広島と長崎への原爆投下は国際法違反ではないか?その戦争責任は?

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長崎原爆投下

アメリカ軍が1945年8月6日に広島に原子爆弾(原爆)を投下し、続いて8月9日には長崎に原爆を投下して、日本は8月14日に「ポツダム宣言」を受諾し、8月15日に終戦を迎えました。

広島と長崎への原爆投下の本当の理由」については、前に記事に書きました。

ところでこの原爆投下は、軍人や軍事施設を標的にしたものではなく、多数の無辜(むこ)の一般市民を殺戮したもので、国際法違反と思われますが、その戦争責任はどうなったのでしょうか?

エノラ・ゲイ

1.「極東国際軍事裁判」は勝者による一方的な裁判

勝者による一方的な裁判である「極東国際軍事裁判」(東京裁判)が1946年から1948年にかけて連合国によって行われ、「戦争中に起きた犯罪」や「戦争責任」が裁かれました。

そして当時首相だった東条英機などが「A級戦犯」として処刑されました。

この「東京裁判」で東郷茂徳と梅津美治郎の弁護人を務めたアメリカ陸軍軍人で法律家のベン・ブルース・ブレイクニー(1908年~1963年)は次のように述べています。

「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪になるならば、我々は広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。投下を計画した参謀長の名も承知している。その国の元首の名前も承知している。彼らは殺人罪を意識していたか?してはいまい。我々もそう思う。それは彼らの戦闘行為が正義で、敵の行為が不正義だからではなく、戦争自体が犯罪ではないからである。何の罪科でいかなる証拠で戦争による殺人が違法なのか。原爆を投下した者がいる。この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認した者がいる。その者達が裁いているのだ。彼らも殺人者ではないか?」

つまり、戦争は国家の行為であって個人の行為ではない。よって個人の責任を裁くのは誤っているという論法です。

また次のようにも述べています。

「戦争は犯罪ではない。戦争法規があることが戦争の合法性を示す証拠である。戦争の開始、通告、戦闘の方法、終結を決める法規も戦争自体が非合法なら全く無意味である。国際法は、国家利益追求のために行う戦争をこれまでに非合法とみなしたことはない。」

「歴史を振り返ってみても、戦争の計画、遂行が法廷において犯罪として裁かれた例はない。我々は、この裁判で新しい法律を打ち立てようとする検察側の抱負を承知している。しかし、そういう試みこそが新しくより高い法の実現を妨げるのではないか?『平和に対する罪』と名付けられた訴因は、故に当法廷より却下されねばならない。」

「国家の行為である戦争の個人責任を問うことは、法律的に誤りである。何故ならば、国際法は国家に対して適用されるものであって、個人に対してではない。個人による戦争行為という新しい犯罪をこの法廷で裁くのは誤りである。戦争での殺人は罪にならない。それは殺人罪ではない。戦争が合法的だからである。つまり合法的人殺しである殺人行為の正当化である。たとえ嫌悪すべき行為でも、犯罪としてその責任は問われなかった。」

極東国際軍事裁判

2.原爆投下の国際法違反と戦争責任

長崎原爆被災地原爆で弟を亡くした少年

(1)原爆投下は国際法違反

国際法(戦時国際法・国際人道法)は、原則として「非戦闘員や非軍事施設への攻撃を禁止」(軍事目標主義)しています。

また、「不必要な苦痛を与える兵器の使用を禁止」しています。

原爆投下は、明らかに上記二つの禁止事項のどちらにも違反する「国際法違反」です。

(2)日本政府からアメリカ政府に対する抗議

日本政府は1945年8月10日、広島と長崎への原爆投下に関して「米機の新型爆弾に依る攻撃に対する抗議文」と題して、アメリカ政府に対し次のような通知を送りました。

 米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三に亘り毒瓦斯乃至其の他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の輿論に依り不法とせられ居れりとし対手国側に於て先づ之を使用せざる限り之を使用することなかるべき旨声明したるが米国が今回使用したる本件爆弾は其の性能の無差別且残虐性に於て従来斯る性能を有するが故に使用を禁止せられ居る毒瓦斯其の他の兵器を遥に凌駕し居れり。米国は国際法及人道の根本原則を無視して既に広範囲に亘り帝国の諸都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社、仏閣、学校、病院、一般民家等を倒壊又は焼失せしめたり。而して今や新規にして且従来の如何なる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性、残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新なる罪悪なり。帝国政府は茲に自らの名に於て且又全人類及文明の名に於て米国政府を糾弾すると共に即時斯る非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す。

(3)原爆裁判(下田事件)

