皆さんは「国字」という日本で独自に生み出された漢字をご存知でしょうか?
一例をあげると、2021年7月26日、東京五輪2020のスケートボードで、日本最年少金メダリスト(13歳)になった西矢椛さんの「椛(もみじ)」が国字です。
1.国字とは
「国字(こくじ)」とは、「日本で独自に作られた漢字」のことで、「和字」「和製漢字」「倭字(わじ)」「皇朝造字」などとも呼ばれます。広義では「中国以外の国で作られた独自の漢字体の文字」で、「方言文字」「職域文字」「個人文字」や「仮名合字」も含みます。
学者によって定義・解釈が異なり、調査が不十分であるなどの理由から、国字とされる文字にも疑義のある場合が多く、逆に文献・文書の調査が不十分なため洩れている文字も多いとされています。
国字かどうかの判断は辞書・辞典によって異なり、明確に定義されてはいません。
「会意(かいい)」に倣って作られる場合が多いようです。
ちなみに「会意」とは、「既成の象形文字または指事文字を組み合わせることです。
新井白石(1657年~1725年)は、「同文通考」で81字を取り上げて国字とし、伴直方(ばんなおかた)(1789年~1842年)は、「国字考」で126字をあげています。
2.国字が作られた理由
漢字は1世紀頃の弥生時代に日本に伝来したとされていますが、本格的な漢字の伝来は4世紀~5世紀頃で、朝鮮半島経由で日本に伝えられたようです。
漢字が伝来する以前から日本語や日本文化はありましたので、中国には見られない動植物の名前や、日本独自の文化にまつわる言葉で、中国にある漢字では代用できないものについては、日本独自の国字が作られることになったのです。
日本人は中国発祥の漢字を元に、「片仮名」「平仮名」「訓点」を発明し、「国字」も作って日本独特の漢字文化を完成しました。
3.国字の具体例
主として「訓読みのみ」ですが、「訓読みと音読みがある国字」や「音読みのみの国字」もあります。
(1)古来日本で作られた国字
①あ行
圷(あくつ)・塰(あま)・艠(いかだ)・鰯(いわし)・鯎(うぐい)・褜(えな)・蛯(えび)・魞(えり)・俤(おもかげ)・颪(おろし)
②か行
餝(かざり)・樫(かし)・鮖(かじか)・鎹、銯(かすがい)・鯑(かずのこ)・桛(かせ)・楿(かつら)・叺(かます)・裃(かみしも)・鱚(きす)・喰(くう、くらう)・椚、椢、椡(くぬぎ)・粂(くめ)・俥(くるま)糀(こうじ)・凩(こがらし)・鮗(このしろ)・鞐(こはぜ)・込(こめる、こむ)・怺(こらえる)
③さ行
榊(さかき)・笹(ささ)・扨(さて)・鴫(しぎ)・梻(しきみ)・雫(しずく)・躾(しつけ)・〆、乄(しめ)・鯱(しゃちほこ、しゃち)・杦、椙(すぎ)・辷る(すべる)・杣(そま)・艝、轌(そり)
④た行
凧(たこ)・襷(たすき)・椨(たぶのき、たぶ)・閊(つかえ、つかえる)・鶫(つぐみ)・辻(つじ)・褄(つま)・峠(とうげ)・栃、杤(とち)・魹(とど)・鞆(とも)
⑤な行
凪(なぎ)・屶(なた)・鳰(にお)・匂(におい、におう)・垈(ぬた)
⑥は行
萩(はぎ)・硲(はざま)・籏(はた)・畑、畠(はたけ)・鱩(はたはた)・噺(はなし)・稗(ひえ)・梺(ふもと)・塀(へい)・袰(ほろ)
⑦ま行
柾(まさき、まさ)・桝、枡(ます)・俣(また)・麿(まろ)・毟、挘(むしる)・杢(もく)・籾(もみ)・椛(もみじ)・匁(もんめ、め)
⑧や行
軈(やがて)・萢(やち)・鑓(やり)・裄(ゆき)
⑨わ行
枠(わく)
(2)西洋文明の影響で近代に作られた国字
瓩(キログラム)・粁(キロメートル)・竏(キロリットル)・糎(センチメートル)・膣(ちつ)・瓰(デシグラム)・噸(トン)・呎(フィート)・瓱(ミリグラム)・竓(ミリリットル)
(3)訓読みと音読みがある国字
簓(ささら/セン)纐(しぼり/コウ)・搾(しぼる/サク)・腺(すじ/セン)・栂(つが、とが/バイ)・鯰(なまず/ネン)・働(はたらく/ドウ)・錻(ぶりき/ブ)
(4)音読みのみの国字
荢(ウ)・饂(ウン)・鱇(コウ)・癪(シャク)・膵(スイ)・燵(タツ)・鋲(ビョウ)