ/ほんがわ)」(天然皮革)と呼びます。 反対語は「合皮(ごうひ)」(合成皮革)です。
・牛缶(ぎゅうかん)
牛肉の「大和煮(やまとに)」(獣肉の調理法、およびその方法で調理された料理。砂糖・醤油や生姜などの香辛料で濃く味付けをした煮物)のこと。
牛肉大和煮は大日本帝国陸軍では「牛缶」と呼ばれ、携帯食糧として将兵らに人気のあるメニューであり、日清及び日露戦争時には戦時のために大和煮缶詰の材料にするため牛が足りなくなったこともあるそうです。
・牛脂(ぎゅうし)
牛の脂肪を精製したもの。食用にしたり、石鹸やろうそくなどの材料にしたりします。ヘット。
・牛舎(ぎゅうしゃ)
牛を飼育するための建物。
・牛耳(ぎゅうじ)
牛の耳
・牛宿(ぎゅうしゅく)
和名は稲見星(いなみぼし)。「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」(*)の一つで北方玄武七宿の第二宿。「距星(きょせい)」(二十八宿の各宿の基準点となる星)はやぎ座β星。
主体となる星官(星座)の牛は、やぎ座β、α2、ξ、π、ο、ρの6つの星からなります。
(*)「二十八宿」とは、天球を28のエリア(星宿)に不均等分割したもので、中国の天文学・占星術で用いられました。「二十八舎(にじゅうはっしゃ)」とも言います。またその区分の基準となった天の赤道付近の28の星座(中国では星官・天官と言いました)のこと。
吉祥宿なので何事にも用いて吉、特に午の刻(11時から13時)が大吉祥とされます。
・牛刀(ぎゅうとう)
牛を解体するための包丁。先が尖っています。
・牛痘(ぎゅうとう)
牛痘ウイルス感染を原因とする感染症。
・牛丼(ぎゅうどん)
丼に盛った白米に、薄切りの牛肉と玉葱などを醤油や砂糖などで煮たものを汁ごと乗せた料理。
・牛鍋(ぎゅうなべ)
牛肉と白滝、豆腐、葱などを醤油や砂糖などで煮た料理。「鋤焼き(すきやき)」の昔の名称です。
・牛肉(ぎゅうにく)
牛の肉。特に食品としてのものを言います。
・牛乳(ぎゅうにゅう)
牛から絞った乳。バターやチーズなどの原料になります。ミルク。
・牛馬(ぎゅうば)
牛と馬
・牛糞(ぎゅうふん)
牛の糞
・牛歩(ぎゅうほ)
牛のようにゆっくりとした歩み。また、物事が順調に進まない様子。かつて国会で、社会党などの野党による「牛歩戦術」(下の写真)がよく見られましたね。
・牛酪(ぎゅうらく)
バターのこと。
・牛蒡(ごぼう)
キク目キク科ゴボウ属の多年生植物。夏に紫色の花が咲き、細長い根を食用にします。
西洋では、ごぼうの若葉をサラダに使うことはありますが、根を食材とするのは日本と韓国くらいと言われます。
余談ですが太平洋戦争中、苦労して採ってきたごぼうをアメリカ人捕虜に食べさせたところ、捕虜は木の根を食べさせられたと勘違いしたという話もあります。
2.後に「牛」が付く熟語
・飴牛/黄牛(あめうし)
飴色の牛。古く、立派な牛とされました。
・海牛(うみうし)
裸鰓(らさい)類の軟体動物の総称。巻き貝の仲間ですが、貝殻は退化しています。浅い海の岩礁や海底にすみ、頭部に二本の触覚を持っています。
・役牛(えきぎゅう)
肉牛や乳牛とは違い、運搬や農耕などの力仕事に使う牛。
・牡牛/雄牛(おうし)
性別が男にあたる牛。おすの牛。
・蝸牛(かたつむり/かぎゅう)
陸上に生息する貝類の総称。なめくじのような体に巻貝を背負っており、雌雄同体。まいまい。でんでんむし。
・天牛(かみきりむし/てんぎゅう)
甲虫目カミキリムシ科の昆虫の総称。体は細く、長い触角を持ち、頑丈で鋭い大あごを持っています。幼虫は鉄砲虫(てっぽうむし)と呼ばれ、樹木の材部に食い入る害虫です。種類が多く、日本でも約700種が知られています。
カミキリムシの長い触角を「牛の角」になぞらえたのが「天牛」という漢字表記の由来です。
・九牛(きゅうぎゅう)
9頭の牛。また、多くの牛。
・牽牛(けんぎゅう)
わし座で最も明るい星であるアルタイルの別称。彦星。
・耕牛(こうぎゅう)
田畑を耕すのに使う牛。
・仔牛/子牛(こうし)
牛の子。
・水牛(すいぎゅう)
ウシ目ウシ科の動物の一種。東南アジアの水辺に住み、水浴びを好みます。体は黒く、三日月形の大きな角を持っています。家畜として飼い、田畑の耕作などで使います。
・種牛(たねうし)
繁殖や改良のために飼う雄の牛。
・闘牛(とうぎゅう)
