「PRESIDENT Online」に、日本総合研究所副主任研究員の関辰一氏による詳細なレポートが掲載されました。
要点をご紹介したいと思います。
世界第二位の経済大国としてアメリカに迫りつつある中国ですが、今「米中貿易戦争」の真っただ中で、先行き不透明感もあります。
関氏は「中国の公式統計は信憑性に欠ける。推計では公式統計の約10倍の潜在的な不良債権があり、5年以内に金融危機が発生する可能性が40%ほどある」と指摘しています。
1.中国の不良債権の推計額は公式統計の10倍
「不良債権」とは、一般的に「金融機関にとって約定どおりの返済や利息支払いを受けられなくなった債権、あるいはそれに類する債権」のことです。
中国では、金融機関が「リスクを軽視した甘い融資審査」によって、「過剰な融資」を行ってきました。その結果、金融機関は巨額の不良債権を抱えることになったと見られます。
「銀行業監督管理委員会」の公式統計では、2015年末の商業銀行の不良債権比率は1.7%、不良債権残高は1兆2,744億元(1元=16円換算で、約20兆3,900億円)です。
2.公式統計に潜む3つの問題点
(1)金融機関が「ロールオーバー(借り換え)」や「不良債権認定基準の引き下げ」などの手法で、本来は不良債権として計上すべきものを、正常債権とみなしているケースがあること
(2)「オフバランス与信」(金融機関のバランスシートに載らない与信)、いわゆる「シャドーバンキング」が公式統計の対象から漏れていること
「シャドーバンキング」の代表的なものは「銀行理財商品」です。これは銀行が個人や企業向けに販売する「リスクの高い金融商品」のことです。問題なのは、この「銀行理財商品」に対して銀行が「暗黙の保証」(損失補填)」を与えていることです。
(3)当局が金融機関に対して不良債権の認定基準を守らせ、十分な監督責任を果たしているか疑問であること
3.潜在的不良債権(隠れ不良債権)比率と潜在的不良債権の推計額
関氏の推計では、潜在的不良債権比率は8.6%で、潜在的不良債権の推計額は12兆5,000億元(1元=16円換算で、約200兆円)となっています。これは、名目GDPの18.5%にも相当する金額です。
4.バブル崩壊が起きる可能性は40%
与信の拡大ペースが経済規模に対して速すぎると、金融危機が起こりやすいと言われています。IMFの研究では、これまで全世界において過去5年間で総与信の対GDP比が30ポイント以上高まった国(42カ国)のうち、43%の国(18カ国)で金融危機を伴う「ハードランディング」が起きているそうです。
もし、中国で金融危機が発生すれば、経済成長率は現在の6~7%から3%台に低下し、労働需要が大きく減少する恐れがあります。
数百万人規模の「大失業」が発生すれば、1949年から70年間続いて来た「共産党による一党独裁の政治体制」が崩壊する可能性さえあります。
また、別の新聞によれば、中国の不良債権が2019年1~6月の半年間で1割増え、「要注意債権」と合わせて90兆円になったとの報道もあります。
習近平主席の「一帯一路構想」や「アフリカへのサラ金的融資攻勢」が、金融危機によって破綻する可能性があるかもしれません。