最近の日本は「キャンセル・カルチャー」や「正義の暴走」が目立つ不寛容社会。

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キャンセルカルチャー

<2022/9/12追記>香川照之氏の「銀座クラブで性的加害」報道について

8月24日、『デイリー新潮』は、俳優の香川照之が2019年7月に銀座のクラブでホステスに 「性加害」 (和解済み)をおこなったと報じました。その結果、大バッシングが起きてCMや番組降板・打ち切りが相次ぎました。NHKのEテレ「昆虫すごいぜ」も、昆虫好きの私はよく見ていましたので、放送打ち切りは残念です。

良い役者さんだけに、週刊誌の悪意や手のひらを返したような「世評リスク回避優先」のスポンサー企業やテレビ局の冷酷さも感じます。

最近、「東京五輪2020」関連だけでも、大会組織委員会会長だった森元首相、演出統括役だった佐々木宏氏、開閉会式の音楽制作担当だった小山田圭吾氏、開会式演出担当だった小林賢太郎氏らが、過去の言動などを批判されて辞任・解任される異常事態が続きました。

またコロナ禍の中で、「謎対策・過剰対策」や「自粛警察」のような行き過ぎた行動や批判も目立つようになってきました。

このような最近の日本社会の風潮は、「キャンセル・カルチャー」や「正義の暴走」が目立つ「不寛容社会」だと私は思います。

この異常な状態は、「思考停止」していると異常と思わなくなるので注意が必要です。

かつて中国で毛沢東主席による「文化大革命」の嵐が吹き荒れた頃、毛沢東主席に批判的な人々が「自己批判」という名のもとに、多くの人々の前で吊るし上げられ、反省させられる光景をよく目にしました。何だかこれと似ているような気がします。

文化大革命

1.キャンセル・カルチャーとは

キャンセル・カルチャー(cancel culture)」とは、「特定の人物を集団で責めること」です。

具体的には、「著名人をはじめとした特定の対象の発言や行動を糾弾し、不買運動を起こしたり放送中の番組を中止させたりすること」で、その対象を排除しようとする動きのことです。

キャンセル・カルチャーは、アメリカなどを中心に2010年代中頃から見られるようになりました。

これは、他者の過ちを徹底的に糾弾するコールアウト・カルチャー(call-out culture)の一種です。「You are cancelled(あなたは用無しだ)」と言って相手を切り捨てる、いわばボイコットのような現象です。

「コールアウト・カルチャー」は、もともと「晒(さらし)」の形式の一つで、「あるコミュニティの成員が犯した悪事を特定し、その人物を公的に呼び出して、恥じ入らせたり罰したりする行為のこと」です。

「コールアウト・カルチャー」は「アウトレイジ・カルチャー(outrage culture)」とも呼ばれます。「アウトレイジ」とは、激怒・暴力・非道な行為という意味です。

2.正義の暴走とノイジー・マイノリティー

正義の暴走」とは、「行き過ぎた正義の鉄槌のような行動をしている人やその行動のこと」を指す言葉で、「正義感の暴走」とも呼ばれます。

「自粛警察」や、「テラスハウスTOKYO 2019-2020」というテレビ番組に出演したプロレスラー木村花さんが、SNS上で執拗な批判を浴びて自殺した事件などが典型的な例です。

一方、「ノイジー・マイノリティ(noisy minority)(声高な少数派)の行動も、最近の日本社会で気になる風潮です。

ノイジー・マイノリティの声によって、本来多数派であるはずの声(サイレント・マジョリティ)や、サイレントな社会的少数者の声が届かなくなり、「ノイジー・マイノリティの声が、多数意見や社会的少数者の総意であるかのように錯覚する(あるいは錯覚させる)現象」が起きます。

また、ノイジー・マイノリティの主張が発信され続け認識され続けると、「同調現象・認知バイアス」によってその主張が大衆の総意と認識されるようになり、「ノイジー・マイノリティがやがてノイジー・マジョリティ化する」という奇妙な現象が起きます。

3.不寛容社会とは

不寛容社会」というのは、「みんなが他人を許すことができず、怒っている社会のこと」です。社会を構成するみんなが、いつも自分以外の誰かや何かに対して、無意識のうちに苛立ちや怒りの感情を抱いている状態です。

現在、日本社会が「不寛容社会」になっている背景としては、一般には次のような原因が挙げられています。

①怒りの刺激を求める人の増加

②マスコミとSNSによる怒りの増幅と拡散

③時代の変化による感情を抑制できない人の増加

私は、このような「過剰批判社会」になった大きな原因は、フライデーなどの写真週刊誌や週刊文春や週刊新潮などの週刊誌による記事と、それを各テレビ局の「情報バラエティー番組」がこぞって取り上げて「煽り立てる」ことだと思います。

テレビは今や「タブロイド紙」か「ゴシップ新聞」のようになっています。かつて評論家の大宅壮一がテレビを「低俗な一億総白痴化のマスメディア」と喝破しましたが、このような状況も予見していたのかもしれません。

もう一つの原因は、週刊誌やテレビによる「煽り立て」に加えて、政治的・経済的な閉塞感と目まぐるしく変化する社会の中で、現代日本人が多くのストレスを抱えて精神的に「ゆとりをなくしていること」だと思います。

過剰な怒りの感情を抑え、「心の平安」(peace of mind)を保つことは、個々人の精神衛生上大変重要なことだと思います。

前に「深呼吸して気持ちを落ち着ける」という記事を書きましたので、参考にして頂ければ幸いです。

4.開会式演出担当だった小林賢太郎氏の解任は中山防衛副大臣の軽率な行動がきっかけ

小山田圭吾氏が学生時代に行った度を越したいじめに関して自ら語った過去のインタビュー記事が、五輪開幕直前になってSNS上で拡散されたのは、正義感からというよりも、「五輪開催に反対する人々による嫌がらせ・悪意」を感じます。

しかし、小林賢太郎氏の「ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)をネタにした過去のコント」が明るみに出て、ユダヤ人団体から抗議声明が出されたきっかけは、中山泰秀防衛副大臣の軽率な行動です。

SNSのフォロアーからこの情報を得た中山副大臣が、大会組織委員会や菅首相などと相談することなく知り合いのユダヤ人団体にすぐ連絡したというのですから、「ガバナンス無視、国益無視も甚だしい軽率な行動」です。

本来は「元芸人による不適切なコントネタ」に過ぎないものなのに、大会組織委員会や菅首相に連絡・相談する前にユダヤ人団体に連絡すれば、大袈裟な騒ぎになって日本が国際的な批判を浴びることくらいわかりそうなものだと思うのですが・・・

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