牛と牛、または牛と闘牛士 、牛と犬 が戦う競技、あるいはその競技に用いる牛のこと。
闘牛と言えばスペインが有名ですが、日本でも昔から行われてきました。
牛と牛が戦う競技は、闘牛のほかに、牛相撲、牛突き、牛の角突き、牛合わせなどと呼ばれ、 岩手県 久慈市 、 新潟県 二十村郷( 長岡市 、 小千谷市 など)、 島根県 隠岐島 、 愛媛県 宇和島市 、 鹿児島県 徳之島 、 沖縄県 沖縄本島 ( うるま市 、 本部町 、 今帰仁村 、 読谷村 など)、 石垣島 などで行われています。
なお、闘牛はスペイン語では「コリーダ:Corrida de toros」(牛の走り、la corridaのみでも闘牛を指す)と言います。
余談ですが、「コリーダ」は大島渚監督・脚本による日仏合作映画「愛のコリーダ」のタイトルにも使われていますね。
・肉牛(にくぎゅう)
食用のために飼われる牛。
・乳牛(にゅうぎゅう)
乳を取るために飼育する牛。
・牧牛(ぼくぎゅう)
牛を放し飼いにすること。また、その牛。
・野牛(やぎゅう)
①家畜の牛と水牛を除いた、野生の牛の総称。
②ウシ科バイソン属の哺乳類動物の総称。群れをつくる、大型の草食動物。頭部から肩にかけて長い体毛で覆われており、背中が盛り上がっている。生息数が減少しているため、北アメリカやヨーロッパなどで保護されています。
・和牛(わぎゅう)
明治時代以前からの日本在来の牛をもとに、日本国外の品種の牛と交配して作られた品種群のこと。 具体的には 黒毛和種 ・ 褐毛和種 ・ 日本短角種 ・ 無角和種 の4品種を指します。
3.「牛」が付く四字熟語
・汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)
蔵書がきわめて多いことのたとえ。
本が非常に多く、牛車に乗せて運べば牛も汗をかき、家の中に積み上げれば棟木に届くほど量になるの意から。
・牛飲馬食(ぎゅういんばしょく)
大いに飲み食いをすること。また、人並み以上にむやみに飲み食いすること。牛が水を飲むように、また、馬がまぐさを食べるようにたくさん飲食する意から。
・牛鬼蛇神(ぎゅうきだしん)
①妖怪や鬼神。もとは怪しげでとりとめがなく、幻のような作風・作品のたとえ。
②どうにも奇妙でしまりがないさま。
③邪(よこしま)なことをする様々な悪人のたとえ。
④容貌の醜いたとえ。
「牛鬼」は頭が牛の形をした鬼神・怪物のこと。転じて、容姿が醜いたとえ。「蛇神」は顔が人で身体が蛇の姿をした神。
・牛驥同皁(ぎゅうきどうそう)
賢者が愚者と同一の待遇を受けるたとえ。賢者が粗末に扱われるたとえ。また、賢者と凡人が混じるたとえ。
足ののろい牛と一日に千里を走る駿馬(しゅんめ)が、一緒の飼い葉桶の餌を食べる意から。また、牛馬と飼い葉桶を同じくして養われる意から。
「驥」は一日に千里走ることのできる駿馬。「皁」は飼い葉桶の意。
「牛驥皁を同じうす」と訓読します。
・九牛一毛(きゅうぎゅうのいちもう)
多くの中の、きわめてわずかな部分のたとえ。また、きわめて些細で取るに足りないことのたとえ。多くの牛に生えたたくさんの毛の中の一本の意から。
「九牛」は多くの牛。「九」は数が多いことを言います。略して「九牛毛」とも言います。
・牛溲馬勃(ぎゅうしゅうばぼつ)
くだらないもの、役に立たないもののたとえ。
「牛溲」は、牛の小便。「馬勃」は、馬の糞。また一説には、「牛溲」はオオバコ(多年草で、利尿効果があるため安価な薬草として使われる)、「馬勃」はホコリダケ(キノコの一種で、こちらも安価な薬草で、できものに効くとされる)と言われます。いずれにしても、ささいで役に立たないものの意から。
・牛刀割鶏(ぎゅうとうかっけい)
取るに足りない小さなことを処理するのに、大げさな方法を用いるたとえ。小さな物事を裁くのに、大人物や大げさな方法・手段などは必要ないということ。また、それらを戒めた語。
鶏をさばくのに牛を切る大きな包丁を用いる意から。
「牛刀もて鶏を割(さ)く」と訓読します。また「割鶏牛刀(かっけいぎゅうとう)」とも言います。
・牛頭馬頭(ごずめず)
地獄にいるという獄卒(地獄で罪人を責めさいなむ鬼)のこと。また、地獄の獄卒のように情け容赦のない人のこと。
仏教語。獄卒は頭が牛や馬の形で、体は人間の形をしていることから。
上の写真は、東京藝術大学の学園祭「藝祭2019」で使用された「牛頭馬頭御輿」です。