「皇位継承式典」への「多額の税金投入」は問題ではないか?

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皇位継承式典

1.「皇位継承式典」に144億円もの多額の税金投入

昨年12月下旬に、平成31年度予算案で「皇位継承式典」に関する費用として144億円が計上されました。これは、今上(きんじょう)天皇が平成元年に即位した時の費用より3割も高額です。

果たして、「皇位継承式典」にこのような多額の税金を投入する必要があるのでしょうか?大いに疑問です。

2.今上天皇は「質素」を旨としていたはず

どちらかと言えば、今上天皇は、皇室の伝統行事については、忠実にこれを守って行こうという信念が感じられますが、基本は華美にならないように「質素」を旨としておられるように聞いています。

昨年までの「太平洋戦争に殉じた人々への慰霊の旅」や、「大震災後の被災地への励ましの旅」など、「日本国民の象徴」として天皇である自分はどうあるべきかをよく考えて、「平成天皇」としての責務を果たそうとする姿に、私は感銘を受けました。

3.今上天皇は自分の信念や意思を明確に示した

「生前退位」についても、「高齢になって全てをきっちり行うのが無理になって来たのであれば、皇太子を名代に立てたり、簡略化したりして適当にやればよいのではないか」と私などは思うのですが、それは「天皇である限り、自分自身がきっちりやらなければならない」というご自分の信念が許さなかったのでしょう。

これは、少年時代に受けたアメリカ人家庭教師のエリザベス・ヴァイニング夫人(1902年~1999年)の教育や、小泉信三氏(1888年~1966年)の薫陶の賜物ではないかと思います。

ヴァイニング夫人は、敬虔なクエーカー教徒でした。クエーカー教は「質素・誠実・平等」を旨とし、平和主義を掲げています。彼女が日本を去る時に残した最後の言葉は、「Think for yourself!(自分の頭で考えなさい!)」でした。

この「アメリカ人女性のヴァイニング夫人を、皇太子の家庭教師にする」という考えは、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による指示か命令ではないかと、私は今まで思っていたのですが、今回調べてみると、「皇太子の家庭教師をアメリカ人に依頼したいという昭和天皇からのたっての希望だった」とのことです。

私の推測ですが、昭和天皇としては、「自分も『人間宣言』をして現人神(あらひとがみ)ではなくなったことだし、これからはアメリカをはじめ海外との交流も出て来るので、欧米流の考え方を身に付けさせるとともに、英語も堪能になるように」との「親心」だったのではないかと思います。

小泉信三氏は、経済学者で東宮御教育常時参与として、皇太子当時の今上天皇の教育係を務めました。彼はいくつかの名言を残していますので、少しご紹介します。

「人生において、万巻の書を読むより、優れた人物に一人でも多く会うほうが、どれだけ勉強になるか」「百冊の本を読むより、百人の人物に会え」「練習は不可能を可能にする」

18歳になった皇太子は、小泉信三氏に「自分は世の中の事をよく知らないから、世の中の事をよく知り、思いやりのある女性を伴侶にしたい」と話されたそうです。

その結果、正田美智子さんとの結婚につながった訳です。小泉信三氏に教わった言葉で、今上天皇が好きな言葉は「忠恕」だそうです。「忠恕」とは、「自分の良心に忠実であることと、他人に対する思いやりが深いこと」です。

4.「大嘗祭」は皇室の私的行事で、税金投入は憲法上も問題

「皇位継承式典」の費用や式次第などについては、今上天皇や皇太子があずかり知らぬことです。しかし(皇太子の考え方はよく知りませんが)、今上天皇の考え方に寄り添うならば、「現在の日本の国家財政が厳しい折から、出来るだけ質素にするのがよい」ということだと私は思うのですが・・・

先日、秋篠宮が「大嘗祭」について、「大嘗祭は必要だが、皇室の私的行事なので、内廷費でまかなうべきもの。前回の9倍もの費用がかかるとのことだが、身の丈に合った儀式にすべき。前宮内庁長官や現宮内庁長官にも提言したが聞く耳を持たなかった」旨の発言をしています。

皇室の内部からもこのように真っ当な意見が出ているのに、現宮内庁長官が「前回の大嘗祭も、国民の大多数の賛同を得て実施したので、今回もこの伝統を同様に踏襲すべきもの考えている」とコメントしているのは、私は全く賛同できません。

1999年のこと、小渕恵三首相が、民主党の「金融再生案」を丸呑みして総額24兆円の緊急対策を決定し、財政赤字は恐ろしい勢いで拡大しました。首相は自らを「世界一の借金王」と自嘲しながらも、能天気にバラマキを続けました。

今や、日本の借金(国債・借入金・政府短期証券残高)は、1,000兆円の大台に乗っています。ただ、日本の国債は96%を日本人が買っているので、「実質的には、家庭内の貸し借りと同じだ。ギリシャとは違う」という麻生財務大臣のたとえ話もあります。

ですから、直ちに日本がギリシャのように国家破産の危機に陥る恐れはないかも知れませんが、健全な財政状態とは言い難いと思います。