安倍前首相が提唱した「アベノミクス」と「一億総活躍社会」はうまく行くのか?

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安倍首相と黒田日銀総裁

2020年9月に辞任した安倍晋三首相は、日銀の黒田東彦総裁とのコンビで「アベノミクス」を推進してきました。後任の菅義偉首相は「アベノミクスを継承し、さらに前に進める」と表明しています。しかし、日銀の金融政策はうまく行っていないように私は思います。

1.安倍前首相の「アベノミクス」と「一億総活躍社会」

(1)「アベノミクス」とは

「アベノミクス」とは、2012年12月に誕生した第二次安倍政権の経済政策です。「アベ(安倍)」と「エコノミクス(経済学)」を組み合わせた造語で、1980年代のレーガン政権の自由主義経済政策である「レーガノミクス」にちなんだものです。

「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」という「三本の矢」で、長期にわたるデフレを脱却し、名目経済成長率3%を目指すものです。

「財政出動」(機動的な財政運営)の歳出規模は、総額20兆円です。

「金融緩和」(大胆な金融政策)では、インフレターゲット(物価上昇率の目標)を2%に設定し、マイナス金利政策を継続しています。

「成長戦略」(民間投資を喚起する成長戦略)は、研究開発・イノベーション創出促進、省エネルギー・再生エネルギー投資の促進、新ビジネスへのチャレンジなどを骨子としています。

(2)「一億総活躍社会」とは

2015年10月に発足した第三次安倍内閣の目玉プランです。安倍前首相がこれからの3年間を「アベノミクスの第二ステージ」と位置づけ、「一億総活躍社会」を目指すと宣言したのです。

「一億総活躍社会」とは、首相官邸ホームページによれば次の通りです。

  • 若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会
  • 一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、職場で、それぞれの希望がかない、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会
  • 強い経済の実現に向けた取組を通じて得られる成長の果実によって、子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという『成長と分配の好循環』を生み出していく新たな経済社会システム

2.「アベノミクス」は軌道修正が必要ではないか?

「アベノミクス」はどうも順調には行っていないように私は感じます。

私は前に記事に書きましたが「日本銀行のマイナス金利政策や国債買い入れ政策は手詰まり状態で、転換が必要」だと思います。

インフレ率が2%未満の低インフレでも景気は回復していますし、「マイナス金利政策」や「無期限の長期国債買いオペレーション」を続ける意味がないように思います。「インフレ率2%」だけが「目的化」してしまって、日銀の本来の金融政策が置き去りになっているのではないでしょうか?

日銀のこのような政策は、今や弊害も出始めており早急に転換すべき時期に来ていると私は思います。日銀には柔軟かつ機動的な政策変更が必要です。

現在の深刻な不況は新型コロナウイルス肺炎の感染拡大が直接の原因ですが、戦後最長を誇った景気拡大が幻となった上に、すでに景気後退局面に入っていた2019年(令和元年)10月に消費税の増税を行ったことが「内閣府研究会」の判定で「判断ミス」とされたことも、逆風です。