この原爆投下の「国際法違反の戦争責任」については、1955年4月に広島と長崎の原爆被害者が国(日本)を被告とする裁判でも認定されました。

この裁判は「原爆裁判」と呼ばれていますが、原告の一人下田隆一氏の名前にちなんで「下田事件」とも言われます。

請求の趣旨は、「原爆投下による精神的損害に対する慰謝料(数十万円)を支払え」というものです。

請求の原因は、「米軍の原爆投下は、国際法に違反する不法行為である。したがって、原爆被害者は米国に対して損害賠償請求権がある。その倍賞請求権をサンフランシスコ講和条約によって放棄してしまった日本政府は、原爆被害者に補償・賠償すべきである」というものです。

1963年12月、東京地裁は原告の請求を棄却しましたが、「米軍の広島・長崎への原爆投下は国際法に違反する」と判示しました。

この裁判において、日本政府はアメリカ政府の公式見解を代弁するような次のような主張をしました。原爆についての政府の認識が、1945年8月10日の抗議文とは180度変わっています。

 原子爆弾の使用は日本の降伏を早め、戦争を継続することによって生ずる交戦国双方の人命殺傷を防止する結果をもたらした。

かような事情を客観的にみれば、広島長崎両市に対する原子爆弾の投下が国際法違反であるかどうかは、何人も結論を下し難い。

(4)原爆投下の是非をめぐる世論調査の推移

広島と長崎への原爆投下から70年に当たる2015年1~2月に、アメリカの大手民間調査機関ピュー・リサーチ・センターが実施した世論調査では、アメリカ人の56%が今も日本への原爆投下を「正当」とし、「不当」は34%にとどまりました。なお「正当」としたのは、年齢別では、65歳以上で70%でしたが、18~29歳では47%にとどまりました。一方、日本人は14%のみが「正当」と回答し、79%が「不当」と答えました。

しかし、アメリカ人が日本への原爆投下を正当化する見方は徐々に減っています。

アメリカの世論調査会社のギャラップが原爆投下直後の1945年に行った調査によると、当時はアメリカ人の85%が原爆投下を支持しました。

また、アメリカ・ミシガン州の「デトロイト・フリープレス」紙が1991年に日本とアメリカの両国で行った調査によると、アメリカ人の63%が原爆投下を正当化する一方、29%が不当と答えました。

イギリスの世論調査会社のユーガブが2015年7月に行った調査では、アメリカ人の46%が日本への原爆投下を「正しい」と答え、29%が「誤り」と回答しました。

しかし若い世代では、原爆投下を批判する見方が強く、18~29歳と30~44歳の年齢層では、原爆投下を「誤り」とする回答がそれぞれ45%、36%を占め、「正しい」とする回答はそれぞれ31%、33%でした。

(5)原爆投下の国際法違反や戦争責任が日本であまり議論されない理由

①GHQの「WGIP」という日本人洗脳プログラム

WGIP

日本人の国民性の一つである「変わり身の早さ」や「同調圧力」「諦め」もあるかもしれませんが、GHQの「WGIP」という「日本人洗脳プログラム」の影響が大きいのではないかと私は思います。

この「WGIP」は、日本人の愛国心やアメリカに対する反抗心を弱体化・無力化させ、骨抜きにして占領を円滑に進めるため、「戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための宣伝計画」である「WGIP(War Guilt Information Program)」という政策です。

要するに「原爆を平和にすり替えた宣伝工作」です。

この政策がマスメディアを通じて浸透したことによって、国民も「思考停止・判断停止に陥り、洗脳されてしまったというわけです。

②中国・ロシア・北朝鮮の脅威と強固な日米同盟

今や日本にとって脅威となっているのは、尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す中国や、北方領土の不法占拠を続けるロシア、ミサイル発射を繰り返し核開発をやめない北朝鮮です。

日本の安全保障にとって強固な日米同盟は命綱のようなものです。今更アメリカの原爆投下の国際法違反や戦争責任を追及しても詮無いことであり、日米同盟の亀裂はむしろ中国・ロシア・北朝鮮に利するだけだからです。

(6)原爆投下に関する昭和天皇の発言

昭和天皇は、1975/10/31の日本記者クラブ主催の公式記者会見で、広島の原爆被災について聞かれ次のように答えました。

なお、この昭和天皇の発言は当然ながら被爆者団体から抗議を受けました。

原子爆弾が投下されたことに対しては遺憾には思っていますが、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民に対しては気の毒であるが、やむを得ないことと私は思っています

1975年の昭和天皇記者会見



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